中高一貫校生の塾選びは「学校の進度に追いつけるか」の一点で決まります。使っている教材が公立と違うからです。この記事では体系数学とNEW TREASUREの対応教材が実際どうなっているかを出版社の情報で確認したうえで、塾に聞くべき3つの質問をまとめます。

中高一貫校に通っていますが、数学と英語が厳しくなってきました。近所の塾に相談したら「うちでも見られます」と言われましたが、本当に大丈夫でしょうか。

「見られます」は答えになっていません。聞くべきは「今どの教材の何巻をやっているか把握できますか」です。数学と英語で、塾側の打つ手がまったく違うので、そこまで踏み込んで確認してください。
「うちでも見られます」では足りない理由
公立中学校向けの塾は「学校の教科書=検定教科書」を前提に教材とカリキュラムが組まれています。中高一貫校の多くはそこが違います。
たとえば数研出版の体系数学は、公式に「中高6ヵ年の内容を学習指導要領にとらわれない体系的な配列で再編成した教材」と説明されています。学年ではなく分野で並んでいるので、市販の中学参考書と目次が対応しません。
この構造を知らない塾に入れると、「学校で今やっている単元」を探すところから毎回始まります。その時間が月謝に含まれていると考えてください。
ただし「一貫校専門でない塾は対応できない」という意味ではありません。大手の公式ページを当たると、対応そのものははっきり書かれています。東京個別指導学院は「プログレス・トレジャー・体系数学など、私立校で採用する特殊なテキストにも対応しております」と明記し、私立中学生(中等教育学校含む)2,842名の在籍を公開しています(2024年8月時点)。個太郎塾(市進)は中高一貫校生コースを英語・数学・国語・理科・社会の5科目で置き、個別指導塾WAMも「各学校の進度に合わせてカリキュラムを作成します」と回答しています(いずれも2026年8月13日確認)。
問題は、公式に書いてあるのは「対応する」であって「今どの巻をやっているか追える」ではないことです。だから聞き方が効きます。教材名と巻数まで踏み込めば、対応の中身はその場で分かります。
【出版社の情報】数学は市販で戻れる。英語は買えない
ここが最も誤解されている部分です。「独自教材だから対応教材が無い」は正確ではありません。数学と英語で状況がまったく違います。
| 教材 | 対応教材の入手 |
|---|---|
| 体系数学 (数研出版) | 市販されている。準拠のテキスト・問題集・チャート式参考書・パーフェクトガイドの4種類が書店で買えます。中学校教科書との対応表も無料で公開されており、誰でも参照できます |
| NEW TREASURE (Z会) | 準拠教材はあるが、個人も塾も買えません。Z会が「購入は中学校・高等学校・中等教育学校など、一条校に限定しており、個人および塾・予備校への販売は行っていない」と明記しています |
出典:数研出版「体系数学」/Z会「NEW TREASURE」(いずれも公式サイト)

つまり打つ手が逆になります。数学は「準拠教材を家庭で買って戻る」が成立しますが、英語は塾側も教材を入手できないので、学校のテキストそのものを持ち込んで見てもらう形しかありません。ここを確認せずに入ると、英語だけ噛み合わないままになります。
もうひとつ、体系数学は対象学年が表紙に印刷されています。1巻が中学1・2年生用、2巻が中学2・3年生用、3巻が高校1・2年生用、4巻が高校2年生用、5巻が高校3年生用です。お子さんが今どの巻を使っているかを見れば、学校の進度がどれくらい先行しているかが一目で分かります。
ただし市販の準拠参考書がそろっているのは1巻・2巻(中学範囲)までです。高校範囲に入ってからは家庭で補いにくくなります。さらに文科省は、中高一貫教育校が高校の内容を中学へ移した場合「高等学校で再度指導しないことが可能です」としています(中高一貫教育Q&A・2026年8月13日確認)。前倒しした範囲に二度目が用意されていないことがあるので、動くなら中学のうちが有利です。


【文科省データ】私立中学生の約半数は、塾に通っていない
塾を検討するとき、多くの保護者が最初に気にするのが「よそはどうしているのか」です。ここは推測ではなく統計があります。文部科学省の「令和5年度 子供の学習費調査」を、公立中学校と私立中学校で並べるとこうなります。
| 年間の学習塾費 | 公立中学校 | 私立中学校 |
|---|---|---|
| 0円だった家庭 | 34.0% | 48.8% |
| 40万円以上だった家庭 | 23.3% | 15.7% |
| 支出した家庭だけの平均額 | 約34万9千円 | 約32万8千円 |
読み取れることは2つです。ひとつは私立中学生の約半数は塾に通っていないこと。もうひとつは、通わせている家庭が払っている額は公立とほとんど変わらないことです。年32万8千円は月あたり約2万7千円にあたります。
公立と決定的に違うのは「学年による動き方」
同じ調査の学年別の平均額(こちらは0円の家庭も含めた全体の平均で、上の表とは集計が違います)を見ると、私立中学校の特徴がはっきり出ます。
| 学年 | 公立中学校 | 私立中学校 |
|---|---|---|
| 中1 | 133,647円 | 151,796円 |
| 中2 | 213,759円 | 151,425円 |
| 中3 | 341,220円 | 202,127円 |
| 中1からの伸び | 2.6倍 | 1.3倍 |
公立は中1から中3で2.6倍に膨らみます。高校受験という締め切りがあるからです。対して私立は1.3倍にしかなりません。調査の本文も「学年とともに学習塾費が多くなる」傾向から私立中学校を明確に除外しています。

この2つの数字は、記事の前半で書いたことの裏付けになっています。私立中学生の家庭は、学年が上がっても行動が変わりません。高校受験が無いので、動くきっかけが外から来ないからです。逆に中1の時点では私立のほうが高い。早く動く家庭は入学直後から動いていて、動かない家庭は3年間そのまま、という形に分かれます。
だから「クラスの半分は塾に行っていないから、うちもまだ大丈夫」は判断材料になりません。むしろ逆で、通塾が当たり前ではないぶん差がついていても学校の中では見えにくいのが中高一貫校です。判断は周囲ではなく、お子さんの答案と教材の巻数で決めてください。

塾に聞く3つの質問
体験や面談で、この3つだけ聞いてください。答え方で対応力がほぼ分かります。
教材名と巻数が会話に出てくるかを見ます。「学校の進度に合わせます」だけで教材名が出てこない場合は、実物を見たことがない可能性があります。体系数学なら巻数、英語ならステージ番号まで聞いてください。
前述のとおり塾側は準拠教材を買えません。「学校のテキストを持ってきてもらう」「学校の進度に合わせて自作する」など、具体的な運用が答えられるかを見ます。ここが曖昧な塾は、英語は実質見られません。
中高一貫校ではこの2つが別物です。中1〜高1は学校の定期テストで落ちないことが最優先、高2からは大学受験に切り替わります。「どちらもできます」と言う塾より、どちらかを明確に答える塾のほうが結果が出ます。
3つとも具体的に答えられる塾は多くありません。中高一貫指導ノウハウを活用【個別指導塾WAYS】
のように中高一貫校生だけを見ている塾なら、教材名を出して話が通じるかを最初の面談で確かめられます。まずは比較の1校目として基準にしてください。
学年で変わる、塾に求めるもの
| 学年 | 塾に求めるもの |
|---|---|
| 中1〜中2 | 学校の進度についていく補習。ここで落ちると戻す量が増えます。市販の準拠教材が使える時期なので、費用を抑えやすい |
| 中3〜高1 | 数学の抽象度が上がる時期。高校範囲に入るため市販教材で補いにくくなります。分からない箇所を人に聞ける形が要ります |
| 高2〜高3 | 大学受験の対策。学校の定期テストとは別の準備になります。補習型の塾から切り替える判断が要る時期です |
いちばん多い失敗は、高2まで補習型の塾に通い続けて、受験対策の開始が遅れることです。「そのまま続ける」を選ぶ前に、その塾が受験まで見られるのかを一度確認してください。

そもそも塾に入れるべきかどうかから迷っている場合は、学年ではなく状態で判断してください。

よくある質問
近所の公立向けの塾ではだめですか
個別指導なら成立することがあります。集団は公立のカリキュラムで進むので合いません。個別を選ぶ場合も、上の3つの質問には必ず答えてもらってください。「学校の教材を持ってきてください」と言える塾なら現実的です。
数学だけ、英語だけでも見てもらえますか
個別指導なら1教科から可能です。中高一貫校で崩れるのは数学が先、次に英語という順番が多いので、まず数学だけで始める判断は理にかなっています。全教科を同時に頼むと費用が跳ね上がります。
学校の補習や指名補習があれば塾は不要ですか
学校の補習で戻れているなら不要です。ただし補習は「今の単元」を扱うことが多く、崩れた元の単元まで戻らないことがあります。補習に出ているのに点が戻らない場合は、戻る場所がずれていると考えてください。
高校受験がないぶん、余裕があるのでは
逆です。高校受験という「全員が強制的に戻される機会」が無いので、崩れたまま学年が上がります。公立生は受験勉強で中1からやり直しますが、中高一貫生にはその機会がありません。気づいた時点が動くタイミングです。
まとめ
- 塾選びの基準は「学校の進度に追いつけるか」の一点
- 体系数学は準拠教材が市販されている。対応表も無料公開。家庭で戻れる
- NEW TREASUREの準拠教材は一条校限定で、個人も塾も買えない。学校のテキストを持ち込む前提になる
- 聞くのは「何巻をやっているか」「英語の教材はどう用意するか」「定期テストか大学受験か」の3つ
- 市販の準拠参考書は中学範囲まで。動くなら中学のうちが有利
- 私立中学生の48.8%は塾に通っていない。ただし学年が上がっても行動が変わらないだけで、安全の証拠ではない
まずはお子さんの教材の表紙を見て、何巻かを確認するところから始めてください。それだけで、塾との会話の中身が変わります。
教材の入手可否は数研出版とZ会の公式サイト、塾の対応状況は各社の公式ページで2026年8月13日に確認しました。東京個別指導学院の私立中学生2,842名は同社が2024年8月時点として公開している数字で、現在の在籍数ではありません。当サイトの運営者は掲載した塾の関係者ではありません。対応科目や教材の扱いは教室ごとに差があるため、最終的には通う予定の教室にご確認ください。


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