「勉強しなさい」と言えば反発される。黙っていれば何もしない。——保護者面談で最も多い悩みがこれです。この記事では言い換えの一覧だけでなく、全国調査で「実際に何割の家庭が言っているか」「何割が褒めているか」まで示したうえで、家庭でできる具体策をまとめました。
先に結論を1つ書きます。「勉強しなさい」と言っている中学生の保護者は62.3%。いっぽうで「結果が悪くても努力したことを認める」は89.2%です(後述の親子調査2025)。多くの家庭はすでに褒めていて、同時に言ってもいる。だからこの記事は「褒め方を覚える」話ではなく、その2つが同じ日に同居している状態をほどく話になります。
- やめる:「勉強しなさい」…中学生の保護者の62.3%が言っています。多数派ですが、言われる側の勉強する理由は「先生や親にしかられたくないから」に寄っていきます(6年で13.2ポイント増)
- やめる:他人との比較…「〇〇君は」は本人が一番気にしています
- やる:環境整備…勉強場所・時間・飲み物。言葉より環境の方が効果が大きい
- やる:計画の可視化…週間計画を見える場所に貼らせるだけで、親の不安も子の反発も減ります
- やる:結果ではなく行動を認める…ただしこれはすでに89.2%の家庭がやっています。足りないのは褒める量ではなく、認めた直後に「で、宿題は?」を足さないこと
- やる:やり方が分かっているかを先に見る…中学生の72.1%が「上手な勉強のしかたがわからない」と答えています。ここが埋まっていない子は、声かけを直しても動きません
ただし、声かけを変えれば動く子と、変えても動かない子がいます。やる気が落ちているだけなのか、やり方が分からなくなっているのか。ここを先に見分けないと、どの言い換えも効きません。

なぜ「勉強しなさい」は逆効果なのか
人間には「自分のことは自分で決めたい」という欲求があり、これを外から先回りされると、もともとやる気があったことでも意欲が落ちます。子どもが「今やろうと思ってたのに」と言うのは、言い訳ではなく本当にそうです。塾でも、講師が「やれ」と命令する指導より、「どれからやる?」と選ばせる指導のほうが宿題の実行率が高くなります。
ただし、ここまでは私の現場の実感です。全国調査で確かめられることは、言い換えの一覧のあとにまとめます。
家庭でも同じで、指示を質問に変えるだけで反応が変わります。面談で渡している言い換えの一覧がこれです。
| NGな声かけ | 言い換え | なぜ効くか |
|---|---|---|
| 勉強しなさい | 今日は何からやる予定? | 決定権を本人に残せる |
| まだやってないの? | どこまで進んだ? | 責めるニュアンスが消える |
| 〇〇君は塾に行ってるって | 最近どの教科がしんどい? | 比較でなく本人の状況に関心を向ける |
| そんな点数で受かるの? | この問題、なんで間違えたか分かる? | 不安の煽りから原因分析へ |
| 勉強はどうなってるの? | 何か手伝えることある? | 監視ではなく支援の姿勢 |
全国の家庭はもう褒めている。それでも6割が「勉強しなさい」と言う
東京大学社会科学研究所とベネッセ教育総合研究所が、同じ親子を2015年から追いかけている調査があります(子どもの生活と学びに関する親子調査2025・2025年7〜9月実施/全国の小1〜高3の子どもとその保護者/報告書)。ここで保護者に「お子さんの勉強へのかかわり」を聞いています。下は中学生の保護者の回答です。
| 子どもの勉強に対するかかわり | 2019年 | 2025年 |
|---|---|---|
| 結果が悪くても努力したことを認める | 84.3% | 89.2% |
| 勉強で悩んだときに相談にのる | 77.8% | 82.5% |
| 勉強の意義や大切さを伝える | 74.7% | 81.2% |
| 「勉強しなさい」と言う | 66.0% | 62.3% |
| いい高校や大学を卒業することは大切だと言う | 57.6% | 61.6% |
| 勉強の面白さを教える | 41.1% | 51.4% |
| 勉強の内容を教える | 40.3% | 43.7% |
| テストの成績が悪いとしかる | 40.7% | 31.8% |
読みどころは3つあります。
- 「結果が悪くても努力したことを認める」は89.2%。この記事が勧めている「結果ではなく行動を認める」は、すでに9割の家庭がやっています
- 「テストの成績が悪いとしかる」は6年で8.9ポイント減って31.8%。叱る家庭はむしろ減っています
- 減ったのはこの2つだけで、「勉強しなさい」の減り幅は3.7ポイント。「しかる」の半分以下しか動いていません

ここが面談でいちばんよく起きていることです。認めることと「勉強しなさい」は、どちらか片方を選ぶものだと思われていますが、実際には同じ日のうちに両方出ています。「よく頑張ってるね」と言った30分後に「で、宿題は?」と聞く。子どもの側には、あとから言われたほうしか残りません。
だから直すのは褒め方ではなく順番と間隔のほうです。認めた直後に確認を足さない。確認するなら、認めた場面とは別の時間にする。言っている中身が同じでも、受け取られ方が変わります。
声かけを変えても動かない子が7割いる
同じ調査には、子ども本人の回答も載っています。中学生の数字です。
| 中学生本人の回答 | 2016年 | 2019年 | 2025年 |
|---|---|---|---|
| 上手な勉強のしかたがわからない | 62.9% | 60.0% | 72.1% |
| 勉強しようという気持ちがわかない | 49.6% | 48.5% | 65.0% |
| 何のために勉強しているのかわからない | 34.1% | 33.2% | 46.6% |
冒頭に「声かけを変えれば動く子と、変えても動かない子がいる」と書きました。その内訳がこの表です。いちばん多いのは、やる気が出ない(65.0%)ではなく、やり方が分からない(72.1%)のほうでした。中学生の7割です。しかも伸びているのは両方で、2019年からの6年で「やり方が分からない」が12.1ポイント、「やる気が出ない」が16.5ポイント増えています。
やり方が分からない子に言い換えは効きません。理由は単純で、「今日は何からやる予定?」と聞かれても答えられないからです。選ばせる声かけは、選択肢を持っている子にだけ効きます。

見分け方は簡単です。「今日は何からやる?」と聞いて、10秒以内に具体的な教材名とページ数が出てくるかだけ見てください。「えー…数学…」で止まるなら、やる気の問題ではありません。その日の1時間で何をどこまでやるかを、紙に3行書かせるところから始めます。ここを飛ばして声かけだけ変えても、来週には元に戻ります。
もう1つ、勉強する理由のほうにも変化が出ています。
| 中学生が挙げる「勉強する理由」 | 2016年 | 2019年 | 2025年 |
|---|---|---|---|
| 成績がよいと周りの人がほめてくれるから | 59.6% | 63.8% | 65.0% |
| 新しいことを知るのがうれしいから | 59.1% | 60.4% | 60.7% |
| 先生や親にしかられたくないから | 46.7% | 50.0% | 59.9% |
ここが噛み合っていません。保護者の側は「しかる」を8.9ポイント減らしているのに、子どもの側では「しかられたくないから勉強する」が13.2ポイント増えています。叱る回数が減っても、子どもが感じている圧は減っていない。
この調査は原因までは特定していません。ただ、保護者側でほとんど減らなかった項目が「勉強しなさい」(62.3%)だけだという事実は、並べておく価値があります。叱責ではないので言うほうの記憶には残りませんが、言われる側にとっては同じ種類の圧です。「今日は叱っていない」は、圧をかけていないことの証明になりません。

面談でよく言うのは「叱るのは塾の役割、家は安心できる場所でいてください」ということです。家でも塾でも追い詰められると、子どもは逃げ場がなくなって勉強そのものを嫌いになります。
その逃げ場のなさが最初に出るのが、塾に行きたがらなくなるという形です。言われたときにどう返すかで、その後の1か月がかなり変わります。

家庭でできる環境整備——言葉より効くもの
ここも数字で確かめられます。まず場所です。文部科学省と国立教育政策研究所の令和3年度全国学力・学習状況調査 保護者に対する調査 結果(速報)(令和3年6月実施・中学校の保護者66,837人/有効回答率81.1%)によると、中学3年生の家の91.0%に子供用の勉強机があり、88.2%に子供部屋があります。机も個室も、もうほとんどの家にあります。
それでも、中学生が実際によく勉強している場所はこうなっています(親子調査2025・複数回答)。
| 中学生がよく勉強する場所 | 2016年 | 2025年 |
|---|---|---|
| 家のリビングルーム | 64.2% | 62.7% |
| 自分の部屋(子ども部屋) | 64.8% | 59.4% |
| 学習塾の自習室 | 13.0% | 9.6% |
| 図書館 | 7.0% | 6.7% |
| 学校の教室(放課後など) | 7.9% | 4.3% |
9割の家に机と個室があるのに、中学生がよく勉強する場所はリビング(62.7%)のほうが自室(59.4%)より多い。しかも自室は2016年の64.8%から下がり続けていて、リビングはほぼ横ばいです。「リビング学習は小学生まで」ではありません。個室を用意したのに使われていないのは、家庭の失敗ではなく全国の標準形です。
- ①勉強場所を決める…リビングのままで構いません(上のとおり中学生の実態がそれです)。「見られている」より「人がいる気配」のほうが効きます。部屋を移させるより、そのテーブルを片づけるほうが早い
- ②スマホの物理的な距離…下に書いた東北大学の報告のとおり、睡眠時間と家庭学習時間を確保していても学力は下がります。意志ではなく距離で解決する
- ③開始時刻を固定する…「夕食後すぐ」など。毎日違う時間だと、始めるたびに意志力を消費します
- ④軽食と飲み物を持っていく…集中力そのものへの効果を示す確かなデータは見つけられませんでした。これは様子を見に行く口実としての効果です。「やってる?」と聞きに行くのと、飲み物を置きに行くのとでは、同じ「見に行く」でも角の立ち方が違います(勉強中のラムネは何粒が正解?)
- ⑤親も同じ時間に何かに集中する…読書でも家計簿でもOK。「自分だけやらされている」感が消えます
②のスマホについては、日本でいちばん規模の大きい実測があります。東北大学と仙台市教育委員会の共同研究(東北大学 プレスリリース・2015年3月19日)は、仙台市の標準学力検査の成績と突き合わせて、平日に「ライン等の無料通信アプリ」を使うと、使用時間に応じて学力が下がることを報告しました。
効くのはその先です。同研究は「学力低下は平日の睡眠時間や家庭学習時間には関わらず、アプリを使ったことによる直接の効果である可能性が高い」としています。つまり「寝る時間も勉強時間も削っていないから大丈夫」は成り立ちません。だから対処は「使う時間を減らす」ではなく、勉強している間だけ手の届く範囲に置かないになります。
ところが、中学生になるとルールそのものが消えます。先ほどの保護者調査では、「テレビを見る時間やゲームをする時間などのルールを家の人と決めている」中学生は41.4%。小学生の65.4%から24ポイント落ちます(「決めている」+「どちらかといえば決めている」)。中学生では、ルールが無いほうが多数派(58.2%)です。反抗期に入ってから作り直すのは難しいので、今あるルールを一度も書き出していないなら、そこから先に手を付けてください。
成績が上がらないときに家庭で確認する3点
① 宿題をやっているか
塾に通っても成績が上がらないとき、私がまず疑うのは授業の質ではなく宿題の未消化です。塾は週2回でも、家庭学習は週7日ある。ここが動いていなければ何も変わりません。「塾でやっているから大丈夫」は成立しません。
ただし、ここで家庭を責めても仕方がない事情が1つあります。先ほどの保護者調査で「学校は、宿題やその他の課題を出すにあたって、どのようにお子さんを助けたらよいか伝えていますか」に、中学生の保護者の58.6%が「あまり伝えていない」「伝えていない」と答えています(「伝えている」+「どちらかといえば伝えている」は39.1%)。手伝い方を教わっていないのだから、家庭が手探りになるのは当然です。
だから最初にやるのは声かけではなく、量を知ることです。同じ調査では中学3年生の平日の家庭学習時間(学習塾や家庭教師の時間も含む)は、1〜2時間が35.8%でいちばん多く、2時間以上が32.3%、1時間未満が30.9%。お子さんがどこに入るかで、次の一手が変わります。
ここで「やっていない」ではなく「終わらない」のなら、声かけの問題ではありません。原因は3つに分かれるので、先に切り分けてください。

② 分からない場所を放置していないか
質問できない子はとても多いです(プライド・遠慮・そもそも何が分からないか分からない)。「今日、分からなかったところある?」と聞く習慣をつけると、放置が減ります。答えられなくても聞き続けてください。
③ 睡眠が足りているか
ここは体感ではなく公的な数字を置きます。厚生労働省の健康づくりのための睡眠ガイド2023(令和6年2月・令和6年9月18日一部修正/厚生労働省 睡眠対策のページ)は、推奨事項として「小学生は9〜12時間、中学・高校生は8〜10時間を参考に睡眠時間を確保する」と書いています。同ガイドは「睡眠は学習した内容を強固にする役割も果たす」とも述べており、睡眠不足によって学業成績が低下することが報告されているとしています。

この記事は以前、ここに「中高生は最低6時間、できれば7時間」と書いていました。国の推奨(8〜10時間)より2〜4時間短い数字だったので、2026年8月13日に上の記述へ差し替えています。
そのうえで、実態も見ておきます。先ほどの保護者調査が、平日の就寝時刻を聞いています。
| 中学3年生の平日の就寝時刻 | 割合 |
|---|---|
| 22時30分より前 | 13.1% |
| 22時30分〜23時 | 20.2% |
| 23時〜24時 | 45.0% |
| 0時以降 | 17.1% |
起床のほうは6時30分〜7時が最多で35.3%、7時より前に起きる子が68.5%です。ここから機械的に引くと、6時30分に起きる子が下限の8時間を取るには22時30分就寝が必要。そこまでに寝ている中学3年生は13.1%しかいません。7時起床でも23時就寝が要りますが、そちらでも33.3%です。
つまり「受験生だから寝る時間を削っている」のではなく、削っているほうが既定値という状態です。だから家庭で確認するのは「足りているか」ではなく、何時に消灯するかを先に決めてあるかのほうになります。起床時刻から就寝時刻を逆算する表は、宿題の量を測る記事のほうに入れてあります。

塾に相談すべきタイミング
家庭でできることには限界があります。次のサインが出たら、外部の力を借りる判断をしてください。
- 親が教えると必ず喧嘩になる…最も多いパターン。関係悪化のコストの方が大きいので、早めに外注が正解です
- 本人が「分からない場所が分からない」状態…つまずきの特定は専門家の仕事
- 定期テストで平均を大きく下回る科目がある…自力での挽回が難しい水準
- 受験学年で計画が立てられていない…時間切れのリスクが高い
塾を検討する場合、費用の全体像を先に把握しておくと判断がぶれません。学年と指導形態を選ぶだけで年間総額がわかる塾費用シミュレーターと、オンライン塾12社の比較記事を用意しています。中学生のお子さんなら中学生向けの塾の選び方もどうぞ。
入試の前日・当日に保護者がやってはいけないことも、あわせてご覧ください。

このなかで「分からない場所が分からない」は、家庭ではいちばん手が出しにくい項目です。本人に聞いても出てこないので、外から測るしかありません。【atama+オンライン塾】
はAIの診断テストでつまずきの根本単元を特定する形式なので、14日間の無料体験の範囲で「どこが抜けているか」だけ確認するという使い方ができます。塾に入れるかどうかの判断は、そのあとで構いません。
保護者からよくある質問
- スマホを取り上げるべきですか?
強制的な取り上げは反発を生みやすいので、「勉強中は別室に置く」というルールを本人と一緒に決めるのが現実的です。決め方より「何を決めるか」がずれていることのほうが多く、こども家庭庁の令和7年度の調査では、家庭で決めているルールは「利用する時間」が75.9%なのに対し、「利用する場所」は26.3%にとどまります。勉強中に手の届く範囲へ置かないというのは、時間ではなく場所のルールです(守られるルールの決め方はこちら)。ルールを守れたら口出ししない、という約束もセットにしてください。取り上げが有効なのは、本人も困っていて助けを求めている場合だけです。
- ゲームやYouTubeばかりで困っています
「禁止」より「順序」で管理する方がうまくいきます。「勉強が終わってから」ではなく「◯時から◯時は勉強、それ以外は自由」と時間で区切る方が守られやすいです。完全に取り上げると隠れてやるようになり、把握できなくなる方が危険です。
- 子どもが塾に行きたがりません
理由を聞いてください。「面倒」なのか「授業についていけない」のか「人間関係」なのかで対処が全く違います。特に集団塾でついていけていない場合は、個別やオンラインへの切り替えで解決することが多いです。無理に通わせても座っているだけになります。
- 親が勉強を教えてもいいですか?
関係が悪くならないなら有効です。ただし「なんでこんなのが分からないの」が一度でも出ると、子どもは二度と聞いてこなくなります。教えるより、丸付けや音読の聞き役、時間を計る役の方が、親子ではうまくいくケースが多いです。
- 塾の先生に相談してもいいのでしょうか
ぜひしてください。塾側は家庭での様子が見えないので、情報をもらえるのは非常に助かります。連絡帳やメールでの一言でも構いません(塾への保護者コメントの書き方と例文)。
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この記事を書いた人:たかた(兵庫県の個別指導塾 塾長)→ 運営者情報



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