勉強中の音楽は「聴くかどうか」ではなく、何をしているときに、どんな曲を流すかで結論が変わります。歌詞のないBGMは成績を上げも下げもしなかったという実験がある一方で、歌詞のある曲は言葉の記憶や読解の成績を下げます。
とくに歌詞のある曲は、脳が言葉を処理してしまうぶん理解が落ちます。ベネッセの調査では中学生の53.5%、高校生の69.2%が音楽を聴きながら勉強していますが、全員に同じ答えがあるわけではありません。この記事では、聴いていい場面と切るべき場面を分けます。
みんな本当に音楽を流してるの?数字でチェック!
中学生 53.5%/高校生 69.2%
ベネッセ教育総合研究所「中高生のICT利用実態調査2014」(2014年2〜3月・全国28校の中1〜高2 計9,468人)。「携帯音楽プレーヤーやスマートフォンなどで音楽を聴きながら」勉強すると答えた割合(動画サイトは除く)。高校生では7割近くが“ながら勉強派”です。
「勉強しながら音楽を聴くのって普通なの?」そんな疑問に、まずはデータで答えてみましょう。
ベネッセ教育総合研究所の「中高生のICT利用実態調査2014」(2014年2〜3月・全国28校の中1〜高2 計9,468人)では、中学生の53.5%、高校生の69.2%が「携帯音楽プレーヤーやスマートフォンなどで音楽を聴きながら」勉強していると答えています(動画サイトは除く)。
高校生では7割近くが“ながら勉強派”です。やや古い調査ですが、中高生の音楽と勉強を全国規模で結びつけた数字はこれが基準になっています。
ただし、ここで大事なのは「みんながやってるから自分もやっていい」とは限らないという点。むしろ「どんな音楽を、どんなときに流しているか?」が重要なんです。次章では、その“使い方の分かれ道”について説明します。
タスクと音源を選べばアリ!、選ばなければナシ!
「音楽は集中力の敵か味方か?」という問いには、ハッキリこう答えます”条件次第でどっちにもなり得る”です。
ポイントは大きく2つ。1つ目は「どんな勉強をしているか」。2つ目は「どんな音楽を流しているか」。この掛け算で効果は大きく変わります。
例えば、単語の暗記や計算練習のような“単純な繰り返し系”のタスクでも、インストゥルメンタルなど“歌詞なしBGM”で成績が上がるとまでは言えません。後で紹介する実験では、歌詞のないlo-fiは成績を上げも下げもしませんでした。
逆に、読解問題や数学の証明問題のように、「考える力」が求められる課題には音楽は基本NG。特に歌詞のある曲は、脳が言語処理で混乱してしまい、理解度がガクンと落ちるんです。
つまり、音楽が効くかどうかは「何を、どうやって聴いてるか」で決まる。テキトーに流すのではなく、“勉強の種類に合わせて音楽も選ぶ”ことが、成績アップの鍵なんです。
音楽がプラスに働くメカニズムとは?
「音楽が勉強に役立つこともある」って言われても、ちょっと信じがたい?でも、ちゃんと“理屈”と“研究結果”があるんです。
まず注目したいのが「覚醒水準(かくせいすいじゅん)」という言葉。これは簡単に言えば、脳と体の目覚め具合のこと。朝や昼過ぎって眠気との戦いですよね。でも、音楽を流すとちょうどいい刺激になって、集中しやすい“目が覚めたモード”に持っていきやすくなるんです。
また「マスキング効果」っていうのも大きい。これは周りの雑音(テレビの音、誰かの話し声、LINEの通知音…)を音楽で“覆い隠して”くれる現象。自宅での勉強なら特にありがたい効果です。
さらに、BGMのリズムに体が自然と同調する「リズム同調」って現象も。テンポが一定の曲を流すと、暗記カードをめくるスピードや計算ドリルのペースが安定することもあるんですよ。
つまり、「うまく使えば、音楽は“集中を助ける環境ツール”になる」ってわけです。使い方次第で、味方にもなってくれるんです。
音楽がマイナスに働くメカニズムとは?
とはいえ、音楽が「いつでもどこでも味方」ってわけじゃありません。むしろ、使い方を間違えると“集中力ブレイカー”になるリスクも大きいんです。
その代表例が、歌詞のある音楽。人間の脳は、言葉を聞くと自動的に意味を処理しようとします。つまり、英語長文や国語の文章を読んでいるときにJ-POPを流すと、“脳内で2つの言語がぶつかって”理解力が落ちてしまうんです。これが「ワーキングメモリの干渉」という現象。
さらに、音楽に意識がいったり、頭の中で歌詞を口ずさんでしまうことで「分散注意」が起きます。これは“ながらスマホ”に近い状態で、集中がバラけて作業効率がガクンと下がる原因に。
そしてもうひとつ見落としがちなのが「状態依存学習」。これは“音楽を聴きながら覚えた内容は、同じ環境じゃないと出てきづらい”という脳のクセ。つまり、音楽ありきで覚えた英単語は、無音の試験本番では思い出しにくい可能性があるんです。
「音楽が集中の邪魔になるシーン」もちゃんとある。特に“考える系”の勉強には、無音 or インストが鉄則です!
科学的エビデンスで見る音楽と勉強の相性

「音楽を聴くと集中できる気がする」でも、それって本当に効果あるの?という疑問に対して、近年の研究結果は“内容次第”と明確に答えています。
たとえば、2023年に Frontiers in Psychology に載った実験(Lin・Kuo・Mai, 2023)では、モーツァルトの曲のテンポを138BPMに速めたものと66BPMに遅くしたものを流し、無音と比べて処理スピードのテスト3種類を行いました。速い曲は無音と差がなく、遅い曲は3つとも無音より遅く、成績も下がりました(言葉のテストの正確さだけは、遅い曲のほうが高い結果でした)。
「BGMを流すと速くなる」という結果ではなく、遅い曲は作業を遅くすることがあるという結果です。
一方で、大学生が無音・歌詞なしの音楽・歌詞ありの音楽の3つの条件で課題を解いた実験(Souza・Barbosa, 2023, Journal of Cognition)では、歌詞ありの音楽で言葉の記憶・図の記憶・読解の成績が下がりました(効果量 d≈−0.3、0.3標準偏差ぶん)。計算問題の下がり方(d=−0.19)ははっきりした差とは言えず、歌詞のないlo-fiヒップホップは成績を上げも下げもしませんでした。この差を模試の偏差値に直すと、偏差値は1標準偏差が10なので 0.3×10=約3下がる計算です。小さく見えても、合否の境目では無視できない差です。
つまり、“ながら音楽”は使い方次第で天使にも悪魔にもなる。上の2つの実験からは、「歌詞ありは読解・記憶に✕」「歌詞なしでも成績が上がるとは限らない」の2点が読み取れます。
音楽ジャンルの選び方|おすすめ&NGを使い分けよう
じゃあ実際、どんな音楽ならOKで、どんな音楽は避けたほうがいいのか?ここが実は一番気になるポイントですよね。以下のリストでざっくり整理しておきます!
- Lo-Fi Hip-Hop(ローファイヒップホップ)
→ 歌詞なし・テンポ安定・おしゃれで気分も落ち着く - 自然音・ホワイトノイズ
→ 雨音、森の音、小川のせせらぎなど。環境音で集中力アップ。 - バロック音楽やクラシック(特にモーツァルトよりバッハ)
→ 調性が安定していてリズムに波が少ない
どれも共通して言えるのは、「歌詞がないこと」と「テンポや音量が安定していること」。
- 歌詞ありのJ-POP・K-POP・アニソンなど(脳が言葉を拾ってしまう)
- テンポや構成が激しいEDM・ロック系(心拍数が乱れて落ち着かない)
- 感情を揺さぶる映画のサントラ(感動して泣いてしまうパターンも…)
「好きな曲=勉強向き」とは限りません。“耳に残らないBGM”こそ最強の味方なんです!
効果を最大化する3つのルール
ここまでで「音楽は使い方しだいで勉強の味方になる」という話をしてきましたが、じゃあ**具体的にどうすれば効果が最大化されるの?**って気になりますよね。そこで、僕が現場指導でも伝えている「3つの鉄則」を紹介します!
🎧 ルール①:歌詞のない音楽を選ぼう
音楽に“言葉”が入ると、脳が勝手に処理を始めちゃう。読解や記述のときは特に致命的。インスト曲や環境音を選ぶだけで、集中力はかなり変わります。
🧠 ルール②:タスクによって“ON/OFF”を切り替える
暗記・整理整頓・単純作業のときは音楽ONでOK。でも、読解・論述・計算など「思考が必要な勉強」はOFFに切り替えよう!「ながら」は使い分けが命。
🕰️ ルール③:試験2週間前から“無音モード”に慣らす
試験本番は基本、無音 or かすかな雑音環境。音楽ありきで勉強してきた人は、本番で「あれ?集中できない…」ってなるリスクも。ラスト2週間は、あえて静寂に切り替えておこう!
この3つを意識するだけで、「音楽×勉強」は効果がまるで違ってきますよ◎
本番は2日間で約10時間、音楽なしで解く
ルール③の「無音に慣らす」が大事な理由を、共通テストの試験時間で確かめました。大学入試センターの実施要項の時間を足すと、5教科をすべて受ける例では、2日間で620分になります。
| 受験パターン(例) | 足した科目と時間(実施要項) | 合計(計算) |
|---|---|---|
| 理系(理科2科目) | 国語90分+地歴公民1科目60分+英語リーディング80分+リスニング60分+数学①70分+数学②70分+理科2科目130分+情報60分 | 620分 |
| 文系(地歴公民2科目) | 国語90分+地歴公民2科目130分+英語リーディング80分+リスニング60分+数学①70分+数学②70分+理科(基礎2つ)60分+情報60分 | 620分 |
解答時間だけで数えると
- 2科目選択の130分は「うち解答時間120分」、リスニングの60分は「うち解答時間30分」(実施要項)
- 解答時間だけで足すと 620−10−30=580分(9時間40分)(理系は理科、文系は地歴公民で10分引く)
- 試験の2週間前から。本番と同じ無音で、60〜90分続けて解く練習をする
- 過去問を時間を計って解くとき。本番の時間の感覚は無音で作る
- 読解・記述の勉強をするとき(この記事の前半で説明したとおり)
出典:大学入試センター「令和8年度大学入学共通テスト実施要項」(2026年10月13日確認)
よくある質問(Q&A
音楽と勉強の関係について話すと、よくもらう質問がいくつかあります。ここでは、特に多い3つにサクッと答えておきます!
- イヤホンとスピーカー、どっちがいい?
-
長時間学習ならスピーカー推奨です!
イヤホンは集中しやすいけど、長時間つけてると耳が疲れたり、頭痛の原因にもなります。音量は小さめに。練馬区「騒音のレベルのめやす」では、50デシベルが静かな事務所・エアコン室外機、60デシベルが普通の会話、70デシベルが掃除機です。 - モーツァルトを聴くと頭が良くなるって本当?
-
昔はそう言われてましたが、聴くだけで頭が良くなると言える根拠は、この記事では確認できていません。
リラックスしたり集中しやすくなる人はいますが、テストの点数が直接上がるとは言えません。 - 好きな曲だとテンション上がるからいいんじゃないの?
-
気分が上がるのは大事!ただし、“感情が動きすぎる”と集中がブレます。特に推しのライブ音源とか、歌詞を口ずさんじゃう曲は要注意!
終わった後のご褒美BGMとして活用するのがおすすめです。
音楽は「気分転換」や「集中ブースター」として使える反面、扱い方を間違えると学習効率を下げるブレーキにもなっちゃうんです。だからこそ、うまく使って“自分に合った学びスタイル”を作っていきましょう!
まとめ|音楽は“選び方と使い方”が9割
ここまで読んでくれたあなたは、もう気づいたはず。
「音楽を聴きながら勉強する」の成否は、“センス”じゃなくて“設計力”で決まるってことを。
ながら派でも成績はちゃんと伸ばせます。ただし、ポイントは3つだけ。
1つ目。歌詞のない音楽を選ぶこと。インスト・Lo-Fi・自然音、ここが基本。
2つ目。「思考系タスク」と「単純作業」でBGMのON/OFFを切り替えること。
やみくもに流すのは逆効果。
3つ目。試験前は「無音環境」に慣れておくこと。これ、地味だけどガチで重要。音楽なしでも集中できる状態をつくっておくのが合格へのラストステップです。
音楽は敵にも味方にもなります。でも正しく選び、正しく使えば、“集中スイッチ”にも、“気分転換ツール”にもなる万能アイテムです。あなたの勉強ライフに、ぜひベストな“BGM設計”を取り入れてみてくださいね!
なお、その「無音で集中する練習」が本番でどう効いてくるかは、模試の集中力を扱ったこちらで具体的に書いています。


この記事の更新・訂正
- テンポの研究(Frontiers in Psychology 2023)の結果を「120〜140BPMの曲がプラスの効果」と書いていたところを、論文どおり「138BPMは無音と差なし、66BPMは無音より遅く成績も低い」に直し、歌詞の研究(Souza・Barbosa 2023)に論文のリンクを付けました。確認できない「2024年のメタ分析」の記述を削り、音量の目安(室外機=60〜70dB)を自治体の騒音の目安に合わせて直しました。冒頭と本文の「単純作業なら歌詞なしのBGMは助けになる」も、同じ実験の結果(歌詞なしのlo-fiは成績を上げも下げもしない)に合わせて直しました
全記事の履歴は「訂正・更新の履歴」、調べ方と書き方は「記事の作り方」にまとめています。

