塾代を自治体が助成する制度は実在します。大阪市は市内在住のすべての小学5年生〜中学3年生を対象に、月額1万円を上限に助成、東京都は学習塾等の受講料を上限30万円まで無利子で貸し付け、高校・大学等に入学すれば返済免除です。
ただしこうした制度がある自治体は限られています。この記事では確認できた制度の中身と、自分の地域にあるかを調べる手順、そして制度が使えなかったときの現実的な選択肢をまとめます。

塾に行かせたい気持ちはあるのですが、年間30万円以上は正直きつくて……。諦めるしかないのでしょうか。

諦める前に、お住まいの自治体に制度が無いかだけ確認してください。あるところにはあります。そして制度は、待っていても案内されません。自分で申請しないと1円も出ないタイプがほとんどです。
確認できた2つの制度(大阪市・東京都)
まず、公式サイトで内容を確認できたものを2つ挙げます。この2つは仕組みがまったく違います。「もらえる」のか「借りる」のかが違うので、そこから見てください。
| 大阪市 習い事・塾代助成事業 | 東京都 受験生チャレンジ支援貸付事業 | |
|---|---|---|
| 種類 | 助成(返さなくてよい) | 貸付(条件を満たせば返済免除) |
| 対象 | 大阪市内在住のすべての小5〜中3を養育する方 | 中3・高3(またはこれに準じる方)で20歳未満 |
| 金額 | 月額1万円が上限 | 学習塾等受講料 上限30万円 受験料は中3等 上限2万7400円/高3等 上限12万円(東京都福祉局) |
| 使える先 | 学習塾・家庭教師・文化スポーツ教室など。オンライン学習塾も対象 | 対象となる学習塾等の費用、高校・大学等の受験料 |
| 返すのか | 返しません | 無利子。高校・大学等に入学すれば返済免除 |
| 使い方 | 令和8年4月利用分からデジタルクーポン(スマホ操作が難しい場合はカードクーポンも可) | 貸付 |
出典:大阪市 習い事・塾代助成事業/東京都 受験生チャレンジ支援貸付事業(2026年10月11日に公式サイトで確認)。制度は年度で変わります。必ず最新の公式案内をご確認ください。
大阪市は対象が「すべての小5〜中3」です
大阪市の制度で見落とされがちなのが、対象が「すべての小5〜中3」だという点です。公式の案内には「大阪市内在住のすべての小学5年生から中学3年生を養育する方」と書かれています。条件の詳しいところは年度で変わるので、必ず最新の案内でご確認ください。
月1万円は、週1回の個別指導なら、ほぼ月謝がまかなえる額です。当サイトで確認した公開料金だと、オンライン個別で週1回・1科目が月7,800円(そら塾の中1・中2。5・6・9・10・11・2月は10,400円)、対面の個別指導で月11,700円でした。「塾は無理」と思っていたご家庭でも、1教科なら現実的になります。

東京都は「返済免除」の条件を必ず確認する
東京都のほうは貸付です。ここで身構える方が多いのですが、高校・大学等に入学した場合は返済が免除されると明記されています。しかも無利子です。

つまり進学すれば実質「もらえる」制度です。ただし免除の手続きは自動ではありません。入学後に自分で申請するもの(入学年次の5月末まで。期日は区市町村で異なります)なので、借りたことを家族で共有しておいてください。ここを忘れて返済が始まってしまうのがいちばんもったいない。
大阪市の月1万円(年12万円)は、中3の学習塾費の平均の35.2%|学年別に並べた
「月1万円の助成は、塾代のどれくらいに当たるのか」を、文部科学省の「令和5年度 子供の学習費調査」(令和8年1月16日差替版)の、公立の学習塾費の学年別の平均と並べて計算しました。大阪市の対象は小5〜中3です。月1万円を12か月使い切った場合の上限を年12万円として、割合を出しています。
| 学年(公立) | 学習塾費の年平均 | 月あたり(計算) | 年12万円は平均の何%(計算) |
|---|---|---|---|
| 小学5年 | 106,550円 | 8,879円 | 112.6% |
| 小学6年 | 145,161円 | 12,097円 | 82.7% |
| 中学1年 | 133,647円 | 11,137円 | 89.8% |
| 中学2年 | 213,759円 | 17,813円 | 56.1% |
| 中学3年 | 341,220円 | 28,435円 | 35.2% |

計算と、数字の読み方
- 月あたり:年平均 ÷ 12。中3は 341,220 ÷ 12 = 28,435円。助成との差は 28,435 − 10,000 = 18,435円
- 割合:120,000 ÷ 年平均。中3は 120,000 ÷ 341,220 = 0.352(35.2%)、小5は 120,000 ÷ 106,550 = 1.126(112.6%)
- 東京都の受験生チャレンジ支援貸付(学習塾等受講料 上限30万円)は、中3の年平均 341,220円の 300,000 ÷ 341,220 = 87.9%。同じ調査で、学習塾費が1円以上の公立中学生だけの平均は年34万9千円なので、300,000 ÷ 349,000 = 86.0%
- これらの平均は、学習塾費が0円の家庭も含む全世帯の平均(公立中学生の34.0%が0円)。塾に通っている家庭の実額とは違う
読み取れるのは、助成の月1万円は、小学生や中1の平均の塾代なら大部分をまかなえる一方、中3の平均では3分の1ほどだということです。学年が上がるほど、助成だけでは足りない分が増えます。中3で平均並みに通うなら、1か月に約18,400円(28,435 − 10,000)は家計から出ていく計算になります。
東京都の貸付は、受験生が使える上限30万円で、中3の年平均の約9割に当たります。ただしこちらは貸付で、高校・大学等に入学すれば返済免除という違いは、前の表のとおりです。
- 制度の対象事業者に、通いたい塾が入っていない場合。先に公式の一覧で確かめる(年度ごとに変わる)
- 年の途中から使う場合。12か月分の上限は使えず、割合はこの表より低くなる
- 上の平均を、自分の地域の塾代として使う場合。全国の公立の平均で、地域の料金とは違う
出典:文部科学省「令和5年度 子供の学習費調査 結果の概要」(PDF・表6 学年別補助学習費、表8-2 学習塾費の金額分布)(2026年10月15日確認)
自分の地域に制度があるかを調べる手順

正直にお伝えすると、この2つのような制度がある自治体は多くありません。「塾代助成」で検索すると全国の情報が混ざって出てくるので、自分の地域の話かどうかを見分ける必要があります。
都道府県名ではなく市区町村名で調べてください。この種の制度は市区町村が単独でやっていることが多いためです。公式サイト(`lg.jp` で終わるもの)だけを見てください。まとめ記事は他の地域の情報が混ざります。
塾代の助成が無くても、自治体やNPOが無料の学習支援を行っていることがあります。名称は「学習支援事業」「無料学習教室」などさまざまです。担当は教育委員会ではなく福祉の部署のことが多いので、そちらも見てください。
意外に確実なのがこれです。先生は就学援助や地域の支援制度の案内を持っています。言いにくいと感じる方が多いのですが、制度の有無を尋ねるだけなので、家庭の事情を細かく話す必要はありません。「塾代の補助のような制度はありますか」で十分です。
- 年度で変わります……対象学年も金額も改正されます。去年の情報で判断しないでください
- 申請しないと出ません……自動で適用される制度はほぼありません。締切もあります
- 使える塾が決まっていることがあります……登録されている事業者でしか使えない制度が多いので、塾を決める前に対象事業者の一覧を見てください
全国どこでも使える「塾代」の制度は、ありません
ここははっきり書いておきます。塾代そのものを対象にした、全国共通の制度は存在しません。大阪市や東京都のような制度は、その自治体が独自にやっているものです。探しても見つからない地域のほうが多いのが実情です。
ただし「教育費」全体で見ると、全国共通の制度はあります。混同されやすいので、対象範囲を整理しておきます。
| 制度 | どこにあるか | 塾代に使えるか |
|---|---|---|
| 自治体の塾代助成・補助 | 一部の市区町村のみ | 使える(これが本命) |
| 生活福祉資金の教育支援資金 | 全国の社会福祉協議会 | 使えません。高校・大学等への就学の費用が対象 |
| 就学援助 | 全国の市区町村 | 使えません。学用品費・給食費などが対象 |
| 高等学校等就学支援金 | 全国 | 使えません。高校の授業料が対象 |

いろいろ制度の名前は聞くのに、塾代には使えないということですか……

そうなんです。ここを知らずに何日も調べて、結局見つからないご家庭を見てきました。塾代は市区町村の制度を探すしかありません。その代わり受験料や入学金のほうは、全国に制度があります。困りごとが「塾代」なのか「受験のお金」なのかで、行き先がまったく違います。
受験や入学のお金で困っているなら、窓口は社会福祉協議会
生活福祉資金の教育支援資金は、低所得世帯を対象に、高等学校・大学・高等専門学校などへの就学に必要な費用を貸し付ける制度です。相談・申込の窓口は、お住まいの市区町村の社会福祉協議会になります。
ただし対象の範囲も金額も、実施している都道府県の社会福祉協議会によって案内が異なります。この記事で金額を書くと外れる可能性があるので、必ずお住まいの社会福祉協議会の案内でご確認ください。「教育支援資金について聞きたい」と電話すれば、対象になるかどうかまで教えてもらえます。
受験そのものにかかるお金の全体像は、別記事にまとめてあります。私立を併願すると入学金の問題が出てくるので、そこも含めて先に見ておいてください。

制度が無い・対象外だったときの現実的な選択肢
ここからが本題です。多くのご家庭は、制度が無い地域にお住まいです。その場合にどうするかを、塾長として正直に書きます。
まず「全教科」をやめる
費用が跳ね上がるのは、たいてい「5教科お願いします」と言ったときです。ですが積み上げ式の数学と英語だけは塾で、暗記でどうにかなる理科・社会は家庭でという分け方でも十分に成立します。むしろ手を広げすぎて家庭学習が回らなくなるほうが危険です。
週1回・1科目に絞れば、公開されている料金では月8千円〜1万2千円ほどです。「塾は月3万円」という思い込みが、検討そのものを止めていることがあります。
通信教育との差額を、正確に見る
「塾が無理なら通信教育」と考えがちですが、実額を並べると差はそれほど大きくありません。当サイトで各社の公式サイトを確認したところ、通信教育どうしでも月1,815円から9,980円まで5倍以上の開きがあり、いちばん高い通信教育は、いちばん安いオンライン塾より高いという結果でした。

分かれ目は金額ではなく「その場で聞けるかどうか」です。質問できずに止まってしまう子は、通信教育に替えても同じところで止まります。費用を下げる目的で形態を変えると、結局やり直しになることがあります。
お金をかけずにできることは、実は多い
文部科学省の調査では、公立中学生の34.0%は学習塾費が0円です。つまり公立中学生の3人に1人は、1年間の塾代が0円です(文部科学省 令和5年度子供の学習費調査・中学1〜3年の合計の値)。塾に行かないと受からない、ということはありません。


塾長の立場で言うのも変ですが、お金をかけたかどうかより、家で何をやったかのほうが結果に効きます。塾にいる時間は週2〜3時間、家庭学習は月に30〜40時間。多いほうを動かせれば、費用をかけずに順位は上がります。
助成の対象になるかどうかとは別に、そもそも月額を下げるという手もあります。オンラインは送迎も要りません。

よくある質問
- 所得制限がある制度かどうかは、どこで分かりますか?
-
自治体の公式ページの「対象者」の欄に必ず書かれています。大阪市の習い事・塾代助成事業は「大阪市内在住のすべての小学5年生から中学3年生を養育する方」と書かれており、東京都の受験生チャレンジ支援貸付事業は対象者の条件が別に定められています。まとめサイトの情報ではなく、必ず自治体の公式ページで確認してください。年度によっても変わります。
- どの塾でも使えますか?
-
登録されている事業者に限られることが多いです。大阪市の制度では学習塾・家庭教師・文化スポーツ教室などが対象で、オンライン学習塾も含まれると案内されています。塾を決めてから「使えなかった」となると動きにくいので、対象事業者の一覧を先に見てください。塾側に「この制度は使えますか」と直接聞くのがいちばん早いです。
- 貸付を借りて、進学できなかったらどうなりますか?
-
東京都の制度は「高校・大学等に入学した場合、返済が免除されます」と案内されています。入学しなかった場合も、償還免除の申立てをすれば、審査で返済が免除される可能性があります。免除されなかった場合は返済になりますが、無利子です(返済が遅れると延滞利子 年3.0%。受験生チャレンジ支援貸付事業 手続きの流れ)。条件や手続きは制度ごとに違うので、借りる前に必ず窓口で確認してください。この記事の内容だけで判断しないでください。
- 就学援助を受けています。塾代も出ますか?
-
就学援助は学用品費や給食費などが対象で、塾代は基本的に含まれません。ただし就学援助を受けている世帯を対象にした学習支援を、別に用意している自治体があります。就学援助の窓口で「学習支援の制度はありますか」と一緒に聞いてみてください。同じ部署が担当していることが多いです。

まとめ:市区町村名で公式サイトを検索し申請する
- 「(市区町村名) 塾代 助成」で検索する。都道府県名ではなく市区町村名で
- 公式サイトだけ見る。まとめ記事は他の地域の情報が混ざる
- 申請しないと出ない。締切もある。自動では適用されない
- 使える塾が決まっていることがある。塾を決める前に対象事業者を確認する
- 制度が無くても諦めない。公立中学生の34.0%は1年間の塾代が0円(文部科学省 令和5年度調査)
お金の話は相談しにくいものですが、制度は使われるために作られています。遠慮する理由はありません。まずは市区町村の名前で一度検索してみてください。5分で分かります。
この記事の更新・訂正
- 受験生チャレンジ支援貸付で「入学しなかったら返済が必要」としていたのを、償還免除の申立てで審査により免除される可能性がある、に直しました
全記事の履歴は「訂正・更新の履歴」、調べ方と書き方は「記事の作り方」にまとめています。

