勉強のやる気が出ない|「夢を持て」は効かない。90万人のデータで差が出た2つの動き

やる気が出ないときに効くのは、気持ちを上げることではなく、詰まったときの動き方をあらかじめ決めておくことです。国が中学3年生90万人に聞いた調査では、「将来の夢や目標を持っているか」で分かれた学力差はほぼゼロでした。一方で「分からないとき、あきらめずにいろいろな方法を考えるか」では、数学の正答率に36ポイントの差がついています。

この記事では、その調査の数字をこちらで集計し直したうえで、今日から実際に変えられる手順に落とします。

先に結論:やる気は上げるものではなく、詰まったときの動き方を決めておくもの

「やる気が出たら勉強しよう」と待っている人は、順番が逆になっています。やる気は勉強を始める前ではなく、手を動かし始めて数分たってから出てくることのほうが多いからです。

塾で生徒を見ていて一番はっきりしているのがこれです。入ってきた時に「今日だるい」と言っていた子でも、10分書いていると普通に手が進んでいます。つまり必要なのは、やる気を上げることではなく、最初の10分を始めるための仕掛けです。

だから対策も、「気持ちを盛り上げる方法」ではなく「始めるまでの手数を減らす方法」「途中で詰まったときに何をするか」で考えます。この記事の後半で見るとおり、実際に学力の差として表れているのも、まさにこの2つでした。

いま動けないなら、この順番でやってください

だるい日の3ステップ
  • 1.やる教材を決めずに座らない…「何をやろう」と考える数分でスマホに逃げます。前日のうちに、開いたまま机に出しておくのが一番効きます
  • 2.いちばん簡単なものから始める…英単語でも計算でも構いません。考えなくても手が動くものを最初に置きます
  • 3.「10分だけ」と決めて始める…10分たってしんどければ本当にやめていいです。実際には、そのまま続く日がほとんどです

ポイントは1です。やる気がない日にいちばん時間を奪うのは勉強そのものではなく、「何から手をつけるか決める作業」です。ここを前日の自分に肩代わりさせてください。

90万人のデータでは、「夢や目標を持て」は点差にほぼ表れていない

やる気の話でいちばんよく言われるのが「将来の夢を持とう」「志望校を決めよう」です。ところが、それを全国規模で確かめた数字があります。

国立教育政策研究所は毎年、全国学力・学習状況調査で中学3年生のほぼ全員に生活や意識のアンケートを取り、回答ごとの平均正答率まで公表しています。令和7年度の対象は、国公私立あわせて900,313人です。そのクロス集計表を取り寄せて、こちらで並べ直しました。

まず「将来の夢や目標を持っていますか」の結果です。

将来の夢や目標を持っていますか割合国語数学
当てはまる35.5%53.7%47.6%
どちらかといえば、当てはまる32.0%55.6%50.2%
どちらかといえば、当てはまらない21.9%55.7%50.7%
当てはまらない10.2%53.7%47.6%
国立教育政策研究所「令和7年度全国学力・学習状況調査 クロス集計表(生徒質問-教科)」中学校・全国(国公私立)900,313人より作成。数値は平均正答率

見てのとおりです。「持っている」と答えた層と「持っていない」と答えた層が、国語53.7%・数学47.6%でぴったり同じ数字になっています。しかも4段階でいちばん高いのは、真ん中の「どちらかといえば、持っていない」層でした。

同じ資料には、成績を4分割して回答の内訳を見た表も載っています。国語の上位25%で「夢や目標を持っている」は33.7%、下位25%では38.7%成績が下の層のほうが、むしろ多く「夢がある」と答えていました。

これは「夢を持つのが悪い」という話ではありません。夢は持っていていいのですが、それだけでは今日の机の前の行動が変わらない、ということです。志望校を決めた翌日から別人になった生徒を、私は見たことがありません。

では、何が差を作っていたのか

同じ調査の中から、教科に限定されない質問だけを9つ取り出して、差の大きい順に並べました。差は「いちばん上の回答」と「いちばん下の回答」の開きです。

質問(中3・全国)数学の差国語の差
授業では、課題の解決に向けて自分で考え、自分から取り組んでいた34.820.7
分かった点・分からなかった点を見直し、次の学習につなげている28.815.8
分からないことは、自分で学び方を考え、工夫できている27.114.6
平日の勉強時間(最も高い層と全くしない層)19.210.2
普段の生活で幸せな気持ちになることがよくある14.29.9
学校に行くのは楽しいと思う10.64.9
自分には、よいところがあると思う10.64.6
話し合いを生かし、今自分が努力すべきことを決めて取り組んでいる4.52.3
将来の夢や目標を持っている0.00.0
同調査のクロス集計表より作成。数値は平均正答率の差(ポイント)。教科名を含む質問は比較から除いてある

上の3つはすべて「自分から動いたか」「詰まったところをどう扱ったか」という行動の話です。下の4つは気分と決意の話で、差が小さくなっています。

この表からいえること
  • 「夢を持つ」は0.0pt。いちばん差が出ていない項目でした
  • 「決めて取り組む」も4.5pt。決意表明だけでは差になっていません
  • 「自分から取り組む」「見直して次につなげる」は27〜35pt。気分の項目の3倍前後です
  • 勉強時間も差にはなるが、上の3つより小さい。時間より中身ということです

数学に限った質問では、さらにはっきり出ています。「数学の問題の解き方が分からないときは、あきらめずにいろいろな方法を考えますか」では、「当てはまる」層が62.2%、「当てはまらない」層が26.2%で、36.0ポイントの差。成績上位25%では46.5%が「当てはまる」と答えたのに対し、下位25%では23.0%と、ちょうど半分でした。

これは相関であって、因果ではありません。「できるから、あきらめずに考えられる」という向きもあります。ただし差が0.0ptの項目と36ptの項目があるという事実は、どちらに時間を使うかを決める材料になります。

国が成績として見ている「やる気」も、実はこの2つ

ここで、通知表の話をします。中学校の観点別評価は、「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の3つで付きます。最後のひとつが、いわゆる「やる気」にあたる観点です。

では、その「主体的に学習に取り組む態度」は何で測られているか。文部科学省の資料には、「粘り強さ」「学習の自己調整」という2つの側面が示されています。

成績で見られている側面調査で差が大きかった質問数学の差
粘り強さ分からないとき、あきらめずにいろいろな方法を考える36.0pt
学習の自己調整分かった点・分からなかった点を見直し、次につなげる28.8pt
(どちらにも当たらない)将来の夢や目標を持っている0.0pt
左列は文部科学省 教育課程部会 総則・評価特別部会「学習評価の在り方について」(令和8年3月30日)より

成績表が見ている2つと、90万人のデータで差が出た2つが、そのまま重なります。「やる気を出す」を目標にすると何をすればいいか分かりませんが、「詰まったときに方法を変える」「終わったあとに見直す」なら、今日から手順にできます。

なお同じ資料には、この観点の評価について「形式的な勤勉さばかりが強調されるなどの実態も生じている」という指摘もあります。ノートの色数や提出物の見た目を頑張らせる方向に流れやすい、ということです。国はいま、この観点を評定から個人内評価へ移す方向で見直しを議論しています。

内申点そのものの仕組みは、次の記事にまとめています。

「粘り強さ」を手順にする:詰まったら5分で方法を変える

粘り強さというと「同じ問題を1時間にらむこと」だと思われがちですが、調査で聞かれているのは「いろいろな方法を考えますか」です。粘るのは問題ではなく、方法を変える回数のほうです。

手順1
5分で区切る。にらむ時間を先に決める

分からない問題で止まったら、5分だけ自力で考えて、そこで必ず打ち切ります。時間を決めていないから「分からない、しんどい、やめよう」になります。5分で区切ると、やめる理由が消えます。

手順2
解答を見る。ただし全部ではなく1行目だけ

5分たったら解答を開いて、最初の1行だけ読んで閉じます。そこから先はもう一度自分でやります。全部読むと「分かったつもり」で終わりますが、1行だけなら手が動きます。これが一番かんたんな「方法を変える」です。

手順3
それでも駄目なら、教材の段を1つ下げる

1行読んでも動かないなら、その問題ではなく手前の基本問題に戻ります。1つ前の単元の例題まで戻って構いません。戻るのは負けではなく、これも立派な「別の方法」です。

手順4
翌日、もう一度だけ同じ問題に戻る

その日のうちに解けなくてかまいません。翌日に1回だけ戻ると決めておきます。ここまでを1セットにすると、「分からない」で終わる日がなくなります。

やる気が続かない生徒の多くは、「分からない問題に当たったあと、次にやることが決まっていない」のが原因です。そこで手が止まり、止まった時間が長いほど「今日はもういいや」になります。手順を紙に書いて筆箱に入れておくだけでも変わります。

「自己調整」を手順にする:終わりの10分を見直しに使う

もうひとつが「分かった点・分からなかった点を見直し、次の学習につなげる」です。差は数学で28.8ポイント。これを毎日やっていると答えたのは、全体の23.1%だけでした。つまり、ここは大きく空いています。

手順1
勉強の最後の10分を、必ず空けておく

終わってから「ついでに」やろうとすると、必ず飛びます。先に10分ぶんの枠を取ってから、勉強の量を決めてください。量を減らしてでも、この10分を残します。

手順2
間違いを「知らなかった」と「やり方を間違えた」に分ける

この2つは対処がまったく違います。知らなかったものは覚え直すだけ。やり方を間違えたものは、もう一度解き直す必要があります。まとめて「復習」にすると、覚えるだけで終わって同じ間違いを繰り返します。

手順3
明日の最初の1問を、今日のうちに決めて書く

今日つまずいた問題から1つ選び、ノートの端に「明日はここから」と書いて閉じます。これで翌日の「何をやろう」が消えます。冒頭の3ステップの1と同じ効果を、毎日自動でかけられます。

模試のあとに同じことをやる手順は、別記事にまとめています。

勉強時間は、長ければいいわけではない

「やる気を出して、もっと長くやる」と考える前に、同じ調査の勉強時間の欄を見てください。

平日1日あたりの勉強時間(学校の授業以外)割合国語数学
3時間以上10.0%54.7%52.3%
2時間以上、3時間より少ない20.9%56.9%54.0%
1時間以上、2時間より少ない30.8%56.1%51.2%
30分以上、1時間より少ない19.0%54.8%47.7%
30分より少ない11.2%52.2%43.0%
全くしない7.6%46.7%34.8%
同調査のクロス集計表より作成。塾や家庭教師の時間を含む

いちばん高いのは「2〜3時間」で、「3時間以上」はそこから下がります。国語で2.2ポイント、数学で1.7ポイント低い。つまり3時間を超えて増やすぶんは、点数として返ってきていません。

一方で「全くしない」との差は大きく、数学で19.2ポイントあります。ゼロと2時間の差は大きいが、2時間と4時間の差はほとんどない、というのがこの表の形です。

「やる気を出して1日5時間」を目標にすると、たいてい3日で折れます。目標にするなら、時間ではなく「詰まったときの手順を最後まで通す」ほうにしてください。こちらは疲れていてもできます。

それでも動けない日は、原因を切り分ける

手順を用意しても動けない日が何日も続くときは、気持ちの問題ではないことがあります。次のどれに近いかで、やることが変わります。

当てはまるものまずやること
何をやればいいか分からないやる気の問題ではありません。今週やる教材と範囲を紙に書き出してください
やっても解けない・分からない難易度が高すぎます。1段階やさしい教材に戻してください
詰まったところで毎回止まるこの記事の「粘り強さの4手順」を紙に書いて、机に貼ってください
寝ても疲れが取れない先に睡眠時間を戻してください。睡眠を削った状態では何をしても続きません
気分の落ち込みが2週間以上続く勉強法の話ではありません。保護者や学校、必要なら医療機関に相談してください

この表の1つ目と2つ目が、実際にはかなり多いです。「やる気がない」と言っている生徒の話をよく聞くと、単に何をやるか決まっていないだけだった、ということがよくあります。

4つ目に当てはまる場合は、勉強法より先に生活のほうを直してください。同じ調査で、寝る時刻がそろっている中学生とそうでない中学生では、数学の正答率に10.6ポイントの差がありました。

保護者の方へ:「やる気を出しなさい」が効かない理由

ここまでの数字は、そのまま声かけにも当てはまります。

言い換えの例
  • 「将来どうするの」「夢はないの」→ 差が0.0ptだった項目です。不安を足すだけで、机の前の行動は変わりません
  • 「やる気を出しなさい」→ 何をすればいいか指していません。「今どこで詰まってる?」に変えてください
  • 「もっと長くやりなさい」→ 2〜3時間から先は点数に返っていません。時間ではなく、見直しの10分を守れているかを見てください
  • ノートの見た目や提出物だけを褒める → 国自身が「形式的な勤勉さばかりが強調される」と課題に挙げている部分です

そのうえで、そもそも待つべきか働きかけるべきかは、お子さんの状態によって逆になります。判断の分かれ目は別記事にまとめました。

声かけそのものを変えたい場合は、家庭でできる環境づくりのほうから手を付けると早いです。

よくある質問

志望校を決めれば、やる気は出ますか?

決めること自体は必要ですが、それでやる気が出ると期待しないでください。90万人の調査で「将来の夢や目標を持っているか」による正答率の差は0.0ポイントでした。志望校が決まって変わるのは、やる気ではなく必要な点数と締切がはっきりすることです。そこから逆算した週の予定に落として、はじめて行動が変わります。

やる気が出ないので、今日は休んでもいいですか?

1日単位で「やる・やらない」を決めるのをやめてください。10分だけ手を動かして、そこでやめるのが正解です。調査で差が大きかったのは勉強時間そのものではなく「自分から取り組んだか」でした。10分でも自分から始めていれば、ゼロの日ではありません。ただし発熱や2週間以上続く落ち込みは別で、そのときは休んで相談してください。

好きな教科しかやる気が出ません。

「好き」は結果でもあります。調査では「数学が好き」と答えた層とそうでない層で正答率に29.5ポイントの差がありましたが、できるようになったから好きになったという順番も同じくらいあります。嫌いな教科は、好きになる前にいちばんやさしい段まで戻して、解ける状態を作るのが先です。順番を逆にすると何年でも嫌いなままです。

名言や合格体験記を読むのは意味がないですか?

読むこと自体は自由ですが、それを「勉強した」に数えないでください。気分の項目(学校が楽しい、自分にはよいところがある)の差は4〜10ポイント台で、行動の項目の3分の1程度でした。読んだあと10分でも手を動かすなら意味がありますし、読んで終わるなら効果はほぼありません。

やる気は成績(内申点)に関係しますか?

関係します。観点別評価の3つ目「主体的に学習に取り組む態度」がそれにあたり、「粘り強さ」と「学習の自己調整」の2つの側面で見られます。気分ややる気そのものではなく、詰まったときに工夫したか、振り返って次に生かしたかが対象です。なお文部科学省では、この観点を評定から個人内評価へ移す方向で見直しが議論されています。

結局、明日から何をすればいいですか?

3つだけです。①今夜のうちに、明日やる教材を開いて机に出す ②詰まったら5分で区切り、解答の1行目だけ見る ③終わりの10分を見直しに使い、明日の最初の1問を書いておく。この3つは疲れていてもできて、しかも調査で差が大きかった項目にそのまま重なります。

まとめ

この記事の要点
  • 中3・90万人の調査で、「将来の夢や目標を持っているか」による正答率の差は0.0ポイントだった
  • 差が大きかったのは「自分から取り組んだか」34.8pt、「見直して次につなげたか」28.8pt、「学び方を工夫できたか」27.1pt
  • 通知表の「主体的に学習に取り組む態度」も、粘り強さと学習の自己調整の2つで見られている
  • 勉強時間は2〜3時間がピークで、3時間以上はむしろ下がる。長さより中身
  • やることは3つ。前日に教材を出す/詰まったら5分で区切って解答の1行目/終わりの10分を見直しに使う

やる気が出ないのは、意欲が足りないからではありません。詰まったときに次にやることが決まっていないからです。決めてしまえば、気分の悪い日でも手は動きます。

参考にした資料

数値は2026年8月13日時点で公開されているものを、こちらで集計し直したものです。

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この記事を書いた人

兵庫県のとある学習塾の塾長。私大理系卒。塾バイト・家庭教師を経て、長年の経験を基に幅広く受験をサポートします。生徒だけでなく、それを支える保護者や先生の力にもなりたいという思いで立ち上げました。

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