化学式は「覚える」ものではなく「組み立てる」ものです。丸暗記でいくと中学で20個、高校で100個と増え続けて破綻します。覚えるのは原子記号20個だけで、あとは作り方の3ルールで組み立てられます。
この記事では、暗記する最小限(原子記号)と、化学式を作る3ルール、化学反応式を係数まで書く手順、そしてテストで落ちる所を塾長が整理します。中学理科が中心ですが、高校の化学基礎にそのままつながる考え方です。
結論:暗記は原子記号だけ。化学式は3ルールで作る
| やること | 中身 |
|---|---|
| 覚える | 原子記号20個(H・He・C・N・O・F・Ne・Na・Mg・Al・Si・P・S・Cl・Ar・K・Ca・Fe・Cu・Zn) |
| ルール① | 気体は2個でペア:H₂・O₂・N₂・Cl₂(単体の気体は原子2個で1分子) |
| ルール② | 金属と炭素は記号1つ:Fe・Cu・Mg・Zn・C(つながって固まりなので添え字なし) |
| ルール③ | 化合物は「+と−の数を合わせる」:Na⁺+Cl⁻→NaCl、Mg²⁺+2Cl⁻→MgCl₂、Al³⁺+3Cl⁻→AlCl₃ |

塾で化学式が「覚えられない」と言う子は、H₂とHの違いを説明できないことがほとんどです。ルール①が入っていないので、すべてを別々に丸暗記している。「気体は2個」を先に固定すると、覚える量が半分になります。
①原子記号20個の覚え方
原子番号1〜20(H〜Ca)に、中学でよく出る鉄・銅・亜鉛(Fe・Cu・Zn)を足した並びです。語呂は昔からの「水兵リーベ僕の船…」でかまいませんが、語呂は順番を覚える道具で、記号と名前の対応は別に確認してください。
| 原子番号 | 記号 | 名前 | 中学で出る場面 |
|---|---|---|---|
| 1 | H | 水素 | 水素・水・塩酸 |
| 6 | C | 炭素 | 二酸化炭素・有機物の燃焼 |
| 7 | N | 窒素 | 空気 |
| 8 | O | 酸素 | ほぼ全部 |
| 11 | Na | ナトリウム | 塩化ナトリウム・水酸化ナトリウム |
| 12 | Mg | マグネシウム | 燃焼(2Mg+O₂→2MgO) |
| 13 | Al | アルミニウム | 金属 |
| 16 | S | 硫黄 | 硫化鉄(Fe+S→FeS) |
| 17 | Cl | 塩素 | 塩酸・塩化ナトリウム |
| 26 | Fe | 鉄 | 酸化鉄・硫化鉄 |
| 29 | Cu | 銅 | 酸化銅(2Cu+O₂→2CuO) |
| 30 | Zn | 亜鉛 | 塩酸との反応で水素発生 |
Na(ナトリウム)と N(窒素)、Mg(マグネシウム)と Mn(マンガン)は書き間違いが多い所です。2文字目は必ず小文字、という規則を体に入れてください。「NA」と書いた時点で採点は×です。
②化学式の作り方3ルール
ルール①:気体の単体は「2個でペア」
水素・酸素・窒素・塩素は、原子1個では存在せず2個で1分子になります。だから H₂・O₂・N₂・Cl₂。添え字の2は「原子が2個」の意味で、係数の2(分子が2個)とは別物です。ここが化学反応式で混ざります。
ルール②:金属と炭素は記号1つ
鉄・銅・マグネシウム・亜鉛・炭素は、原子がたくさんつながった固まりなので、化学式は記号1つで表します。Fe、Cu、Mg、Zn、C。添え字はつけません。
ルール③:化合物は「+と−を合わせる」
中学では「原子の組み合わせを覚える」と教わりますが、電気の+と−の数を合わせると考えると、覚えなくても作れます。
| +になるもの | −になるもの | 化学式(数を合わせる) |
|---|---|---|
| Na⁺(+1) | Cl⁻(−1) | NaCl |
| Mg²⁺(+2) | Cl⁻(−1)×2 | MgCl₂ |
| Na⁺(+1)×2 | O²⁻(−2) | Na₂O |
| H⁺(+1)×2 | O²⁻(−2) | H₂O |
| Cu²⁺(+2) | O²⁻(−2) | CuO |
| Na⁺(+1) | OH⁻(−1) | NaOH |

「+と−を合わせる」は高校化学のイオン式そのものです。中学のうちにこの考え方で作っておくと、高校の化学基礎でイオンに入ったときに「知ってる」状態になります。中学の先生が丸暗記で教える範囲でも、作り方で入れておいてください。
③中学理科でよく出る化学式一覧
| 物質 | 化学式 | 種類 |
|---|---|---|
| 水素 | H₂ | 単体・気体 |
| 酸素 | O₂ | 単体・気体 |
| 窒素 | N₂ | 単体・気体 |
| 塩素 | Cl₂ | 単体・気体 |
| 水 | H₂O | 化合物 |
| 二酸化炭素 | CO₂ | 化合物 |
| アンモニア | NH₃ | 化合物 |
| 塩化ナトリウム | NaCl | 化合物 |
| 酸化銅 | CuO | 化合物 |
| 酸化マグネシウム | MgO | 化合物 |
| 硫化鉄 | FeS | 化合物 |
| 塩酸(塩化水素) | HCl | 化合物 |
| 水酸化ナトリウム | NaOH | 化合物 |
| 炭酸水素ナトリウム | NaHCO₃ | 化合物 |
| 炭酸ナトリウム | Na₂CO₃ | 化合物 |
④化学反応式の書き方:係数まで3手順
| 手順 | やること | 例:水の電気分解 |
|---|---|---|
| 1 | 左に反応前、右に反応後の化学式を書く(化学式は変えない) | H₂O → H₂ + O₂ |
| 2 | 左右で原子の数を数え、合わない原子から係数を付ける | O:左1・右2 → 左のH₂Oを2にする:2H₂O → H₂ + O₂ |
| 3 | ずれた原子を係数で直す(添え字は絶対に変えない) | H:左4・右2 → 右のH₂を2に:2H₂O → 2H₂ + O₂ |
添え字(H₂の2)は物質の正体なので変えると別の物質になります。係数(2H₂の2)は個数なので自由に変えてよい。数が合わないときに触っていいのは係数だけです。ここを守るだけで化学反応式の失点は半分になります。
中学でよく出る化学反応式
| 反応 | 化学反応式 |
|---|---|
| 水の電気分解 | 2H₂O → 2H₂ + O₂ |
| 炭酸水素ナトリウムの熱分解 | 2NaHCO₃ → Na₂CO₃ + CO₂ + H₂O |
| マグネシウムの燃焼 | 2Mg + O₂ → 2MgO |
| 銅の酸化 | 2Cu + O₂ → 2CuO |
| 酸化銅の炭素による還元 | 2CuO + C → 2Cu + CO₂ |
| 鉄と硫黄の反応 | Fe + S → FeS |
| 塩酸と水酸化ナトリウムの中和 | HCl + NaOH → NaCl + H₂O |
テストで落ちる所トップ3
| 落ちる所 | 直し方 |
|---|---|
| H と H₂ を混同 | 単体の気体は2個でペア(ルール①)。「水素が発生」は必ず H₂ |
| 係数を付けるときに添え字を変える | 添え字は正体、係数は個数。触るのは係数だけ |
| Na を NA、Mg を MG と書く | 2文字目は小文字。書き間違いは0点になる |
化学式が書けたら次にやること
高校化学の一問一答で、無機・有機の化学式を演習できます。無料のサイトもまとめています。


よくある質問
- 化学式は結局いくつ覚えればいいですか?
-
原子記号20個です。化学式そのものは3ルールで作れるので、一覧を丸暗記する必要はありません。作れない物質(アンモニア NH₃ など)だけ個別に覚えてください。
- 語呂合わせで覚えるのは良くないですか?
-
原子記号の順番を覚える道具としては有効です。ただし語呂だけだと「記号→名前」の対応が抜けるので、表で確認しながら使ってください。
- 化学反応式の係数はどう決めればいいですか?
-
左右で原子の数を数え、合わない原子から順に係数を付けるのが基本です。添え字は変えません。慣れるまでは表にして数えてください。
- 高校の化学基礎でも同じ考え方で通用しますか?
-
通用します。ルール③の「+と−を合わせる」は高校のイオン式そのものです。中学でこの作り方を入れておくと、化学基礎の最初の壁が消えます。
化学式が書けるようになったら、次は化学反応式です。学習指導要領が示す「覚える範囲」と、係数の合わせ方を別記事で整理しました。

この記事で確認した資料
中学校理科・高等学校化学基礎の範囲は、文部科学省の学習指導要領(平成29・30年告示)に基づいています。化学式と化学反応式の表記は教科書の標準形です(2026年9月6日確認)。

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