英文法の参考書が決まらないのは、本の情報が足りないからではありません。自分がどこでつまずいているのかを決めないまま、本の一覧を見ているからです。だから「網羅系がいい」「いや講義系から」と読むたびに答えが変わります。
この記事では、まず学習指導要領の一覧表で「中学の文法」と「高校の文法」を突き合わせ、戻る地点を先に決めます。そのうえで、出版社の公式ページで仕様を確認できた本だけを並べます。口コミの評価や偏差値の目安は使っていません。
結論:買う前に決めるのは「どこから戻るか」の1点
| 状態 | 買うもの | やること |
|---|---|---|
| 中学の文法があやしい(受け身・不定詞・比較で止まる) | 講義系1冊 | 中学範囲の総復習を先に。高校用の問題集はまだ買わない |
| 学校の授業にはついていける。演習量が足りない | 問題集1冊 | 自分のレベルの巻から始める。1巻からやらなくてよい |
| 長文を読むと文の構造が取れない | 網羅系(総合英語)1冊 | 通読ではなく、読解でつまずいた項目を引く辞書として使う |
| 入試直前で、抜けを一気に確認したい | 一問一答1冊 | 新しい知識を入れる本ではないので、他の本の後に |

塾で「英文法の参考書を買いたい」と言う生徒に、まず中学範囲の一問一答を解かせます。ここで落ちる子に高校用の分厚い本を渡しても、最後まで進みません。買う本を決める前に、戻る地点を決めてください。
高校で新しく増える文法は「関係副詞」だけ
高校で学ぶ英文法の中身は、文部科学省が学習指導要領で定めています。その付録として公表されている「外国語の言語材料」の学校段階別一覧表を見ると、中学校と高校で扱う文法事項が同じ表に並んでいます。
中学校で扱う文法事項(11項目)
代名詞(関係代名詞の主格 that・which・who と目的格 that・which の制限的用法を含む)、接続詞、助動詞、前置詞、動詞の時制及び相など、形容詞や副詞を用いた比較表現、to 不定詞、動名詞、現在分詞や過去分詞の形容詞としての用法、受け身、仮定法のうち基本的なもの。以上の11項目です。
時制のところには、現在形・過去形・現在進行形・過去進行形・現在完了形・現在完了進行形、助動詞などを用いた未来表現まで書かれています。現在完了進行形も仮定法も、いまは中学校の範囲です。
高等学校「英語コミュニケーションⅠ」で扱う文法事項(8項目)
不定詞の用法、関係代名詞の用法、関係副詞の用法、接続詞の用法、助動詞の用法、前置詞の用法、動詞の時制及び相など、仮定法。以上の8項目です。
| 高校の文法事項 | 中学の一覧にあるか |
|---|---|
| 不定詞の用法 | ある(to 不定詞) |
| 関係代名詞の用法 | ある(主格 that・which・who/目的格 that・which の制限的用法) |
| 関係副詞の用法 | ない |
| 接続詞の用法 | ある |
| 助動詞の用法 | ある |
| 前置詞の用法 | ある |
| 動詞の時制及び相など | ある |
| 仮定法 | ある(基本的なもの) |
2つの列を突き合わせた結果がこの表です。高校の8項目のうち、中学の一覧に同じ名前が出てこないのは「関係副詞の用法」だけでした。残りの7つは、中学で名前だけは出ている項目の「用法」を広げていく形になっています。
高校英語でつまずく生徒の多くが「高校の内容が難しい」と言いますが、一覧表の上では、高校で新しく名前が増えるのは関係副詞だけです。つまずきの正体は、中学の11項目のどれかが浅いまま「用法を広げる」段階に入ったことです。だから参考書選びは「高校範囲を網羅する本」ではなく「戻る地点」から決めます。
単語も同じ構造です。同じ一覧表によれば、小学校5・6年で扱うのが600〜700程度、中学校ではそこに1600〜1800程度の新しい単語が加わり、高校の「英語コミュニケーションⅠ」で加わるのは400〜600程度です。量の山場は中学にあります。
共通テストは、文法を「単独の知識」としては測らない
では高校生は文法の問題集をどこまでやるべきか。ここは志望校ではなく、まず共通テストの決まりを見ます。大学入試センターが公表している「出題教科・科目の出題方法等」によれば、共通テストの『英語』は「英語コミュニケーションⅠ」「英語コミュニケーションⅡ」及び「論理・表現Ⅰ」を出題範囲とし、リーディングが80分・100点、リスニングが60分(うち解答時間30分)・100点です。
同じセンターの「問題作成方針」には、文法の扱いがはっきり書かれています。音声や語彙、表現、文法等に関する知識や技能についても、「上記の力を問うことを通して引き続き評価する」とあります。上記の力とは、その前段にある「概要や要点、詳細、話し手や書き手の意図などを的確に理解する力」のことです。
つまり文法は、読む・聞くの中で測られるということです。問題のレベルの目安も CEFR の概ね A1〜B1 と明記されています。

ここを誤解すると本の順番を間違えます。4択の文法問題集を1冊目に買って、そればかり回すのが典型です。共通テストしか使わないなら、問題集は自分の抜けを見つける道具として使い、早めに長文へ移ってください。私大や国公立の二次で文法問題を出す大学を受けるなら、そこで初めて上位巻まで積みます。

参考書は3タイプ。役割が違うので混ぜない
| タイプ | 役割 | 向いている場面 | 向かない使い方 |
|---|---|---|---|
| 講義系 | 先生の説明を文字にした本。理屈から入る | 中学範囲があやしい/独学で最初の1冊 | 辞書として引く(項目が探しにくい) |
| 網羅系(総合英語) | 文法項目を体系で並べた本 | 読解や英作文でつまずいた項目を引く | 最初から通読する(挫折しやすい) |
| 問題集 | 解いて抜けを見つける | 授業にはついていけて演習が足りない | 知識を入れる目的で1冊目に買う |
| 一問一答 | 抜けを高速で確認する | 直前期の総点検 | ここから知識を入れる |
3タイプを同時に買う必要はありません。1タイプ1冊、それを終えてから次です。参考書が積み上がっている家庭ほど、1冊も終わっていないことが多いです。
公式データで比較:仕様を確認できた英文法の本
ここでは出版社の公式ページで定価と仕様を確認できた本だけを並べます(2026年9月7日確認)。他社にも定番はありますが、公式ページで数字を確認できなかったものは載せていません。
| タイプ | 定価(税込) | 頁数・判型 | 公式ページに書かれている特長 | |
|---|---|---|---|---|
| 大岩のいちばんはじめの英文法【超基礎文法編】 | 講義系 | 1,100円 | A5判(頁数は公式ページに記載なし) | 「授業~その前に~」「形容詞のカタマリ」の特別講義を増補。巻末に文法項目名を五十音順に並べた索引を新設 |
| 一億人の英文法 | 網羅系 | 1,980円 | A5判(頁数は公式ページに記載なし) | ナガセ(東進ブックス)刊。大西泰斗・ポール マクベイ著 |
| 英文法レベル別問題集【3訂版】 | 問題集 | 990〜1,100円 | 160〜216頁・A5判 | 大学入試や英検などで実際に出題された数万の文法問題をデータベース化し、レベルごとに良問を厳選。各レッスンの最初に「ポイント講義」。全問題文の音声とリスニング動画つき |
| 英文法・語法一問一答【完全版】 | 一問一答 | 1,100円 | 384頁・B6判 | 問題の難易度+重要度を★で表示。すべての問題にネイティブ音声つき |
この4冊がベストという意味ではありません。数字を公式で確認できたものを並べた表です。他社の本を検討するときも、価格・頁数・何が売りかを出版社の公式ページで確かめてから買ってください。

問題集は「1巻から」ではなく「自分の巻から」
レベル別問題集は6冊のシリーズです。公式ページで確認できた定価と頁数を並べます。
| 巻 | 定価(税込) | 頁数 |
|---|---|---|
| 1 超基礎編 | 990円 | 160頁 |
| 2 初級編 | 990円 | 160頁 |
| 3 標準編 | 990円 | 192頁 |
| 4 中級編 | 990円 | 192頁 |
| 5 上級編 | 1,100円 | 216頁 |
| 6 最上級編 | 1,100円 | 192頁 |
6冊を1巻から順に全部やる人がいますが、その必要はありません。先ほどの一覧表で決めた「戻る地点」に対応する巻から入ります。中学範囲があやしいなら超基礎編、学校の授業についていけているなら標準編あたりが入口です。
1冊の終わらせ方
1周目は解いて、間違えた問題に印をつけるだけです。2周目は印のついた問題だけを解きます。3周目で、なぜその選択肢なのかを声に出して説明できたら終わりです。説明できない問題は、講義系か網羅系で該当項目を読み直します。
①中学範囲の総復習を解いたか(ここで落ちるなら高校用の本はまだ)/②いま持っている本を1冊終えたか/③志望校が文法問題を単独で出すか(出さないなら上位巻は不要)/④学校の副教材と役割がかぶっていないか。4つに答えてから買うと、失敗が減ります。


よくある質問
- 英文法の参考書は何冊必要ですか?
-
同時に進めるのは1冊です。中学範囲があやしいなら講義系1冊、そのあとに問題集1冊。網羅系は通読する本ではなく、つまずいた項目を引くために手元に置く本です。3冊を同時に買っても、たいてい1冊も終わりません。
- 高校の英文法は中学とどれくらい違いますか?
-
学習指導要領の付録として公表されている一覧表では、高校(英語コミュニケーションⅠ)の文法事項8項目のうち、中学の一覧に名前が出てこないのは関係副詞の用法だけです。残りは中学で扱った項目の用法を広げる形になっています。
- 仮定法は高校で習うのではないですか?
-
同じ一覧表では、仮定法のうち基本的なものは中学校の文法事項に入っています。現在完了進行形も中学の時制の項目に書かれています。高校の参考書が仮定法を扱うのは、中学で扱った範囲の先を広げるためです。
- 共通テストしか使わないのに文法問題集は必要ですか?
-
大学入試センターの問題作成方針では、文法等の知識や技能は「上記の力を問うことを通して引き続き評価する」とされています。単独の知識問題として測るとは書かれていません。抜けを見つける道具として使い、早めに長文へ移るのが現実的です。
- 学校で配られた文法書だけで足りますか?
-
足りることが多いです。学校の副教材と同じ役割の本を買っても、勉強量は増えません。買い足すなら役割が違うもの、つまり副教材が問題集なら講義系、副教材が講義系なら問題集です。
この記事で確認した公式ページ
文法事項と単語の数は文部科学省の資料、試験の範囲と方針は大学入試センターの資料、本の定価と仕様は出版社の公式ページで、2026年9月7日に確認しました。価格や仕様は改定されることがあるので、購入前にご確認ください。
大学入試センター 令和9年度試験(出題教科・科目の出題方法等/問題作成方針)
東進ブックス「大岩のいちばんはじめの英文法【超基礎文法編】」

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