併願優遇は、東京の私立高校が一般入試で使う制度です。東京都が公表した「令和8年度 都内私立高等学校入学者選抜実施要項」の別表を1校ずつ数えたところ、生徒を募集する全日制179校のうち142校に、併願優遇があることを示す*印が付いていました。見るべきは内申の基準だけではありません。都立の発表前に納めた入学金が戻らない学校が、実際にあります。

塾の先生から「併願優遇を取っておきましょう」と言われました。取れば私立の合格が決まる、という理解でいいのでしょうか。何をすればいいのかが分からないままです。

ご家庭がやることは、実はほとんどありません。申し込むのは中学校の先生で、時期は12月15日から3日間です。そのかわり、決めるのはそれより前です。判断材料は12月に入ってからでは間に合いません。
併願優遇は「推薦」ではなく、一般入試の制度です
いちばん多い取り違えがここです。推薦入試の一種だと思われていますが、違います。東京都の実施要項は、併願優遇を一般入試の項目の中に置いています。
「一般入試において各学校が定める成績等の基準を満たした受験者に対して優遇措置(併願優遇)を講ずる場合は、別表において*印を付した」
一方、推薦入試の応募資格はこう定められています。「その私立高等学校を第一志望とし、出身中学校長が推薦する者で、各私立高等学校の定める推薦基準に該当する者」。第一志望であることが条件なので、都立を第一志望にしたまま推薦を使うことは、原則としてできません。だから「公立が第一志望のまま私立を押さえる」仕組みは、一般入試の側に置かれているのです。
この違いは、日程にそのまま出ます。併願優遇で受ける入試は、2月にある一般入試そのものです。
| 区分 | 入学願書受付 | 選抜期日 |
|---|---|---|
| 私立・推薦入試 | 令和8年1月15日(木)以降開始 | 令和8年1月22日(木)以降 |
| 私立・一般入試 (併願優遇はこちら) | 令和8年1月25日(日)以降開始 | 令和8年2月10日(火)以降 |
| 都立・推薦 | — | 1月26日・27日/発表 2月2日 |
| 都立・一般(第一次・分割前期) | — | 2月21日/発表 3月2日 |
つまり、12月に話が決まっても、実際に受験するのは2か月後です。「もう決まった」と本人が緩む時期がここに生まれます。
都内179校のうち、142校が実施しています
「どの学校が併願優遇をやっているのか」は、各校に問い合わせる前に、東京都の資料で確かめられます。実施要項の別表に、*印が付いているからです。
当サイトで別表を1行ずつ数えた結果が次のとおりです(令和8年度版・全日制課程)。学校数の内訳は都の集計(男子校17・女子校39・男女校123)と一致しています。
| 生徒を募集する全日制の私立高校 | 179校(募集人員 35,825人) |
| *印(併願優遇)がある学校 | 142校(179校の79.3%) |
| *印が付いた入試区分の数 | 468区分 |
| 推薦入試の募集人員 | 165校 16,327人(全体の45.6%) |
| 一般入試の募集人員 | 179校 19,498人(全体の54.4%) |
8割の学校にあるので、「うちの志望校にあるかどうか」より「基準に届くかどうか」が実質的な分かれ目になります。逆に言えば、残りの37校には*印がありません。そこを第一志望に据えている場合、押さえの設計は最初から別に考える必要があります。
東京都の報道発表から別表をたどり、志望校の行に*印があるかを見ます。ここまでは無料で、電話も要りません。
*印があっても、基準の数字は都の資料には載っていません。各校が自分のサイトに出しています。後述のとおり、3科・5科・9科のどれで見るかも学校ごとに違います。
別表のいちばん右に「併願者の特例取扱い」という欄があります。ここを見落とすと、あとで数十万円の話になります。
なお都の資料には「各学校の実施内容については、今後変更になる可能性がある」と明記されています。上の142校という数も、令和8年度の時点のものです。翌年度分は例年10月に公表されます。
内申の基準は「3科・5科・9科」と欠席日数と加点でできている
基準の中身は学校ごとに違います。ただし形はほぼ共通で、次の3つでできています。実物を1校ぶん見るのがいちばん早いので、東京高等学校が公開している併願優遇制度の内容を引用します。
| 項目 | 東京高等学校の場合(一般入試 第1回) |
|---|---|
| 評定 | 第3学年2学期の評定で、①3科12以上(この場合、9科に評定1・2があると不可)②5科20以上 ③9科35以上 のいずれか |
| 欠席 | 3か年の欠席合計が20日以内 |
| 加点 | 英検・数学検定・漢字検定の準2級以上は各+2/生徒会長経験者+2/検定3級以上は各+1/出席優良者(欠席5日以内)+1/生徒会役員経験者+1/部活動部長経験者+1/委員会委員長経験者+1 |
| 加点の上限 | 複数の項目に当てはまっても、3科は+1、5科は+1、9科は+2まで |
| 出願条件 | 「他校を第一志望とし本校を併願で受験する者」/「在学中学校と本校との入試相談が必要」 |
ここで見落とされやすいのが加点の上限です。加点の項目は7つありますが、実際に足せるのは3科なら+1、9科でも+2まで。検定を3つ持っていても、部長をやっていても、それ以上は積み上がりません。

この上限があるので、2以上足りない子は、検定では届きません。「英検を取れば何とかなる」と考えて秋を使ってしまうご家庭がありますが、算数として合いません。足りない分は評定そのものを上げるしかない、という前提で秋の計画を立ててください。
同じ学校でも、第一志望にすると基準は3つ下がります
単願(第一志望)と併願優遇でどれくらい違うのかは、同じ学校の要項を並べると分かります。東京高等学校は推薦入試の基準も公開しているので、そのまま比べられます。
| 項目 | 推薦Ⅰ(第一志望) | 併願優遇(一般 第1回) |
|---|---|---|
| 3科 | 11以上 | 12以上 |
| 5科 | 18以上 | 20以上 |
| 9科 | 32以上 | 35以上 |
| 評定の下限 | 9科に1は不可、国数英に2は不可 | 3科で出す場合、9科に1・2があると不可 |
| 欠席(3か年合計) | 15日以内 | 20日以内 |
| 加点の上限 | 3科+1/5科+2/9科+3 | 3科+1/5科+1/9科+2 |
| 試験日 | 1月22日(金) | 2月の一般入試 |
9科で見ると32と35で、差は3です。「公立を受ける権利」の値段が、内申3つぶんだと考えると分かりやすいと思います。
逆になっている項目もあります。欠席は第一志望のほうが厳しく(15日以内)、加点の上限は第一志望のほうが大きい(9科+3)。「単願のほうが全部ゆるい」わけではありません。欠席が多い子は、単願にしたことでかえって外れることがあります。
なお同校は推薦の試験日を1月22日(金)としています。1月22日が金曜になるのは2027年なので、これは来年の入試の基準がすでに公開されているということです。夏のうちに志望校のサイトを見に行く価値はここにあります。
そして、基準に使われるのは3年生2学期の評定です。1・2学期の平均でも、1年生からの積み上げでもありません。内申点そのものの数え方と上げ方は、こちらにまとめています。


相談に行くのは、生徒でも保護者でもなく中学校の先生です
併願優遇の手続きは「入試相談」と呼ばれ、中学校の先生と高校の先生の間で行われます。受験生や保護者が直接申し込むものではありません。武蔵野高等学校が中学校あてに出した「入試相談及び受験についての確認事項(東京・神奈川共通)」に、進め方がそのまま書かれています。
- 入試相談日は12月15日(月)16日(火)17日(水)の3日間。来校は9時から16時で事前予約制、郵送は15日消印有効
- 評定は「第3学年学習記録一覧」に則り、第3学年の評定を記入する
- 3年次の欠席日数が確認できない場合、推薦入試A・併願優遇での相談自体を受けられない
- 加点は相談用紙のチェックだけでよく、合格証明書等は不要。ただし調査書に記載がなかった場合は加点が取り消されることがある
- 説明会への参加の有無にかかわらず、併願優遇を希望するなら必ず入試相談が必要
同じ資料に、もうひとつ大事な一文があります。学校説明会では受験生・保護者との個別相談を行っているが、「最終的な受験については入試相談で確定する旨をお伝えしています」。つまり説明会でもらった感触は、確定ではありません。「大丈夫そうですね」と言われて安心した状態と、入試相談を通った状態は別物です。
日付を逆算すると、動ける時間の短さが分かります。相談は12月15日。そこで使われるのは2学期の評定です。2学期の期末が終わってから相談日までに、点数を動かす余地はありません。勝負は11月までに終わっています。
併願優遇を使うと、受けられなくなる入試があります
「押さえておくだけ」と説明されがちですが、制約とセットです。同じ確認事項には、次のように書かれています。
- 併願優遇は公立高校との併願に限る。第二次募集、分割後期、他の私立高校の受験はできない
- 推薦入試Aは単願受験。第二次募集等も含め、他校との併願はできない
- 併願優遇の希望者が都立推薦入試に合格した場合は出願不要。ただし出願忘れと混同しないよう、その旨を電話連絡する(中学校・受験生・保護者のいずれでも可)
- 都立推薦の結果を確認してから出願する場合、出願期間(2月3日締切)に注意する
- 東京都・神奈川県の生徒は「推薦入試B(併願)」では出願できない(都県外の生徒向けの区分のため)
要点は、併願優遇を1校取ると、私立の受験校はそこで確定するということです。「もう1校、私立を試しに受けてみる」はできません。併願優遇を取る前に、私立をどこにするかを決め切っておく必要があります。
入学金が戻る学校と、戻らない学校があります
ここがいちばん見落とされます。都立の発表は3月2日ですが、私立の入学手続きの締切はそれより前のことがあります。東京都の実施要項は、この扱いをA〜Fの6区分に整理して、学校ごとに別表へ載せています。
| 区分 | 実施要項の原文 |
|---|---|
| A | 入学手続締切日が、都立高等学校合格発表日以降(都立高等学校受験者の申し出により入学手続を待つ学校を含む) |
| B | 都立高等学校合格発表日前に全額納付手続をさせるが、都立高等学校受験者の申し出により全額を返還する |
| C | 同前に全額納付手続をさせるが、申し出により一部を返還する |
| D | 同前に一部納付手続をさせるが、申し出により全額を返還する |
| E | 同前に一部納付手続をさせるが、申し出により一部を返還する |
| F | 同前に一部納付手続をさせ、返還しない |
*印の付いた468区分について、この欄を数えた結果が次のとおりです。
| 扱い | 区分数 | 意味 |
|---|---|---|
| A | 344 | 都立の発表を待ってもらえる。大半はここ |
| 空欄 | 72 | 要項に記載がない。21校が該当 |
| F | 9 | 納めた一部が戻らない |
| C | 5 | 全額納付し、戻るのは一部だけ |
Fに当たるのは東海大学付属高輪台、日本大学櫻丘、日本大学鶴ヶ丘、桜美林、日本大学第三の各入試区分、Cは国立音楽大学附属でした(令和8年度の別表の記載)。人気校が並んでいるとおり、「併願優遇が取れる学校」と「お金の面で安全な学校」は別の話です。
そして空欄の72区分については、実施要項自身がこう書いています。「実施要項中の『併願者の特例取扱い』が空欄の場合の取扱いについては、各学校にお問い合わせください」。この21校を志望校に入れているなら、聞かないと分かりません。説明会で聞くべきことが、ここで1つ確定します。
実際にいくら動くのかは、入学金と初年度費用の記事にまとめています。延納制度の有無も併せて確認してください。

神奈川・埼玉では、呼び方も確かめ方も違います
この記事は東京の制度を軸にしています。近県では枠組みが変わるので、そこだけ整理しておきます。
- 神奈川…東京とほぼ同じ枠組みです。武蔵野高等学校の確認事項も表題が「東京・神奈川共通」で、入試相談の日程も共通でした。ただし前述のとおり、東京都・神奈川県の生徒は都県外生向けの併願推薦区分では出願できません
- 埼玉…県が「埼玉県私立中学校・高等学校・中等教育学校入試要項」(総務部学事課)として令和8年度分を公表していますが、県のページに「確約」という言葉は出てきません。案内は「入試要項の詳細については、各校へお問い合わせください」となっています。よく聞く「確約」は制度の正式な名前ではなく、実際の運用を指す通称です
県をまたいで受験する予定があるなら、「うちの県のやり方」がそのまま通用しない前提で調べ直してください。呼び方が違うだけでなく、誰が相談に行くのかも変わります。
基準に「あと1」足りないと分かったとき
秋にいちばん多い状況がこれです。9科35が基準で、いまが34。加点の上限があるので、検定では埋まりません。残された手は、2学期の評定を1つ上げることだけになります。
このとき考え方を変えてほしいのは、「5教科を頑張る」ではなく「どの1教科なら4に届くか」を1つ選ぶということです。評定は教科ごとに付くので、上げるのは1教科で足ります。全体を底上げしようとすると、残り2か月では間に合いません。

選ぶ基準はひとつです。「3にとどまっている理由が、点数なのか提出物なのか」がはっきりしている教科を選んでください。理由が分からない教科を選ぶと、2か月を使って何も動きません。
点数のほうが原因で、どこでつまずいているのか自分では特定しにくいときは、診断だけ外に出す手もあります。【atama+ オンライン塾】
は診断テストからさかのぼって原因の単元を出す仕組みなので、無料体験で「2学期の期末までに埋める単元はどこか」だけ持ち帰る、という使い方ができます。塾に入るかどうかは、それを見てから決めれば十分です。
なお、確定した内申と併願優遇の見通しを聞ける場は三者面談です。何を聞けばいいかは別記事にまとめました。推薦との使い分けもあわせてご覧ください。


よくある質問
- 併願優遇を取れば、必ず合格しますか?
-
合格を約束する制度ではありません。実施要項の表現も「優遇措置」です。実際には当日の入試を受けたうえでの判定になり、基準点に届かないほど点が取れなかった場合や、出願書類に不備があった場合まで保証されるものではありません。「ほぼ決まる」と説明されることが多い仕組みですが、書面上は優遇にとどまります。
- 併願優遇で受かった学校を、あとから辞退できますか?
-
辞退できるのは、公立に合格した場合です。併願優遇はもともと「公立が不合格ならこの学校に入学する」という前提で成り立っています。公立に受かったのに私立も辞退する、という使い方は想定されていません。手続きは学校を通すので、まず中学校の先生に相談してください。
- 保護者が高校に直接電話して相談してもいいですか?
-
説明会での個別相談は保護者と受験生が受けられます。ただし入試相談は中学校と高校の間で行うものなので、そこは先生に依頼することになります。武蔵野高等学校の資料にも、個別相談でのアドバイスは最終的な確定ではない旨が書かれています。
- 欠席が多いと、併願優遇は使えませんか?
-
学校によります。東京高等学校は「3か年の欠席合計が20日以内」を条件にしていました。武蔵野高等学校は3年次の欠席日数が確認できない場合、相談自体を受けられないとしています。日数の基準も、何年ぶんを見るかも学校ごとに違うので、志望校の募集要項でその数字を確かめてください。
- 併願優遇のある学校の一覧はどこで見られますか?
-
東京都が毎年10月ごろに公表する「都内私立高等学校入学者選抜実施要項」の別表です。*印の付いている入試区分が該当します。塾や情報サイトの一覧より先に、こちらを見るほうが確実です。ただし内申の基準までは載っていないので、そこは各校のサイトで確認します。
まとめ
- 併願優遇は一般入試の制度。推薦は第一志望が条件なので、公立志望のまま使えるのはこちら
- 都内の全日制179校のうち142校にある。実施要項の別表の*印で確かめられる
- 基準は3年2学期の評定+欠席+加点。加点には上限があるので、2以上足りないと検定では届かない
- 申し込むのは中学校の先生で、入試相談は12月15日から3日間。使う数字は2学期の評定なので、勝負は11月まで
- 取ると私立の受験校は1校で確定する。他の私立や二次募集は受けられない
- 入学金が戻らない学校がある。別表の「併願者の特例取扱い」がFなら返還なし、空欄なら学校に聞く
制度の全体像は都の資料で無料で確かめられます。各校に問い合わせるのは、そこで分からなかったことだけで足ります。まず別表で*印と入学金の欄を見て、次に志望校のサイトで基準の数字を見る。この順番なら、9月のうちに判断材料がそろいます。
出典:東京都生活文化局「令和8年度 都内私立高等学校入学者選抜実施要項」(令和7年10月8日公表・令和7年9月26日現在)および同別表/東京高等学校「併願優遇制度」/武蔵野高等学校「入試相談及び受験についての確認事項(東京・神奈川共通)」/埼玉県総務部学事課「埼玉県私立中学校・高等学校・中等教育学校入試要項」(いずれも2026年8月13日確認)。集計は当サイトによるものです。

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