勉強しているのに身についている気がしない。この感覚は、ほとんどの場合「身についていない」証拠ではありません。実感は定着よりかなり遅れて出るので、感覚で判定すると必ず不安になります。
この記事では、原因3つと、感覚に頼らずに「身についた」を判定する基準3つ、1週間で確かめる手順を、塾で生徒を見てきた立場からまとめます。
- ①何も見ずに解けるか…翌日、答えも解説も閉じて白紙から解く
- ②手が止まらず最後まで行くか…時間を計って解く
- ③なぜその方法かを言えるか…声に出して手順を説明する
- 3つとも通れば身についています。「気がしない」はそのまま放置してよい。通らなければ、通らなかった段階に戻る
勉強しても頭に入ってる気がしないとき:「思い出す」工程が抜けていないか
「頭に入ってる気がしない」と感じるとき、多くは読む・聞く・写すだけで勉強が終わっている状態です。
読んでいる間は分かった気になりますが、閉じたあとに自分で思い出す工程が無いと、どこまで入ったかを確かめる機会がありません。
| いまの状態 | 起きていること | その日にやる対処 |
|---|---|---|
| 教科書やノートを読み返しているだけ | 見れば分かるが、思い出せるかは確かめていない | 閉じて、覚えたことを1分で紙に書き出す |
| 解説を読んで「なるほど」で次へ進む | 解き方を見ただけで、自分では解いていない | 解説を閉じて、同じ問題を最初から解く |
| 授業動画を流して聞いている | 聞いた順に理解しているが、止めて考えていない | 1本ごとに止めて、要点を3行で書く |
| 長時間まとめてやっている | 後半は疲れて入らず、どこまで入ったか分からない | 25分ごとに区切り、区切りのたびに思い出して書く |
ページを閉じて、「今やったことを見出しだけ言えるか」を試します。言えなければ、その見出しの部分だけ読み直してもう一度閉じる。これを繰り返すと、「気がしない」が「ここは入った・ここはまだ」に変わります。
学校の授業も、この「振り返り」を前提に組まれています。中学校学習指導要領の総則は、授業の工夫として次のことを求めています。
生徒が学習の見通しを立てたり学習したことを振り返ったりする活動を,計画的に取り入れるように工夫すること。
中学校学習指導要領(平成29年告示)総則 第3の1(4)(文部科学省)
家での勉強でも同じで、始める前に「今日はここまで」と決め、終わったら「何ができるようになったか」を書くだけで、頭に入った感覚はつかみやすくなります。
身についていないと感じる原因
解けば解くほど分からない問題に出会うから
勉強を進めていくと、新しい問題にどんどん出会います。学校では扱わなかった問題、教科書にはなかった問題など、これまで経験していない問題はなかなか解けません。
ですので、解けない=成長していない という錯覚が起きやすくなってしまいます。
実力を試せる機会が少ないから
そもそも問題集などを解くだけでは、本当に自分の実力が上がっているのかがイマイチ分かりにくいです。
頻繁にテストがあれば、取れた点数などで成長が測れるのですが、そういった機会が少ないことが原因の1つだと考えられます。
周囲と比べて劣等感を感じてしまうから
クラスの友達やSNSの同級生を見ていると、自分よりも賢いと思うような方に出会いますよね。どれだけ頑張っても、なかなか追いつけないという現実を見てしまうと、成長を感じにくくなってしまいます。
- 新しい問題に出会うたび「解けない=成長していない」と錯覚する
- テストなど実力を試す機会が少ない
- 周囲との比較で劣等感を感じやすい
本当に身についているかを調べる方法3選
解いた次の日に解き直す
多くの方が、1度解いた問題は放置してしまっています。色々な問題に出会うのも大切ですが、身についているかを確認するためには、「同じ問題を解き直す」ことが大切になります。
ここで「次の日」と設定しているのは、「エビングハウスの忘却曲線」に基づいています。
エビングハウスの忘却曲線とは
人間は1度覚えたことでも、時間が経てば忘れてしまいます。ではどれだけ時間が経てば忘れるのか?ということを研究したのがドイツの心理学者ヘルマン・エビングハウスです。
エビングハウス自身の実験(本人が13音節の意味のない綴りの列を覚える実験)で測ったのは、「覚えている量」ではなく、覚え直すのにかかる時間が最初に覚えたときより何%少なくて済んだか(節約率)です。
24時間後に覚え直したときの節約率は33.7%で、覚え直しに最初の約3分の2(100−33.7=66.3%)の時間がかかったという結果でした(Ebbinghaus『Memory』英訳 第7章)。
下のグラフは復習のタイミングを説明するためのイメージで、原典の測定値ではありません。
教科の勉強にそのまま当てはまる数字ではありませんが、「翌日にはかなり忘れている」こと自体は実感どおりです。だから翌日に解き直すと、忘れかけた内容を思い出して定着させることができます。


翌日に何も見ずに解き直して、完答できれば、再度1週間後に。
できなければ、そのタイミングでもう1度解き直しましょう!
また、問題にしっかり取り組んだ日付と正誤をメモしましょう。
過去に受けた模擬試験を解き直す
客観的に自分の実力を測ることができるのが、模擬試験です。しかしなかなか頻繁にあるものではありません。
そこで過去に自分が解いた問題を時間を測ってもう1度解いてみましょう。採点は難しいかもしれないですが、解答を見ながら丸つけして見てください。過去に自分が作った答案よりも成長しているかが大切です。
過去よりも溶けるようになっていれば、その分しっかり成長しています。もし伸びていない場合は、しっかりその模擬試験の問題を「エビングハウスの忘却曲線」に基づいて復習してください。
解けるだけではなくて「説明できるか」
普段問題を解く際には、正解できるかどうかを重視するかと思いますが、「他人に説明できるかどうか」を判断材料の1つに加えてみましょう。しっかり自分の言葉にできる問題は、深い理解ができています。
人に説明してみると、自分がどこを分かっていないかがはっきりします。説明できなかった部分が、そのまま「まだ身についていない部分」です。
定着率を数字で示した「ラーニングピラミッド」という図が広まっていますが、あの数値には元になる実験データがないことが指摘されているので、ここでは割合の話はしません。


誰か相手がいなくても、いる体で説明しながら理解していくととても効果が高いです。僕は現在塾講師をしていますが、上手な説明を考えれば考えるほど、その内容はいつまでも覚えています。
個別指導の塾の先生に聞いて確認してもらう
個別指導の塾の先生は、あなたの成長具合が客観的に分かります。自分では気づけないポイントまでアドバイスがもらえるので、積極的に聞いて見ましょう。
また、必要だと感じたら、今の自分に足りないところを補うためのプリントを準備してもらうなど、塾をうまく使いましょう。

せっかく塾に通っているのであれば、主体的・能動的に使うようにしましょう。塾の先生は経験もあり、さらに成長するためのポイントを熟知しています。
- 解いた翌日に何も見ずに解き直す(エビングハウスの忘却曲線)
- 完答できたら1週間後に再確認、できなければもう一度
- 過去の模試を時間を測って解き直し、過去の答案と比較する
- 「他人に説明できるか」も理解度の判断材料にする
「身についた」かどうかの判定基準3つと、通らなかったときの対処法
身についている実感というのは、基本的にあてになりません。実感が出るのは、たいてい身についてからかなり遅れてです。だから感覚ではなく、次の3つで機械的に判定してください。
| 判定 | やり方 | 通っていない場合 |
|---|---|---|
| ①何も見ずに解けるか | 答えも解説も閉じて、白紙から解く | 「読んで分かった」段階です。解き直しの回数が足りていません |
| ②手が止まらず最後まで行くか | 時間を計って解く | 解法は分かっていますが、試験では点になりません。速さの問題です |
| ③なぜその方法かを言えるか | 声に出して手順を説明する | 手順を覚えているだけです。数字が変わると解けなくなります |

③でつまずく生徒がかなり多いです。「なんとなくこうやった」と言う場合、次に少し形を変えられると崩れます。逆に、説明できる問題は本番でもまず落としません。判定としてはこれが一番当たります。
実際にテストの点が下がっている場合は、別の話です
ここまでは「感覚として不安」という状態の話です。実際に点数や偏差値が動いていない場合は、原因の切り分けから始める必要があります。手順は下の記事にまとめています。

- ①何も見ずに解けるか→通らなければ解き直しの回数不足
- ②手が止まらず最後まで解けるか→通らなければ速さの問題
- ③なぜその方法かを言えるか→通らなければ手順を覚えているだけ
- 実感ではなく3つの基準で機械的に判定する
1週間でできる確認手順【翌日→3日後→1週間後】
「身についているか」は、解き直しの日付をずらすだけで確かめられます。1週間、次の表のとおりに回してみてください。
| 日 | やること | 見るもの |
|---|---|---|
| 1日目 | いつもどおり勉強する。解いた問題に日付と○×を書く | — |
| 2日目 | 1日目の×と、○のうち3問を何も見ずに解き直す | 翌日に解けた○の数(①の判定) |
| 4日目 | 2日目に解けなかったものだけ、もう一度 | 2回目で解けたか(解き直し1回で足りるか) |
| 5〜6日目 | 新しい範囲を進める。解いた問題には同じく日付と○× | — |
| 8日目 | 1日目の問題を時間を計って解き、1問だけ声に出して説明する | 止まらず解けるか(②)・理由を言えるか(③) |

この1週間を1回やると、「気がしない」が「ここは身についた・ここはまだ」に変わります。不安の正体は「確かめていないこと」なので、確かめた瞬間に消えます。
勉強する時は「逆」も意識してみる
「逆」の発想を取り入れた勉強は時にとても効果が高いです。いくつか例を挙げてみますので、ぜひ取り入れてみてください。
- 英単語を「英語→日本語」ではなく「日本語→英語」にして確認してみる
- 社会の語句は、「説明を見て用語を答える」のではなく「用語を見て説明」をしてみる
- 解説を先に見てインプットしてから、問題を解いてみる
「やったのに身についていない」を家で直すなら、スタディサプリ高校・大学受験講座のように単元ごとに5分から見直せる映像授業が向いています。理解を入れ直してから演習に戻すためです。
「思い出す」と「間を空ける」の効果を論文の数字で確かめる
この記事の「閉じて思い出す」「翌日に解き直す」は、心理学でテスト効果・分散学習と呼ばれる現象に当たります。
代表的な2本の論文(Roediger & Karpicke 2006、Cepeda ほか 2006)を本文で読み、実験の条件と結果の数字を書き出しました。
読み直すより、思い出して書く方が1週間後に残った
| 実験の条件(大学生・短い英文) | 5分後 | 2日後 | 1週間後 |
|---|---|---|---|
| 実験1:もう1回読む | 81% | 54% | 42% |
| 実験1:思い出して書く(答え合わせなし) | 75% | 68% | 56% |
| 実験2:4回読む | 83% | — | 40% |
| 実験2:3回読んで1回書く | 78% | — | 56% |
| 実験2:1回読んで3回書く | 71% | — | 61% |
数字は最終テストで思い出せた内容の割合。文章は256語と275語の2本(「太陽」「ラッコ」)。2日後の列は実験1だけで測っています。

同じ実験2で、学習の直後に「1週間後にどれくらい覚えていると思うか」を7段階で聞いています。4回読んだ人の答えは平均4.8、1回読んで3回書いた人は4.0でした。
読み直した人の方が自信は高いのに、1週間後に思い出せた量は少ないという結果です。この記事の冒頭の「実感はあてにならない」は、この結果と同じ向きです。
間を空けると残る。ただし、データの大半は大学生くらいの年齢
| 最終テストまでの間隔 | 続けて学ぶ(正答率・%) | 間を空けて学ぶ(正答率・%) | 差(計算) | 研究の数 |
|---|---|---|---|---|
| 1日 | 32.9 | 43.0 | 10.1ポイント | 15 |
| 2〜7日 | 31.1 | 45.4 | 14.3ポイント | 9 |
| 8〜30日 | 32.8 | 62.2 | 29.4ポイント | 6 |
| すべての間隔 | 36.7 | 47.3 | 10.6ポイント | 254 |
Cepeda ほか(2006)の表1。184本の論文・317の実験をまとめた分析です。1日と2〜7日の行は研究の数が少なく、統計的にはっきりした差とは言えない(p=.249、p=.190)と表に書かれています。
表から計算したこと
- 実験1の1週間後:思い出して書く 56% − もう1回読む 42% = 14ポイントの差。5分後は逆で 81−75=6ポイント読む方が上
- 実験2の1週間後:61−40=21ポイントの差。読んだ回数(論文の表1)は4回読む人が合計14.2回、1回読んで3回書く人は3.4回で、14.2÷3.4=約4.2倍読んでいた
- 分散学習の全体:47.3−36.7=10.6ポイント。8〜30日後のテストでは 62.2−32.8=29.4ポイント
- 分散学習の比較の数(論文の表10):全839のうち中学生29・高校生14で、29+14=43。43÷839=約5.1%。18〜35歳は714で、714÷839=約85.1%
- エビングハウスの数字:原典で測ったのは、覚え直すのにかかる時間の節約率。24時間後の節約率33.7%から 100−33.7=66.3 で、本文の「1日後には66%」はこの値
2本の論文とも、直後のテストでは読み直しや詰め込みの方がよく見える点が共通しています。テスト効果の実験では5分後だけ読み直しが上でした。
「直前に見直したら分かった気がする」のに翌日以降に残らないのは、この形です。
この記事の「翌日に何も見ずに解き直す」は、時間を空けてから思い出す、の2つを同時にやる方法です。
- テスト効果の実験の対象は大学生(18〜24歳)。教材は256語と275語の英文で、テストは覚えている内容を自由に書く形式。
- 数学の計算問題や選択式のテストで、同じ差が出るとは限らない
- 翌日の定期テストの直前の一夜漬けだけを比べるなら、5分後の結果のように読み直しが上に出ることがある。差が出たのは2日後・1週間後のテスト
- 分散学習のデータの約85%は18〜35歳。論文は、テストまで1日以上空く場合の子どもについてはデータが足りず、大人と同じとは強く言えないと書いている
- 「翌日・3日後・1週間後」という間隔そのものを試した実験ではない。論文の結論は、テストまでの期間が長いほど、よい間隔も長くなる、というもの
- エビングハウスの実験は本人1人が、13音節の意味のない綴りの列を覚えたもの。教科の内容の忘れ方の数字ではない
出典:Roediger, H. L., & Karpicke, J. D. (2006). Test-enhanced learning. Psychological Science, 17(3), 249–255.(DOI: 10.1111/j.1467-9280.2006.01693.x)/Cepeda, N. J., Pashler, H., Vul, E., Wixted, J. T., & Rohrer, D. (2006). Distributed practice in verbal recall tasks. Psychological Bulletin, 132(3), 354–380.(DOI: 10.1037/0033-2909.132.3.354)表1・表10/Ebbinghaus, H.『Memory』(1913年英訳)第7章(2026年10月13日確認)
勉強が身についている気がしない人のよくある質問
- 勉強しているのに身についている気がしないのはなぜですか?
-
実感が定着より遅れて出るからです。加えて、勉強が進むほど解けない問題に出会う・実力を試す機会が少ない・周りと比べる、の3つで「成長していない」と錯覚します。感覚で判定しないでください。
- 身についたかどうかは、どう確かめればいいですか?
-
翌日に何も見ずに解き直すのが一番早いです。解けたら時間を計って解き、最後に1問だけ声に出して理由を説明する。この3つが通れば身についています。
- 解き直しは何回すればいいですか?
-
翌日・3日後・1週間後の3回が目安です。翌日で解けた問題は1週間後だけで十分。解けなかった問題は、解けた日から数え直してください。
- 解説を読めば分かるのに、自分では解けません。
-
それは「読んで分かった」段階で、身についてはいません。解説を閉じて白紙から解く回数が足りていないだけなので、翌日の解き直しを入れれば変わります。
- 実際にテストの点が下がっている場合は?
-
感覚の問題ではなく原因の切り分けが必要です。範囲・時間・やり方のどこがずれているかを先に見ます。手順は本文中の「勉強しているのに成績が上がらない5つの原因」の記事にまとめています。
- 勉強しても頭に入ってる気がしないのはなぜですか?
-
読む・聞く・写すだけで終わっていて、閉じて思い出す工程が無いことが多いです。ページを閉じて覚えたことを1分で書き出すと、入った部分と入っていない部分が分かります。

まとめ:「気がしない」は放置して、翌日の解き直しで確かめる
身についている実感は、あてにしないでください。
翌日に何も見ずに解けるか・止まらず解けるか・理由を言えるかの3つで判定し、通らなかった段階に戻るだけで、不安は「やること」に変わります。
頑張っている人ほどこの不安を持つので、確かめる習慣だけ入れてください。
【塾を検討し始めた方へ】いつから通うべきかの判断は塾はいつから通うべき?学年別の目安と入るべきサインで解説しています。
【模試の判定が気になる方へ】E判定でも時期によって意味が違います。判断基準は模試でE判定でも大丈夫?時期別の判断基準で解説しています。
続けて読む:暗記方法のコツ
この記事の更新・訂正
- 「1時間後には56%、1日後には66%を忘れていた」と書いていましたが、エビングハウスが測ったのは覚え直しにかかる時間の節約率でした。原典で確認できた24時間後の節約率33.7%(覚え直しに最初の約3分の2の時間がかかった)に書き直し、原典で確認できなかった1時間後の値は外しました
全記事の履歴は「訂正・更新の履歴」、調べ方と書き方は「記事の作り方」にまとめています。
この記事で確認した資料
学習の振り返りについての記述は、次の資料の本文で確認しました(2026年9月29日確認)。
文部科学省 中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 数学編(PDF):付録に総則を収録。第3の1(4) 学習の見通しと振り返り


