文化祭の出し物が決まらないのは、候補が足りないからではありません。候補を切る基準がないから、話し合いが一周して振り出しに戻ります。
基準は自分たちで作らなくても、すでに書かれています。文化祭は学習指導要領で「文化的行事」と位置づけられた学校行事で、そのねらいが原文で決まっているからです。
「平素の学習活動の成果を発表し,自己の向上の意欲を一層高めたり,文化や芸術に親しんだりするようにすること。」(中学校学習指導要領〈平成29年告示〉解説 特別活動編/高等学校〈平成30年告示〉も同じ文)
この記事では、まず企画が通る条件をこの原文から決め、そのうえで教室・ステージ・展示・模擬店のアイデアを型ごとに並べます。最後に、バンド演奏や映画上映で許諾が要らない条件と、手続きが必要になる場合を公的な資料で確定させます。
結論:出し物は「日ごろの成果を発表する形」に寄せると通る
解説には、文化的行事の中身がもう一段くわしく書かれています。文化祭はその前半、つまり生徒がつくって見せる側の行事です。
「文化的行事には,生徒が各教科等における日頃の学習や活動の成果を総合的に発展させ,発表し合い,互いに鑑賞する行事と,外部の文化的な作品や催し物を鑑賞するなどの行事とがある。前者には,文化祭,学習発表会,音楽会(合唱祭),作品発表会などがあり」
ここから、企画会議で使える判定軸が2本引けます。「クラスの誰かの得意が出るか」と「来た人が見て分かる形になっているか」です。この2本を通る案は先生に止められにくく、通らない案は「ただ楽しいだけ」と言われて差し戻されます。
| 判定軸 | 通りやすい案 | 差し戻されやすい案 |
|---|---|---|
| 日ごろの成果が出るか | 部活の技術を使う展示、授業で作った作品、調べ学習の掲示 | 買ってきた物を並べるだけの企画 |
| 見て分かる形か | 体験できる、遊べる、順路がある | 内輪だけで盛り上がる企画 |
| 準備の重さ | 当日までの作業が分担できる | 特定の数人に作業が集中する |
| 安全と衛生 | 火も食品も使わない | 火気や調理があるのに確認していない |

生徒会の顧問をしていた頃、企画書が返ってくる理由はだいたい同じでした。「それ、うちのクラスがやる意味ある?」です。得意な子の名前が企画書に出てくるかどうかで、通り方が変わります。
出し物のアイデア一覧(教室・ステージ・展示・模擬店)

候補は4つの型に分かれます。型ごとに、準備の重さと、事前に確認が要るかどうかが変わります。
教室でできる出し物
| 出し物 | 向いているクラス | 準備の重さ | 事前の確認 |
|---|---|---|---|
| お化け屋敷 | 人数が多く、工作が好きな子がいる | 重い(暗幕・順路・音) | 消灯や暗幕は学校の許可が要ることが多い |
| 脱出ゲーム | 謎解きを作れる子がいる | 中くらい(問題づくりが山) | なし |
| 縁日(射的・輪投げ・スーパーボール) | 分担しやすい形にしたい | 軽い | 景品の扱いを学校に確認 |
| フォトスポット | 美術が得意な子がいる | 中くらい | なし |
| カジノ風ゲーム | ルール説明を回せる子がいる | 中くらい | 賭けの形にしない、と決めておく |
| プラネタリウム | 理科の調べ学習とつなげたい | 重い(暗室と投影) | 暗室の使用許可 |
| 迷路 | 段ボールを大量に集められる | 重い(安全確保) | 避難経路をふさがない設計 |
| 占い・診断 | 低予算で回したい | 軽い | なし |
ステージの出し物
| 出し物 | 向いているクラス | 準備の重さ | 事前の確認 |
|---|---|---|---|
| バンド演奏 | 軽音や吹奏楽の部員がいる | 中くらい(音響と練習) | 著作権の条件(後述) |
| ダンス | 経験者がいる | 中くらい | 使う曲の扱い(後述) |
| 演劇・ミュージカル | 脚本を書ける子がいる | 重い(稽古の時間) | 脚本の上演許可と著作権 |
| 合唱 | クラス全員が参加できる形にしたい | 軽い〜中くらい | 録音して配るなら手続き |
| お笑い・漫才 | 人前で話せる子がいる | 軽い | ネタの引用元 |
| クイズ大会 | 進行役を立てられる | 軽い | なし |
展示・発表の出し物
| 出し物 | 中身 | 日ごろの成果とのつながり |
|---|---|---|
| 調べ学習の掲示 | 地域の歴史、統計、実験の記録 | 総合的な学習の時間の成果をそのまま出せる |
| 作品展示 | 美術・技術・家庭科でつくった物 | 授業の作品に解説を付けるだけで展示になる |
| 部活動の紹介 | 記録・写真・道具の実物 | 部の広報を兼ねられる |
| 映像作品の上映 | 自作の短編、活動の記録 | 編集の技術が出る。市販作品を流す場合は後述の条件 |
模擬店(食品を出す出し物)
| 出し物 | 扱い | 注意 |
|---|---|---|
| ポップコーン・わたあめ | 加熱の器具を使う | 火気の扱いは学校と消防に確認 |
| クレープ・たこ焼き | その場で調理する | 調理を伴う出し物は保健所の扱いを確認 |
| ドリンク | 仕入れた飲料をコップに注ぐ | 衛生管理の担当を決める |
| 袋菓子の販売 | 開封しない | いちばん軽いが、売上の扱いを学校に確認 |
模擬店は企画を決めてから確認するのではなく、確認してから決めるのが正解です。理由は後の見出しで説明します。
決まらないときは、条件を先に確定させてから案を出す
多数決から始めると、実行できない案に票が集まって時間を失います。解説は、生徒が計画を立てることを前提にしたうえで、次のように書いています。
「生徒の発達の段階や実態に配慮し,生徒の希望や意見を生かし,この行事の一部については,生徒が自ら活動の計画を立て,意欲的に活動できるように援助することが大切である。」
つまり、決めるのは生徒の側です。だからこそ、決める前に動かせない条件を先生から聞き出しておくと会議が短くなります。
| 先に確認する条件 | 聞く相手 | 決まると切れる案 |
|---|---|---|
| 使える場所と広さ | 担任・実行委員 | 広い動線が要る迷路やお化け屋敷 |
| 使えるお金の上限 | 実行委員 | 大道具が多い企画 |
| 火気と調理の可否 | 担任経由で学校 | 模擬店の大半 |
| 準備にあてられる日数 | 担任 | 稽古が必要な演劇 |
| 音を出してよい場所と時間 | 実行委員 | バンド、ダンス |
条件が出そろってから案を出すと、候補は自然に絞られます。そのうえで、案ごとに担当がすべて埋まるかを確かめます。埋まらない案は、票が集まっても当日に破綻します。
解説の留意点には「事前の準備や事後の片付けにある程度の時間を必要とするものもあるが,生徒に過重な負担の掛かることのないように配慮するとともに,秩序ある活動を進め,調和のとれた指導計画を作成する必要がある」と書かれています。先生が重い企画に難色を示すのは、意地悪ではなく、この記述が根拠にあります。

会議が長引くクラスほど、条件を聞かずに案から出しています。逆に、条件を紙に書き出してから始めたクラスは、その日のうちに決まります。
バンド・ダンス・映画上映は「非営利・無料・報酬なし」なら許諾が要らない
市販の曲を演奏したり、映画を上映したりする出し物は、著作権が気になります。ここは法律に例外が置かれていて、文化庁の資料が条件を並べています。
「学校の学芸会、市民グループの発表会、公民館での上映会など、非営利・無料で出演者等に報酬が支払われないときに、音楽や映画等の著作物を無形的に利用する場合の例外」
| 条件 | 中身 |
|---|---|
| どんな使い方か | 「上演」「演奏」「上映」「口述」のいずれかであること(「複製・譲渡」や「公衆送信」は含まれない) |
| 作品 | すでに公表されている著作物であること |
| 目的 | 営利を目的としていないこと |
| お金 | 聴衆・観衆から料金等を受けないこと |
| 出演者 | 出演者等に報酬が支払われないこと |
| 表示 | 慣行があるときは「出所の明示」が必要 |
入場無料で、生徒が自分たちで演奏し、誰も報酬を受け取らない。ふつうの文化祭はこれに当てはまります。バンド演奏もダンスも映画の上映も、この形なら手続きは要りません。
見落としやすいのは1つ目です。ここに入るのはその場でやることだけで、コピーして配ることと、ネットに流すことは入っていません。
手続きが必要になるのは、この4つの場合
JASRACは、文化祭・学園祭での扱いを場合分けして示しています。手続きが要らない条件も同じページに書かれています。
「1. 営利を目的としていない/2. 名目を問わず、入場料をとらない/3. 演奏者(歌手やバンド)や指揮者など出演者へ報酬の支払いがない」
| 場合 | 手続き | 根拠の記載 |
|---|---|---|
| 入場料をとる | 必要 | 「有料であれば手続きが必要です」 |
| プロを招いて報酬を払う | 必要 | 「無料であっても、プロのミュージシャンや劇団、タレントなどを招いて出演者に報酬を支払う場合は、手続きが必要」 |
| 演奏を録音・録画してCDやDVDで配る | 必要 | 「歌唱・演奏することについての手続きが不要となる場合においても、録音・録画の手続きは必要」 |
| 楽譜をコピーする | 必要 | 「ブラスバンド部や合唱部などのクラブ活動で楽譜をコピーする場合には、手続きが必要」 |
「名目を問わず」という書き方が効いています。入場料と呼ばずに整理券代や協力金として集めても、同じ扱いになります。
SNSや配信は、その場でやることの外側にある
文化祭の様子を撮って動画サイトに上げる、ライブ配信する。この2つは「公衆送信」で、第38条第1項の対象に入っていません。JASRACも学校のホームページで音楽を流したり歌詞を載せたりする場合は手続きが必要だと書いています。

ここで止まる学校は多いです。当日は自由にやれても、上げた瞬間に別のルールに入る。撮影と投稿の担当を決めるときに、必ず共有してください。
食品と火気は、企画を決める前に学校を通して確認する
模擬店だけは、法律の条文を読んでも答えが出ません。食品の営業許可や届出は営業所を所管する保健所が窓口で、学校行事の扱いは地域ごとに判断が分かれるためです。
| やりたいこと | 確認する先 | 確認のタイミング |
|---|---|---|
| その場で調理して出す | 学校を通して保健所 | 案を出す前 |
| カセットコンロや発電機を使う | 学校を通して消防署 | 案を出す前 |
| 仕入れた飲食物をそのまま渡す | 学校 | 案を出す前 |
| 試食を無料で配る | 学校を通して保健所 | 案を出す前 |
順番を逆にすると、クラス全員で決めた企画が後から差し戻されます。調理が絡む案は、確認が取れるまで第2候補を残しておくのが安全です。
食中毒は1件あたりの患者数が、学校で33.3人・家庭で1.6人|令和6年の統計で見た
模擬店を「企画を決める前に学校を通して確認する」理由を、数字でも確かめました。厚生労働省の「令和6年食中毒発生状況」(食中毒統計調査)には、原因施設別の事件数と患者数があります。そこから、1件あたりの患者数を割り算で出しました。
| 原因施設(令和6年) | 事件数 | 患者数 | 1件あたりの患者数(計算) |
|---|---|---|---|
| 家庭 | 108件 | 168人 | 1.6人 |
| 学校 | 11件 | 366人 | 33.3人 |
| 飲食店 | 548件 | 8,656人 | 15.8人 |
| 旅館 | 28件 | 855人 | 30.5人 |
| 仕出屋 | 31件 | 1,268人 | 40.9人 |
| 全体(原因施設不明を含む) | 1,037件 | 14,229人 | 13.7人 |

計算と、数字の読み方
- 学校:366 ÷ 11 = 33.27 → 33.3人。家庭:168 ÷ 108 = 1.56 → 1.6人。飲食店:8,656 ÷ 548 = 15.79 → 15.8人。仕出屋:1,268 ÷ 31 = 40.9人
- 全体:14,229 ÷ 1,037 = 13.72 → 13.7人。学校の1件あたりは、全体の平均の 33.3 ÷ 13.7 = 2.4倍
- 統計の「学校」11件の内訳は、給食施設6件(単独調理場5件・共同調理場1件)、寄宿舎2件、その他3件。文化祭の模擬店だけを取り出した数字は、この統計には載っていない
- 患者数の「学校」366人は、全体の14,229人の 366 ÷ 14,229 = 2.6%。事件数でも 11 ÷ 1,037 = 1.1%で、学校の食中毒の件数は多くない
読み取れるのは、件数は少なくても、同じ食事を大勢が食べる場所では、1件が起きたときの患者数が大きいということです。家庭は1件あたり1.6人ですが、学校は33.3人でした。模擬店は、その場で作って大勢に渡す形なので、この「大勢が同じものを食べる」条件に近くなります(模擬店だけの統計ではありません)。
そのため、この記事のとおり、調理を伴う出し物は「確認が取れるまで第2候補を残す」のが安全です。調べる先は、前の表のとおり、学校を通した保健所(食品)と消防署(火気)です。
- 学校が保健所に確認し、袋菓子の販売や、仕入れた飲料の提供など、扱いが軽い形を選べる場合
- 調理が必要な案でも、学校の確認が取れて、衛生管理の担当が決まっている場合
- 統計の学校の件数(11件)は小さく、文化祭だけの数字ではない。件数の少なさで安心もしない方がよい
出典:厚生労働省「令和6年食中毒発生状況」(PDF・原因施設別発生状況)(2026年10月15日確認)
高校の文化祭は「学校祭」として位置づけが少し違う
高等学校の解説では、文化的行事の例が「文化祭(学校祭),音楽会(合唱祭),弁論大会」と示されています。さらに、行事を絞る考え方も書かれています。
「生徒が各教科・科目等における日頃の学習の成果を総合的に発展させ,発表し合い,互いに鑑賞し合う行事として文化祭を実施し,生徒の手によらない作品や催し物を鑑賞する行事として地域の伝統文化等の鑑賞会を実施するなど,重点化することである。」
高校の文化祭が学校全体で大きくなりやすいのは、行事を重点化した結果です。だから高校では、クラス単位の出し物と、部活動の発表が同じ日に並びます。クラスの案を考えるときは、部活の展示と中身がぶつからないかも見ておくと通りやすくなります。
解説はまた、異学年の交流と、家庭や地域の人々との交流を深める機会にすることにも触れています。来場者に保護者や地域の人が含まれる前提で企画を組むと、説明の掲示や順路の案内が自然に必要になります。
決まったあとにやること
| 時期 | やること | 担当 |
|---|---|---|
| 決定直後 | 企画書と必要な確認の一覧を作る | 実行委員 |
| 準備の前半 | 材料と道具の調達、掲示物の下書き | 分担 |
| 準備の後半 | 通し練習、当日の動線の確認 | 全員 |
| 前日 | 設営、消火や避難経路の確認 | 全員 |
| 当日 | 受付・案内・記録の交代制 | 時間で交代 |
| 終了後 | 片付けと記録の整理 | 全員 |
記録係を置いておくと、来年のクラスに引き継げます。解説が「学校独自の文化と伝統を継承し」と書いているのは、こういう積み重ねのことです。
学校行事の企画に使える関連記事
話し合いの進め方や、クラスで案を出す練習には、同じ学校行事クラスタの記事もあわせて使ってください。体育祭の団やクラスの合言葉を決める係になったら、学校の公式サイトで発表された実例を型に分けた体育祭のスローガンの例も参考になります。


出し物の前に、その年のテーマを決める手順と実際に使われたテーマの型はこちらです。

よくある質問
- 文化祭でJ-POPを演奏するのに許可は要りますか?
-
入場無料で、営利目的ではなく、出演者に報酬が支払われないなら手続きは要りません。著作権法第38条第1項の条件を満たすためです。有料にしたり、プロを招いて報酬を払ったりする場合は手続きが必要になります。
- 市販の映画を上映してもいいですか?
-
第38条第1項には「上映」も入っています。無料・非営利・報酬なしという同じ条件を満たす形であれば、上映そのものは対象です。ただしDVDのコピーや配信は含まれないので、別に考える必要があります。
- 演奏を録画してSNSに上げるのは大丈夫ですか?
-
その場で演奏することと、録画して配ったり流したりすることは別の扱いです。第38条第1項は「複製・譲渡」や「公衆送信」を含みません。学校で撮影と投稿の方針を決めてから動いてください。
- 教室でできる出し物で、準備が軽いものはどれですか?
-
縁日形式(射的・輪投げ)と占い・診断が軽い部類です。担当を細かく分けられるので、準備の負担が特定の生徒に集中しにくいという利点もあります。
- 模擬店は自由にやっていいのですか?
-
食品の営業許可や届出は、営業所を所管する保健所が窓口です。学校行事の扱いは地域で判断が分かれるので、学校を通して確認してから企画を決めてください。
- 出し物が決まらないときはどうすればいいですか?
-
案を出す前に、使える場所・お金の上限・火気の可否・準備できる日数・音を出せる時間を確定させてください。条件が決まると候補が自然に絞れて、多数決が短く済みます。
この記事で確認した公式ページ
本文で引用した原文と条件は、文部科学省・文化庁・JASRAC・東京都保健医療局が公開している資料で確認しました(2026年9月8日確認)。
中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 特別活動編(学校行事「文化的行事」)

