暗記方法を調べると、「書いて覚える」「音読する」「五感を使う」といったコツがたくさん出てきます。どれも間違いではありませんが、どれを一番先にやるべきかは、コツを並べただけでは分かりません。
この記事では、記憶の研究でよく引用される3本の原典(論文と本)を実際に開き、そこに書かれている数字だけで「効く暗記方法」を整理します。ネットでよく見る「忘却曲線によると1日でほとんど忘れる」という話が、原典では何を表しているのかも確認します。
結論:効く暗記方法は「思い出す練習」と「間をあけて繰り返す」
| やり方 | 原典で分かったこと |
|---|---|
| 読み直す | 直後のテストでは強いが、1週間後には負ける |
| 思い出す(テストする) | 1週間後に残る量がいちばん多い |
| 正解したら外す | 1週間後の成績が大きく落ちる |
| 間をあけて覚え直す | 覚え直しの手間が最初より少なくて済む |
一番効くのは、教科書やノートを閉じて自分で思い出す練習(テスト)を、日を分けて何回も行うことです。読み直しは「覚えた気がする」感覚は強いものの、1週間後に残る量では思い出す練習に負けます。
- 読む時間を減らして思い出す時間を増やす
- 一度正解した問題も外さない
- 同じ日に詰めず日を分ける
- 「覚えた気がする」を信じない

暗記カードや一問一答が効くのは、カードそのものの力ではありません。答えを隠して思い出す形になっているからです。ノートを眺めるだけの時間を、思い出す時間に置きかえるのがいちばんの近道です。
読み直すより思い出すほうが、1週間後に残る
Roediger と Karpicke の実験(Psychological Science 2006年)では、大学生が短い科学の文章を覚え、そのあとの勉強のしかたを3つに分けました。5分間の時間を4回使い、4回とも読む人(SSSS)、3回読んで1回テストする人(SSST)、1回読んで3回テストする人(STTT)です。テストは、文章を見ずに思い出せることを全部書き出す形です。
| 勉強のしかた | 5分後の最終テスト | 1週間後の最終テスト |
|---|---|---|
| 4回読む(SSSS) | 83% | 40% |
| 3回読んで1回テスト(SSST) | 78% | 56% |
| 1回読んで3回テスト(STTT) | 71% | 61% |
5分後のテストでは、たくさん読んだ人ほど点が高く、順位は「読む>テスト」でした。ところが1週間後には順位がひっくり返り、テストを多くした人ほど多く覚えていました。論文によると、3回テストした人が本文を読んだ回数は平均3.4回、4回読んだ人は14.2回です。4倍以上読んだのに、1週間後に負けています。
Testing has a powerful effect on long-term retention.
Roediger & Karpicke(2006)Psychological Science
同じ論文の1つ目の実験でも、1週間後に覚えていた量は、テストした文章が56%、読み直した文章が42%でした。定期テストや入試のように何日も先に使う知識を覚えるなら、読み直しより思い出す練習に時間を回したほうが得です。
- 直後の手応えは読み直しが上
- 1週間後は思い出す練習が上
- 読む回数を増やしても逆転しない
- 思い出せない所だけ読み直す
正解した問題を外すと忘れる:単語40個の実験
Karpicke と Roediger のもう1つの実験(Science 2008年)では、大学生がスワヒリ語と英語の単語のペア40個を覚えました。全員がいったん全部答えられるようになったあと、条件を分けています。正解した単語もテストし続ける条件と、一度正解した単語はテストから外す条件です。
| 覚え方 | 1週間後に思い出せた割合 |
|---|---|
| 正解した語もテストし続けた | 約80% |
| 正解した語はテストから外した | 36%・33% |
覚える途中の成績は、どの条件もほとんど同じでした。違いが出たのは1週間後です。単語帳で「覚えた語にチェックを付けて、次から飛ばす」やり方は、この実験の「外した」条件と同じ形です。
もう1つ大事なのは、学生自身の予想です。1週間後に思い出せる割合を、どの条件の学生も平均して約50%と予想していて、条件による差はありませんでした。つまり、自分の感覚では「どの覚え方が効いているか」は分かりません。
- 正解した語も次の周回に残す
- チェックは「外す印」にしない
- 間違えた語は同じ日にもう一度
- 自分の手応えより正解数で判断

忘却曲線は「覚えている割合」ではない

暗記の話でよく出る「エビングハウスの忘却曲線」は、エビングハウスが自分自身を相手に、意味のない音節(13個で1組)を覚えては時間をおいて覚え直す実験から生まれたものです。原典の英訳(第7章)では、結果が次のように書かれています。
| 覚えてからの時間 | 原典に書かれている結果 |
|---|---|
| 1時間後 | 最初の作業の半分をもう一度かける必要があった |
| 8時間後 | 取り戻す作業は最初の3分の2 |
| 24時間後 | 約3分の1が残っていた |
| 6日後・1か月後 | 約4分の1・5分の1が残っていた |
ここで測っているのは、覚え直すときに手間がどれだけ減ったか(節約率)です。「1日後に3分の1しか覚えていない」という意味ではありません。1日たっても、覚え直しにかかる手間が最初より3分の1ほど少なく済む、という結果です。
この結果から言えるのは、忘れるのは最初の数時間が速く、そのあとはゆっくりになるということです。覚えた当日か翌日に1回思い出しておくと、そのあとの覚え直しが軽くなります。
- 縦軸は覚え直しの手間の節約
- 忘れるのは最初の数時間が速い
- 1日たっても手間は減っている
- 完全に0に戻るわけではない
短時間・一夜漬けで暗記する方法
明日のテストまで時間がないときは、上の実験の「5分後のテスト」の結果が参考になります。直後に使うだけなら、読み直しでも点は取れます(4回読んだ人が83%)。ただし、その知識は1週間後に40%まで落ちました。
一夜漬けで覚えるときも、読むだけで終わらせず、最後に何も見ずに書き出す時間を入れてください。書き出せなかった所だけを読み直し、もう一度書き出します。こうすると、テストのあとも内容が残りやすくなります。
| 時間がないとき | やること |
|---|---|
| 残り1時間 | 読む→閉じて書き出す→抜けだけ読むを2周 |
| 残り1晩 | 寝る前に書き出し、朝もう一度書き出す |
| 残り3日 | 毎日1回、全部を思い出すテストをする |
- 読むだけで終わらせない
- 最後は必ず見ずに書き出す
- 覚えた語も外さず確認する
- テスト後に1回復習すると残る
科目別の暗記のやり方

思い出す練習と日を分けることは、どの科目でも同じです。科目ごとの違いは、何を思い出す形にするかです。
| 科目 | 思い出す形の例 |
|---|---|
| 英単語・古文単語 | 日本語を見て単語を言う・書く |
| 社会(歴史・地理) | 用語を隠して一問一答で答える |
| 理科(化学式など) | 名前を見て式を書く |
| 数学の公式 | 白紙に公式を書き、1問解く |
単語は「見て意味が分かる」段階で止めずに、意味から単語を出せるかまで確かめます。社会や理科は一問一答形式の問題集がそのまま思い出す練習になります。当サイトの一問一答や、科目別の覚え方の記事も使ってください。



1週間の回し方
ここまでの原典の結果を、1週間の予定に置きかえた例です。回数や曜日は目安なので、テストの日から逆算して調整してください。
| タイミング | やること |
|---|---|
| 覚えた日 | 読んだあと、閉じて書き出す |
| 翌日 | 全部を一問一答で思い出す |
| 3日後 | 全部をもう一度(正解した所も外さない) |
| 1週間後 | 全部を思い出し、間違えた所だけ読み直す |
ポイントは、毎回「全部」を思い出すことです。覚えた所を外していくと、Science の実験の「外した」条件と同じになります。時間が足りないときは、1回の量を減らしても、全部を回す回数を優先してください。

よくある質問
- 一番いい暗記方法は何ですか?
-
教科書やノートを閉じて自分で思い出す練習を、日を分けて繰り返すことです。Roediger と Karpicke の実験では、1回読んで3回テストした人が、4回読んだ人より1週間後に多く覚えていました(61%と40%)。
- 一瞬で暗記する方法はありますか?
-
一度で長く残す方法は、原典の中にはありません。直後のテストなら読み直しでも点は取れますが、1週間後には大きく落ちます。短時間でも最後に見ずに書き出す時間を入れてください。
- 覚えた単語は単語帳から外していいですか?
-
外さないほうがよいです。Karpicke と Roediger の実験では、正解した語もテストし続けた条件は1週間後に約80%思い出せましたが、正解した語を外した条件は36%と33%でした。
- 忘却曲線の「1日でほとんど忘れる」は本当ですか?
-
エビングハウスの原典で測っているのは、覚え直すときの手間の節約率です。24時間後に約3分の1が残っていたという結果で、覚えている量の割合ではありません。
- 書いて覚えるのと音読はどちらがいいですか?
-
この記事で確認した原典は、書く・音読の比較はしていません。どちらでも、答えを隠して自分で思い出す形にすることが、1週間後に残る量を増やします。
この記事で確認した資料
・Roediger, H. L., & Karpicke, J. D.(2006)Test-Enhanced Learning. Psychological Science, 17(3)(1週間後の56%と42%、83%・78%・71%と40%・56%・61%、3.4回と14.2回)
・Karpicke, J. D., & Roediger, H. L.(2008)The Critical Importance of Retrieval for Learning. Science, 319(40ペア、約80%と36%・33%、予測約50%)
・Ebbinghaus, H. Memory: A Contribution to Experimental Psychology, Chapter 7(英訳)(13音節、1時間後・8時間後・24時間後・6日後・1か月後の結果)
いずれも2026年9月29日に本文を開いて確認しました。



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