確率の問題で点を落とす原因の多くは、計算ではなく「何を1通りと数えるか」の決め方です。文部科学省の中学校学習指導要領解説にも、硬貨2枚を投げて「2枚とも表」の確率を 1/3 と答える誤りが「起こりやすい」と書かれています。
この記事では、さいころ・硬貨・玉の基本から、余事象、独立な試行のくり返し(反復試行)、じゃんけんのあいこ、期待値まで、10の例題を順に解きます。中2で習う範囲と、高校の数学Aで習う範囲を分けて示し、後半では大学入学共通テストでの出方もまとめました(2026年10月9日に文部科学省・大学入試センター・国立教育政策研究所の資料で確認)。条件付き確率は別の記事で扱っています。
- 数える…「同様に確からしい」1通りを決めて、求める場合の数÷全体の数(問1〜問3・問9)
- 足す・引く…同時に起きない事柄は足す。「少なくとも」は 1−(1回も起きない確率)(問4・問5)
- かける…影響し合わない試行は確率をかける。くり返すなら nCr 通りの順番をかける(問6〜問8)
- 平均する…期待値は「値×その確率」の合計(問10)
確率の求め方:「同様に確からしい」1通りを決める
中学校では、確率は中学2年の「データの活用」で習います。学習指導要領解説では「同様に確からしいことに着目し,場合の数を基にして得られる確率の求め方を考察し表現すること」とされ、樹形図や二次元の表で全ての場合を数えられる程度の問題を扱います。
高校では数学Aの「場合の数と確率」で、和の法則・積の法則、確率の基本的な法則(排反・余事象)、独立な試行、条件付き確率、期待値を学びます。期待値は以前は数学Bでしたが、今の学習指導要領では数学Aに移っています(解説に「従前,「数学 B」で取り扱われていた期待値は「数学 A」で取り扱う」とあります)。
| 学年・科目 | 確率で習うこと | この記事の問題 |
|---|---|---|
| 中学2年 | 同様に確からしい・樹形図・二次元の表 | 問1〜問3 |
| 数学A(確率の基本的な法則) | 排反な事象の和・余事象 | 問4・問5 |
| 数学A(独立な試行) | 独立な試行の確率の積・くり返し | 問6〜問8 |
| (発展)じゃんけん | 全ての場合を数える・人数を変える | 問9 |
| 数学A(期待値) | 値×確率の合計(数学Bから移った) | 問10 |
| 数学A(条件付き確率) | Aが起きたときのBの確率 | 別記事 |
- 確率=(求める事柄が起こる場合の数)÷(起こりうる全ての場合の数)。ただし全ての場合が同じ程度に起こるときだけ
- 確率は 0 以上 1 以下。必ず起こる事柄は 1、決して起こらない事柄は 0
- さいころ2個・硬貨2枚は、見た目が同じでも区別して数える

樹形図や表を書く前に、「1回目と2回目」「大きいさいころと小さいさいころ」のように名前を付けて区別してください。区別しないで数えると、同じ程度に起こらない場合をまとめてしまい、答えがずれます。
基本問題:さいころ・硬貨・玉(問1〜問3)

問1 さいころ2個の目の和
大小2個のさいころを同時に投げる。出た目の和が5になる確率を求めよ。
全体は 6×6=36通り。和が5になるのは(大,小)=(1,4)(2,3)(3,2)(4,1) の4通り。よって 4÷36=1/9。
和の値「2〜12」の11通りを全体にして 1/11 とするのは誤りです。和が2は1通り、和が7は6通りで、11通りは同じ程度には起こりません。
問2 硬貨4枚で「少なくとも1枚は表」
4枚の硬貨を同時に投げる。少なくとも1枚は表が出る確率を求めよ。
全体は 2×2×2×2=16通り。「少なくとも1枚は表」の反対は「4枚とも裏」の1通り。よって 1−1/16=15/16。
表が1枚・2枚・3枚・4枚の場合を全部数える(4+6+4+1=15通り)より、反対側の1通りを引くほうが速く、数え漏れもありません。
問3 袋から玉を2個取り出す
袋に赤玉3個と白玉2個が入っている。同時に2個取り出すとき、2個とも赤玉である確率を求めよ。
5個の玉に赤1・赤2・赤3・白1・白2と番号を付けて区別する。取り出し方は全部で 5C2=10通り、2個とも赤は 3C2=3通り。よって 3÷10=3/10。
「赤赤・赤白・白白」の3通りを全体にすると 1/3 になりますが、これも同じ程度に起こらない場合をまとめた誤りです(赤白は6通り、白白は1通り)。
- 全体の数は、区別して数える(問1の36通り、問3の10通り)
- 「少なくとも」は反対側を数えて1から引く(問2)
- 色だけで分けた「赤赤・赤白・白白」は、全体の数に使えない(問3)
- 組合せ nCr の意味があやしいときは階乗の記事で確認する

全国学力調査で分かる「1通り」の数え間違い
国立教育政策研究所の全国学力・学習状況調査(中学校数学)では、平成31年度・令和4年度・令和6年度・令和7年度に確率の問題が出ています。数え方の誤りがどれくらい起きているかを、報告書の数字で確認します。
| 年度・問題 | 内容 | 正答率(公表値) |
|---|---|---|
| 令和6年度 5 | 2枚の10円硬貨で「2枚とも裏」の確率 | 73.4% |
| 令和7年度 7(1) | 必ず起こる事柄の確率 | 77.6% |
| 令和7年度 7(2) | どちらが勝ちやすいかを確率で説明する | 56.3% |
令和6年度の硬貨の問題では、1/3 と答えた生徒が7.5%、1/2 と答えた生徒が9.0%いました。1/3 は「表表・表裏・裏裏」のように3通りを全体にした誤りと考えられ、学習指導要領解説が「起こりやすい」と書いている誤りと同じ形です。報告書によると平成31年度にも類題が出ていて、そのときの正答率は73.1%でした。
もう1つの典型が、「さいころを6回投げると、1の目が必ず1回は出る」という考え方です。学習指導要領解説は、これを確率の意味の理解が不十分な例として挙げています。実際の確率は問6で計算します。
| よくある誤り | どこで起きるか | 直し方 |
|---|---|---|
| 区別しないで数える | 硬貨2枚・さいころ2個・同じ色の玉 | 名前や番号を付けて、樹形図・表で数える |
| 和や色の種類を全体にする | 目の和(問1)・色の組(問3) | その分け方が同じ程度に起こるかを確かめる |
| 「6回なら必ず1回」と考える | くり返しの問題(問6) | 1回も起きない確率を出して、1から引く |
| 答えが1を超える・合計が1にならない | 場合分けの問題 | 全ての場合の確率を足して1になるか検算する |
足す・引く:排反な事象と余事象(問4・問5)
問4 同じ色の玉を2個取り出す
袋に赤玉4個・白玉3個・青玉2個が入っている。同時に2個取り出すとき、2個が同じ色である確率を求めよ。
全体は 9C2=36通り。「2個とも赤」4C2=6通り、「2個とも白」3C2=3通り、「2個とも青」1通り。この3つは同時に起こらない(互いに排反)ので足してよく、(6+3+1)÷36=10/36=5/18。
問5 さいころ3個で「少なくとも1個は6」
3個のさいころを同時に投げる。少なくとも1個は6の目が出る確率を求めよ。
「少なくとも1個は6」の余事象は「3個とも6以外」で、その確率は (5/6)×(5/6)×(5/6)=125/216。よって 1−125/216=91/216。
「1個目が6の確率 1/6 を3つ足して 1/2」とするのは誤りです。2個以上が6になる場合を重ねて数えています。
数学Aの学習指導要領解説では、確率の基本的な法則として、事象A、Bが互いに排反なら P(A∪B)=P(A)+P(B)、Aの余事象の確率は 1−P(A) とまとめています。足してよいのは排反なときだけ、という条件まで覚えてください。
- 「または」で、同時に起こらない → 足す(問4)
- 「または」で、同時に起こることがある → 足してから重なりを引く
- 「少なくとも1つ」「1つ以上」 → 1から「1つもない」を引く(問2・問5)
かける:独立な試行と反復試行(問6〜問8)
さいころを何回か投げるように、前の結果が次の結果に影響しない試行を独立な試行といい、それぞれの確率をかけて求めます(学習指導要領解説では「確率の乗法定理」)。同じ試行を独立にくり返す問題(一般に「反復試行」と呼ばれます。学習指導要領解説では、この語は数学Bの二項分布の説明に出てきます)では、「何回目に起きるか」の順番の数 nCr をかけます。
問6 さいころを6回投げて1の目が出る確率
さいころを6回投げる。1の目が少なくとも1回出る確率を求めよ。
1回も1が出ない確率は (5/6)6=15625/46656。よって 1−15625/46656=31031/46656(およそ0.665)。
6回投げても、1の目が1回も出ないことは3回に1回ほど起こります。「6回なら必ず1回」ではありません。
問7 4回のうちちょうど2回
さいころを4回投げる。3の倍数の目がちょうど2回出る確率を求めよ。
1回で3の倍数(3か6)が出る確率は 2/6=1/3、出ない確率は 2/3。4回のうち3の倍数が出る2回の選び方は 4C2=6通り。どの順番でも確率は (1/3)2×(2/3)2=4/81 なので、6×4/81=24/81=8/27。
問8 3勝先取の試合
AとBが試合をくり返し、先に3勝したほうを優勝とする。1試合でAがBに勝つ確率は 2/3 で、引き分けはない。Aが優勝する確率を求めよ。
Aが優勝するのは、3勝0敗・3勝1敗・3勝2敗の3つの場合。最後の試合は必ずAの勝ちなので、それより前の試合だけで順番を数える。
3勝0敗:(2/3)3=8/27=24/81
3勝1敗:最初の3試合で2勝1敗(3C2=3通り)→ 3×(2/3)2×(1/3)×(2/3)=8/27=24/81
3勝2敗:最初の4試合で2勝2敗(4C2=6通り)→ 6×(2/3)2×(1/3)2×(2/3)=16/81
合計 24/81+24/81+16/81=64/81。
3勝2敗を「5試合のうち3勝」として 5C3=10通りで数えると、5試合目より前に優勝が決まる並びまで数えてしまいます。
- 1回も起きない確率は、起きない確率を回数分かける(問6)
- 「ちょうど k 回」は nCr×(起きる確率)k×(起きない確率)n−k(問7)
- 「先に何勝」は、最後の1試合を固定してから順番を数える(問8)
じゃんけんの確率:人数が増えるとあいこになりやすい(問9)
1人の手の出し方は3通りで、どの手も同じ程度に出すものとして考えます。
問9 3人でじゃんけんを1回する
3人でじゃんけんを1回する。(1) 1人だけが勝つ確率 (2) あいこになる確率 を求めよ。
全体は 3×3×3=27通り。
(1) 勝つ1人の選び方が3通り、勝つ手の選び方が3通り(グー・チョキ・パー)で、残り2人の手は決まる。3×3=9通りなので 9/27=1/3。
(2) あいこは「3人とも同じ手」3通りと「3人とも違う手」3×2×1=6通りの合計9通り。9/27=1/3。
残りの 1/3 は「2人が勝つ」場合で、(1)(2)と合わせて合計が1になることで検算できます。
人数を変えて、あいこになる確率を表にしました。勝負がつくのは「手が2種類だけ出たとき」なので、あいこの確率は 1−(2種類の選び方3通り×(2n−2))÷3n で計算できます(n は人数)。
| 人数 | 全体の数 | あいこの確率(計算) |
|---|---|---|
| 2人 | 9通り | 1/3 |
| 3人 | 27通り | 1/3 |
| 4人 | 81通り | 13/27(約0.48) |
| 5人 | 243通り | 17/27(約0.63) |
5人でじゃんけんをすると、10回のうち6回ほどはあいこになります。全国学力・学習状況調査(令和7年度)でもじゃんけんのカードゲームが題材になり、どちらが勝ちやすいかを確率で説明する問題の正答率は56.3%でした。結果を答えるだけでなく、確率を使って理由を言えるかまで問われています。
期待値:数学Bから数学Aに移った内容(問10)
期待値は「とる値×その値になる確率」を全部足したもので、何回もくり返したときの1回あたりの平均と考えられます。学習指導要領解説は、期待値を「意思決定に活用」することも求めていて、イベントに向けたアイスクリームの仕入れを考える例を挙げています。
問10 くじの賞金の期待値
100本のくじがあり、1等(1000円)が1本、2等(100円)が10本、3等(10円)が30本で、残りははずれ(0円)である。1本引くときの賞金の期待値を求めよ。
| 賞金 | 本数 | 確率 | 賞金×確率 |
|---|---|---|---|
| 1000円 | 1本 | 1/100 | 10円 |
| 100円 | 10本 | 10/100 | 10円 |
| 10円 | 30本 | 30/100 | 3円 |
| 0円 | 59本 | 59/100 | 0円 |
表の右の列を足して 10+10+3+0=23円。
このくじが1本30円なら、何回も引くと1回あたり平均7円の損になる、と判断できます。はずれの本数(100−1−10−30=59本)も表に入れて、確率の合計が1になることを確かめておくと計算ミスに気づけます。
「期待値=一番起こりやすい値」ではありません。問10で一番多いのは0円ですが、期待値は23円です。
共通テストでの出題:確率の大問は必答

大学入試センターの「出題方法等」によると、令和7年度・令和8年度の「数学Ⅰ,数学A」は70分・100点で、数学Aは「図形の性質,場合の数と確率の2項目に対応した出題とし,全てを解答する」形です。確率の大問は選んで避けることができません。
| 令和8年度本試験 | 内容 | 配点 |
|---|---|---|
| 第3問 | 図形の性質(空間の三角錐) | 20点 |
| 第4問 | 場合の数と確率(リーグ戦で優勝する確率) | 20点 |
令和8年度の第4問は、3人または4人のリーグ戦でAが優勝する確率を求める問題でした。Aが相手に勝つ確率は 2/3、A以外の2人が対戦するときはどちらも 1/2 で、勝ち数が一番多い人が複数いるときは抽選で選びます。
3人の場合を、この記事の型で解くと次のようになります。Aが2勝すれば優勝で、その確率は (2/3)2=4/9。Aが1勝1敗のとき(確率 2×(2/3)×(1/3)=4/9)は、残りの対戦の結果によって3人とも1勝1敗になる場合(確率 1/2)だけ、抽選で 1/3 の確率で優勝します。合計は 4/9+4/9×1/2×1/3=4/9+2/27=14/27。大学入試センターの正解では、4人で行うときの優勝確率は 4/9 で、3人のときより 2/27 小さいという答えになっています。独立な試行のかけ算(問6〜問8)と、場合分けの足し算(問4)を組み合わせる問題です。
なお、令和8年度の「数学Ⅰ,数学A」の平均点は47.20点(受験者343,000人)で、令和7年度の53.51点から下がりました。大学入試センターの公表資料は科目全体の平均点で、大問ごとの平均点は見当たりません。

「〜であったとき」の確率(条件付き確率)は、問題文の言い回しで分母を決める方法と8つの例題を別の記事にまとめています。

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確率の問題についてよくある質問
- 確率は中学何年生で習いますか?
-
中学2年の「データの活用」です。中学1年では多数回の試行による確率(相対度数)を学び、中学2年で「同様に確からしい」ことをもとに、樹形図や表で数えて求める確率を学びます。高校では数学Aの「場合の数と確率」で続きを学びます。
- さいころを6回投げれば1の目は1回出ますか?
-
必ず出るわけではありません。1回も出ない確率は (5/6)6 で、およそ0.335です。1の目が少なくとも1回出る確率はおよそ0.665です(問6)。
- 確率の問題を速く解く裏ワザはありますか?
-
裏ワザより、「少なくとも」は1から引く、合計が1になるか確かめるの2つが確実です。問9のように、場合分けした確率を全部足して1になれば、数え漏れがないと確認できます。
- 順列と組合せのどちらで数えればよいですか?
-
全体と求める場合を同じ数え方にそろえれば、どちらでも同じ答えになります。問3を順番ありで数えると全体は 5×4=20通り、赤赤は 3×2=6通りで、6/20=3/10 と同じです。
- 期待値は数学Aと数学Bのどちらで習いますか?
-
今の学習指導要領では数学Aです。文部科学省の学習指導要領解説に、従前は数学Bで扱っていた期待値を数学Aで扱うと書かれています。数学Bの「統計的な推測」では、確率分布の平均として期待値を使います。
この記事で確認した資料
確率を習う学年と内容、典型的な誤りは文部科学省の学習指導要領解説、生徒の正答率と誤答の割合は国立教育政策研究所の全国学力・学習状況調査の報告書、共通テストの出題形式・問題・正解・平均点は大学入試センターの公式資料で確認しました(2026年10月9日)。10の問題はこの記事のために作った例題で、答えはすべて分数の計算と、起こりうる場合の全数え上げの両方で検算しています。
文部科学省「中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 数学編」(PDF・第2学年の確率 p.122〜124)
文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 数学編 理数編」(PDF・数学Aの確率 p.91〜95、二項分布 p.107)
国立教育政策研究所「令和6年度 全国学力・学習状況調査 報告書 中学校 数学」(PDF・問題5の正答率と誤答)
国立教育政策研究所「令和4年度 全国学力・学習状況調査 報告書 中学校 数学」(PDF・問題5)
国立教育政策研究所「令和7年度 全国学力・学習状況調査 報告書 中学校 数学」(PDF・じゃんけんの問題7)
大学入試センター「令和7年度 大学入学共通テスト 出題教科・科目の出題方法等」(PDF)
大学入試センター「令和8年度 大学入学共通テスト 出題教科・科目の出題方法等」(PDF・試験時間と配点)
大学入試センター「令和8年度 本試験 数学Ⅰ,数学A 問題」(PDF・第4問)


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