英単語の覚え方で最初に決めるのは、単語帳でもアプリでもなく、「どの状態まで覚えるか」と「1日に何語やるか」の2つです。この2つが決まっていないと、書いて覚える子はノートを埋めて満足し、見て覚える子は「覚えたつもり」で止まります。
この記事では、文部科学省の学習指導要領解説(中学校・高等学校の外国語編)に書かれている語数と、「受容語彙」から「発信語彙」へ進むという考え方を土台にして、塾で中学生・高校生に教えている手順をそのまま書きます。忘却曲線のような記憶研究の数字は、一次資料を確認していないので使いません。
①覚える状態は3段階(見て意味が分かる→聞いて分かる→日本語から書ける)。入試の長文は段階1で読め、定期テストの英作文は段階3が要る。②1日の語数は「1周が2〜3週間で終わる数」から逆算する。③ノートは「書いて覚える」ためではなく、間違えた語だけを集めるために使う。④中学生は教科書の新出語を段階3まで、高校生は単語帳1冊を段階1で回してから段階3に上げる。

「1日10語ずつ、ていねいに書いて覚える」は、いちばん多くの生徒が挫折したやり方です。1周が終わる前に最初の語を忘れるので、達成感がないまま単語帳を変えてしまいます。
まず知っておく数字:中学で1,600〜1,800語、高校で400〜600語ずつ
「英単語は何語覚えればいいのか」は、学習指導要領の解説に数字で書かれています。中央教育審議会の整理として、小学校で600〜700語程度、中学校で1,600〜1,800語程度、高等学校で1,800〜2,500語程度を指導する、とあります。
| 学校段階 | 新たに指導する語数(文科省) | 累計の目安 |
|---|---|---|
| 小学校 | 600〜700語程度 | 600〜700語 |
| 中学校 | 1,600〜1,800語程度(前回の改訂は1,200語程度) | 中学校修了時までに2,200〜2,500語程度 |
| 高校「英語コミュニケーションⅠ」 | 小・中で学習した語に400〜600語程度の新語 | 高校全体で1,800〜2,500語程度を追加 |
小学校の「600〜700語程度」と中学校の「1,600〜1,800語程度」を加えると、中学校修了時までに2,200〜2,500語程度の語彙が学習されていることになる。
文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 外国語編 英語編」
中学校の解説には、「1600語」は新たに指導する語数の下限で、「1800語」は目安であって上限ではないとも書かれています。つまり中学の3年間で1,600語以上の新語が教科書に出てくるのは決まっていて、学校の授業で扱う語だけで、市販の高校入試用の単語帳1冊に近い量になります。
高校生が使う大学受験用の単語帳は、出版社が公式に語数を出しているもので1冊1,900語前後です(4冊の公式データは下の記事で比べています)。中学までの2,200〜2,500語と合わせて、大学入試までに触れる語は4,000語を超える計算です。

- 小学校で600〜700語程度
- 中学校で1,600〜1,800語程度
- 高校で400〜600語程度の新語を追加
- 中学修了までに2,200〜2,500語程度
覚え方の順番:「受容語彙」を先に作り、「発信語彙」は一部でいい

学習指導要領の解説は、語彙を2種類に分けています。受容語彙(聞いたり読んだりして意味が分かる語)と、発信語彙(話したり書いたりして使える語)です。そして、示された語数の「全てを生徒が発信できるようにすることが求められているわけではない」と明記しています。
外国語学習において、新たに学習する語彙は、一般的にはまず受容語彙として提示され、その一部が段階を経て発信語彙として習得されていく。
文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 外国語編 英語編」
この順番が、覚え方の土台です。塾では次の3段階で「どこまで覚えるか」を先に決めさせています。
| 段階 | できること | 必要になる場面 |
|---|---|---|
| 段階1(受容) | 英語を見て、日本語の意味が言える | 入試の長文読解、共通テストのリーディング |
| 段階2(受容) | 英語を聞いて、意味が分かる | リスニング、授業の聞き取り |
| 段階3(発信) | 日本語を見て、英語のつづりが書ける | 定期テストの英作文、記述式の和文英訳 |
大学入試の長文は、段階1ができていれば読めます。1,900語の単語帳を全部段階3まで上げようとすると時間が足りず、途中で止まります。まず全語を段階1にして1周し、書けないと困る語(教科書の新出語、英作文で使う語)だけ段階3に上げるのが、解説の「一部が段階を経て発信語彙として習得されていく」に沿った順番です。
逆に中学校の定期テストは、教科書の新出語を「書けるか」で採点されます。中学生は範囲の語を段階3まで上げる必要があり、ここが高校生との違いです(後の見出しで分けて書きます)。
1日に何語?「1周が終わる日数」から逆算する
1日の語数は、「1語を覚えるのにかかる時間」ではなく「1周を何日で終えるか」から決めます。解説にも「何度もこれらの語彙に触れるうちに徐々に定着の度合いが高まり」とあるとおり、1回で覚え切る前提を捨て、短い周期で同じ語に何度も触れる設計にします。
| 単語帳の総語数 | 1周の目標 | 1日あたりの語数(計算) |
|---|---|---|
| 1,900語(大学受験用の1冊) | 20日 | 95語 |
| 1,900語(大学受験用の1冊) | 30日 | 約63語 |
| 1,800語(中学3年間の新語の目安) | 30日 | 60語 |
| 400語(教科書1学期分の目安) | 10日 | 40語 |
「1日95語なんて無理」と思う人が多いのですが、段階1(見て意味が言える)だけなら、1語にかける時間は数秒です。1日95語を10分×3回で回すやり方は、次の見出しで書きます。1日10語をていねいに書く方式だと、1,900語の1周に190日かかり、最初の語は半年前になります。これが挫折の原因です。
1周目は「意味が言えるか」だけ判定し、言えなかった語に印を付けます。2周目は印の付いた語だけを回すので、日数は1周目の半分以下になります。3周目でさらに絞る、という形で、周を重ねるほど1日の負担が軽くなります。
塾で教えている1回10分の手順(1日3回)

中学生にも高校生にも同じ手順を教えています。道具は単語帳と赤シート(またはアプリの隠す機能)だけで、ノートは使いません。
| 手順 | やること | 時間 |
|---|---|---|
| ①見る | 英語を見て意味を言う。言えたら次へ、言えなかったら鉛筆で印 | 1語あたり数秒 |
| ②音を確認 | 印の付いた語だけ、音声を聞いて発音をまねる(段階2) | 2〜3分 |
| ③もう一度 | 印の付いた語だけ、①をもう一回。言えたら印は消さず残す | 2〜3分 |
| ④翌日 | 前日の範囲の印の語から始めて、今日の範囲へ | — |
ポイントは「言えなかった語に印を付けて、印だけを回す」ことと、印を消さないことです。印の数が、その語を何回間違えたかの記録になります。2周目以降は印が2つ以上の語だけを回せば、自分の苦手な語だけの単語帳になります。
1日3回に分けるのは、朝・学校の休み時間・寝る前のように、同じ日に時間を空けて同じ語に触れるためです。1回30分まとめてやるより、10分を3回のほうが、翌日に意味が言える語が多い、というのが塾で見ている実感です。

- ①見る:意味を言えたら次へ、言えなければ印
- ②音を確認:印の語だけ発音をまねる
- ③もう一度:印の語だけ繰り返す
- ④翌日:前日の印の語から始める
ノートの使い方:「書いて覚えるノート」は作らない
「英単語 覚え方 ノート」で調べる人に先に伝えたいのは、単語を何回も書き写すノートは作らないということです。書き写しは手が動いているぶん勉強した感覚が強いのに、段階1の判定(見て意味が言えるか)をしないので、覚えたかどうかが分からないまま進みます。
ノートを使うなら、用途は次の2つだけです。
| ノートの用途 | 書くもの | 使う場面 |
|---|---|---|
| 間違え帳 | 印が3つ以上付いた語だけ。英語・意味・自分が混同した語 | テスト前に、このノートだけを回す |
| 段階3の練習 | 日本語を見て英語を書く。1語1回だけ。書けなかった語に印 | 定期テストの英作文の範囲、記述式の和文英訳 |
段階3の練習でも、書くのは1語につき1回です。書けたかどうかを判定するために書くのであって、手に覚えさせるためではありません。5回書いても、翌日に書けなければ意味がなく、1回で書けたなら残り4回は要りません。
1行に「英語/日本語の意味/混同した語や間違えたつづり」を書く。例:「rise(上がる)/raise(〜を上げる)と混同」。書く語は印が3つ以上の語だけに絞る。ページが増えないほど、テスト前に回せる。
中学生の覚え方:教科書の新出語を「書ける」まで

中学生は、覚える語の範囲がはっきりしています。教科書の各ページの新出語で、3年間で1,600語以上になります。定期テストは範囲の語を書けるか(段階3)で採点されるので、高校生のように段階1で止めるやり方は通用しません。
塾で中学生に指示している手順は、①授業で習った日に、新出語を「見て意味が言える」まで(段階1)②その週のうちに「聞いて分かる」(段階2・教科書の音声)③テスト2週間前から「日本語を見て書ける」(段階3)を1語1回ずつ、の順です。段階3を習った日にやらないのが、続けるコツです。
中学生に多いつまずきは、「単語は書けるのに文で使えない」と、「小学校で習った語が抜けている」の2つです。中学校の解説にも、小学校で扱った語と関連付けながら語彙を増やすとあるので、小学校の600〜700語が抜けていると中学の1,600語が積み上がりません。中1の最初で英語が苦しい子は、まず小学校の語を段階1で確認してください。
学校の単語テストや定期テストで毎回半分以下なら、範囲の決め方と回し方を一緒にやってくれる場所が要ります。通塾なら【森塾】
のように、定期テストの範囲を塾側が管理する個別指導が向いています。

高校生の覚え方:単語帳1冊を「見て分かる」で回してから上げる
高校生は、学校の教科書の新出語(英語コミュニケーションⅠで400〜600語程度)と、入試用の単語帳(1冊1,900語前後)の2本立てになります。解説にあるとおり、高校では「中学校までに学習した既習語彙」を繰り返し活用して定着させることも求められるので、中学の2,200〜2,500語が抜けていないかを高1のうちに確認してください。
入試用の単語帳は、1冊を段階1で1周してから、印の語だけを回すのが基本です。「日本語→英語で書ける」まで全語を上げる必要はありません。記述式の和文英訳や自由英作文で使う語は、読める語のうちの一部で足ります。
いちばんやってはいけないのは、途中で単語帳を変えることです。どの1冊を選ぶかより、1周を終えて印を付け終えることのほうが先です。単語帳ごとの覚え方の型(フレーズか、1語1訳か)は、上で紹介した比較記事に公式データで書いています。
単語と並行して文法・解釈・長文をどの順で進めるかは、下の記事にまとめています。映像授業で単語のペースを作りたい人は、スタディサプリ高校・大学受験講座
のように単語の講座と長文の講座が同じアプリにあるものを使うと、段階1と長文読解を同じ日に回せます。

覚えられないときの原因は3つ
「英単語が覚えられない」と相談に来る生徒の原因は、ほとんど次の3つのどれかです。
| 原因 | 起きていること | 直し方 |
|---|---|---|
| 1周が長すぎる | 1日10語で、最初の語に戻るのが半年後 | 1日の語数を「1周2〜3週間」から逆算し直す |
| 段階3から始めている | 全語を書いて覚えようとして、量が進まない | まず段階1で全語を1周。書くのは印の語だけ |
| 判定していない | 眺める・書き写すだけで、言えるかを確かめていない | 赤シートで隠して、言えたか言えなかったかを毎回判定 |
3つに共通しているのは、「覚えたかどうかを判定する回数」が少ないことです。覚える作業(見る・書く)より、判定する作業(隠して言う)の回数を増やすと、同じ時間で言える語が増えます。
使い終わった単語帳や、変えてしまって使わなくなった単語帳は、捨てずに買取に出せます。参考書の買取は【学参プラザ】公式サイト(買取申し込み)のように、書き込みの条件を公式に出している店を選んでください。

- 1周が長すぎる(1日10語で半年かかる)
- 段階3(書く)から始めている
- 判定していない(見るだけ・写すだけ)
よくある質問
- 英単語は1日に何語覚えればいいですか?
-
「1周が2〜3週間で終わる語数」から逆算します。1,900語の単語帳なら20日で1周する場合は1日95語、30日なら約63語です。1周目は「見て意味が言える」だけを判定するので、1語にかける時間は数秒です。
- 英単語は書いて覚えるべきですか?
-
全語を書く必要はありません。文科省の解説にあるとおり、語彙はまず受容語彙(見て・聞いて分かる)として提示され、その一部が発信語彙(書ける・話せる)になります。書くのは、定期テストの範囲や英作文で使う語だけ、1語1回で足ります。
- ノートはどう使えばいいですか?
-
書き写し用のノートは作りません。用途は「間違え帳」(印が3つ以上付いた語だけを英語・意味・混同した語で1行に書く)と、「段階3の練習」(日本語を見て英語を1回だけ書く)の2つです。
- 中学生と高校生で覚え方は違いますか?
-
違います。中学生は教科書の新出語(3年間で1,600〜1,800語程度)を定期テストで「書ける」まで上げる必要があります。高校生は入試用の単語帳1冊を「見て意味が分かる」で1周してから、印の語だけを回します。
- 中学生は何語覚えればいいですか?
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文科省の解説では、中学校で新たに指導する語は1,600〜1,800語程度で、小学校の600〜700語程度と合わせると中学校修了時までに2,200〜2,500語程度です。「1800語」は目安であって上限ではないと書かれています。
- 単語帳は何を選べばいいですか?
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どの1冊でも、1周を終えて印を付け終えることのほうが先です。公式が語数を出している単語帳は1冊1,900語前後で、フレーズで覚える型か1語1訳の型かで選びます。途中で変えないでください。
- アプリと紙の単語帳はどちらがいいですか?
-
どちらでも、①隠して言えるか判定できる②言えなかった語に印を付けて印だけ回せる③音声が聞ける、の3つができれば同じです。この3つができないアプリ(眺めるだけ・書き写すだけ)は避けてください。
- 覚えてもすぐ忘れます。どうすればいいですか?
-
1周の期間を短くして、同じ語に触れる回数を増やしてください。解説にも「何度もこれらの語彙に触れるうちに徐々に定着の度合いが高まり」とあります。1日3回(朝・休み時間・寝る前)に分けて、印の語から始めるのが塾での指示です。
この記事で確認した公的資料
本文の語数と引用は、次の文部科学省の資料の本文で確認したものだけです。資料は2026年9月22日に開きました。記憶研究の数値は使っていません。
文部科学省「中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 外国語編」(PDF):第2章 語、連語及び慣用表現(1600〜1800語程度、受容語彙と発信語彙)


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