不登校でも高校受験はできます。東京都のチャレンジスクールのように「学力検査や中学校からの調査書によらない」入試が実際にありますし、令和6年8月の学校教育法施行規則の改正で、欠席中に学校外で行った学習の成果を成績評価で考慮できることが法令上はっきりしました。つまり出席日数だけでなく内申点にも道があります。この記事では文部科学省の資料をもとに要件を正確に整理し、受験までに何をどの順番でやるかをまとめます。

学校に行けない日が続いています。勉強が止まっているのが不安で、このままだと取り返しがつかないのではと思ってしまいます。何から手をつければいいのでしょうか。

最初にやることは教材選びではありません。学校に「出席扱いの相談」をすることです。制度があることを知らずに進めると、同じ勉強をしていても記録に残りません。順番を間違えないでください。
【制度】自宅や施設での学習は、出席扱いにできる
文部科学省は、不登校の児童生徒が学校外の施設で相談・指導を受けている場合や、自宅でICT等を活用した学習活動を行っている場合に、一定の要件を満たせば学校が出席扱いや成績評価を行えるとしています。ルートは2つあります。
| ルート | 主な要件 |
|---|---|
| ①学校外の施設で 相談・指導を受ける | ・保護者と学校の間に十分な連携・協力体制があること ・施設は教育委員会等が設置する教育支援センター等の公的機関が原則。公的機関に通えない場合などで適切と判断されれば民間施設も考慮されてよい ・その施設に通所または入所して相談・指導を受けることが前提 |
| ②自宅でICT等を 活用して学習する | ・保護者と学校の間に十分な連携・協力関係があること ・訪問等による対面指導が定期的かつ継続的に行われることが前提 ・学習活動が、本人の理解の程度を踏まえた計画的な学習プログラムであること ・校長が対面指導や学習活動の状況等を十分に把握すること ・基本的に、学校外の公的機関や民間施設で相談・指導を受けられない場合に行う学習活動であること |
出典:文部科学省「不登校児童生徒の出席扱い・成績評価について【学校・教育委員会等向け】」(令和8年4月版)
見落とされやすい3つの条件
「教材を契約すれば出席扱いになる」と読める説明を見かけますが、制度上そうではありません。とくに次の3つが抜けていると要件を満たしません。
- 自宅ICTは「施設に通えない場合」の選択肢…まず教育支援センター等の公的機関、次に民間施設。自宅学習はそれらで相談・指導を受けられない場合の位置づけです
- 学校からの対面指導が前提…訪問等による対面指導が定期的・継続的に行われることが要件です。教材だけで完結する形は想定されていません
- 計画的な学習プログラムであること…本人の理解の程度を踏まえた計画が要ります。好きな単元をやるだけでは要件に足りません

判断するのは校長先生です。だから先に学校へ相談するほうが早いです。教材を決めてから「これで認めてください」と持っていくより、「どういう形なら認められますか」と聞くほうが話が進みます。自治体でガイドラインを持っていることもあります。
出席扱いになると、記録はこう変わる
認められた日数は出席日数に計上され、欠席日数からは除かれます。指導要録の備考欄には、出席扱いとした日数と施設名などが記入されます。文科省の資料には次のような記載例が示されています。
| 授業日数 | 出席しなければ ならない日数 | 欠席日数 | 出席日数 |
|---|---|---|---|
| 210 | 205 | 40 | 165 |
備考欄の例:出席扱いとした日数 30日/うち、市の教育支援センター20日、自宅において学習10日
高等学校でも同様の取扱いとされています。
成績評価は出席扱いとは別の制度です。学習の計画・内容が在籍校の教育課程に照らして適切であること、学校が保護者等を通じて学習状況を定期的・継続的に把握していること、学校が訪問等で本人と直接関わりを継続していることなどが要件になります。
なお文科省の資料には、「学習活動を出席扱い・成績評価することにより、不登校が必要な程度を超えて長期にわたることを助長しないよう留意する必要がある」とも書かれています。制度の目的は社会的自立の支援であって、出席日数を作ることではありません。
令和6年8月から、学校外の学習は「成績」にも反映できます
ここは制度が新しくなったところで、まだ知られていません。出席扱いと、成績評価は別の話です。
文部科学省は学校教育法施行規則を改正し、義務教育段階の学校が成績評価を行うにあたって、文部科学大臣が定める要件の下で「不登校児童生徒が欠席中に行った学習の成果を考慮することができる」ことを法令上に規定しました(不登校児童生徒が欠席中に行った学習の成果の成績評価に係る法令改正について・令和6年8月9日・文部科学省初等中等教育局児童生徒課)。
| 何が変わるか | 高校受験への効き方 | |
|---|---|---|
| 出席扱い | 指導要録の出席日数に反映される | 調査書の欠席日数が減る |
| 成績評価への反映 | 評定(通知表の数字)に反映されうる | 内申点に繋がる |
後者のほうが入試には直接効きます。欠席日数の扱いは都道府県で違いますが、内申点はどの地域でも合否に使われるからです。
文部科学大臣が定める3つの要件
- 学習の計画・内容が、在学する学校の教育課程に照らし適切と認められること
- 学校と保護者・教育支援センター・民間団体等との間に十分な連携協力関係が保たれ、学校が学習活動の状況等を保護者等を通じて定期的かつ継続的に把握していること
- 学校が訪問による対面指導等により、学習活動の状況等を定期的かつ継続的に把握し、学校との適切な関わりを維持するよう留意していること

3つとも「学校とつながっていること」が前提です。教材をやっているだけでは満たせません。逆に言えば、学校との連絡さえ切らさなければ届きます。担任と月1回でも状況を共有する形を作ってください。
制度はあるのに、使えているのは1割ほどです
同じ資料に実数が載っています。小中学校の不登校児童生徒は299,048人で過去最多。そのうち出席扱いになっているのは次の人数です。
| 小中学校の不登校児童生徒 | 299,048人(過去最多) |
| 学校外の機関等で相談・指導を受け、出席扱いとした数 | 32,623人 |
| 自宅でのICT等を活用した学習を出席扱いとした数 | 10,409人 |
| 学校内外で相談・指導等を受けていない児童生徒 | 114,217人(38%) |
出典:文部科学省 令和6年8月9日 資料(両者に重複はありうると注記されています)
制度が無いのではなく、届いていないのです。学校から積極的に案内されることは多くありません。こちらから「出席扱いの制度を使いたい」と言わないと、話が始まらないと思っておいてください。
高校受験はできます。調査書を使わない入試もあります

欠席が多いと、そもそも受けられる高校が無いのではと思っています……

そんなことはありません。調査書を使わない入試が実際にあります。知らないまま「もう無理」と決めてしまうのが、いちばんもったいないです。
東京都の例で見ます。都立のチャレンジスクールは「主に小・中学校での不登校の経験や高校での中途退学の経験により、これまで能力や適性を十分に生かしきれなかった生徒」を対象にした学校で、東京都教育委員会は「学力検査や中学校からの調査書によらず、学習や学校生活への意欲を重視した入試」と明記しています(だから都立高 チャレンジスクール)。昼夜間の定時制・総合学科・単位制で、午前・午後・夜間の三部から選んで入学できます。都内に7校あります。
ここで大事なのは、こうした受け入れ方をする学校が「全国どこにでも同じ名前である」わけではないことです。名称も制度も都道府県によって違います。お住まいの都道府県の教育委員会のサイトで、「不登校」「定時制」「単位制」「総合学科」あたりを手がかりに探してください。中学校の先生に聞くのがいちばん早いこともあります。
そして全日制を目指す場合も、道は閉じていません。出席扱いで欠席日数を減らし、学校外の学習を成績に反映してもらう——この2つを積み上げるほど、選べる範囲は広がります。
勉強に追いつく順番
ここからは学習面の話です。止まっている期間が長いほど、順番を間違えると余計に苦しくなります。次の順で進めてください。
いちばん多い失敗です。止まった時点まで戻ってから前に進みます。今の教科書を開いても分からないので、続きません。「どこまでは分かるか」を先に確かめてください。
この2教科は前の内容の上に次が積み上がるので、放置した期間がそのまま遅れになります。理科・社会は範囲が独立しているぶん、あとから短期間で戻せます。全教科を同時に追いかけないでください。
「1日2時間」は、体調に波がある時期には守れません。「1日1単元」なら、調子のいい日に進めて悪い日は止められます。終わりが見えるほうが再開しやすいです。
1の「どこまで分かるか」は、家庭で判断するのがいちばん難しいところです。【atama+ オンライン塾】
のようにAIが単元の穴を出す形式なら、14日間の無料体験のあいだに「どこから戻るか」だけでも分かります。学校に相談するときも、単元名が言えると話が具体的になります。
数学は戻る場所の見つけ方に手順があります。学年ではなく単元でたどると、思っているより浅いところで止まっていることが多いです。

人と話すのがつらい時期でも、1対1なら他の生徒がいないぶん負担が小さいことがあります。オンライン東大家庭教師友の会
のような形は無料体験があるので、画面越しで話せるかどうかだけを見るのが現実的です。ただしこれは学習面の補助であって、出席扱いの要件である「学校からの対面指導」の代わりにはなりません。そこは分けて考えてください。
「手遅れ」ではない理由
いちばん多い不安が「もう間に合わないのでは」です。学習面に限って言えば、次の2つが根拠になります。
| 不安 | 実際 |
|---|---|
| 欠席日数が多いと進学できない | 出席扱いの制度がある。認められた日数は出席日数に計上され、欠席日数から除かれます |
| 成績がつかない | 欠席中の学習も成績評価の対象になり得ます。要件は学校との連携と、学習内容が教育課程に照らして適切であること |
| 1年分の遅れは戻せない | 数学・英語は積み上げなので時間がかかりますが、戻る場所が特定できていれば作業量は見積もれます。理科・社会は独立しているので短期で戻せます |
ただし、体調や気持ちの回復が先です。ここは学習の話ではないので、この記事では扱いません。学校のスクールカウンセラーや、自治体の教育支援センターに相談できます。
残りの期間から逆算して何を捨てるかを決める考え方は、不登校に限らず共通です。時期別の優先順位はこちらにまとめています。

よくある質問
まず誰に相談すればいいですか
担任と、学校のスクールカウンセラーです。出席扱いを判断するのは校長なので、学校を通さずに進めても記録には反映されません。自治体の教育支援センターも窓口になります。「出席扱いにできる形はありますか」と聞くのがいちばん早いです。
教材を契約すれば出席扱いになりますか
それだけでは要件を満たしません。自宅でのICT等を活用した学習が出席扱いになるには、学校との連携、訪問等による定期的・継続的な対面指導、計画的な学習プログラムであることなどが要ります。教材は要件の一部を支えるものであって、教材そのものが認定されるわけではありません。
フリースクールでも出席扱いになりますか
制度上は教育支援センター等の公的機関が原則で、公的機関での指導の機会が得られない場合などに、本人や保護者の希望もあり適切と判断されれば民間の相談・指導施設も考慮されてよいとされています。判断は校長が教育委員会と連携して行うため、施設を決める前に学校へ確認してください。
高校受験に不利になりませんか
欠席日数の扱いは都道府県や高校によって違うので、受験先の要項を必ず確認してください。出席扱いが認められれば欠席日数から除かれます。また、欠席日数を選抜の資料としない学校や、面接で事情を聞く形にしている学校もあります。中学校の進路担当に、地域の実情を聞くのがいちばん確実です。
本人が勉強したがりません
時期によります。体調や気持ちが戻っていない段階で量を求めると、勉強そのものが嫌なものとして固まります。まず1日1単元でも「終わった」と言える形にしてください。それも難しい時期なら、学習は止めて構いません。ここは学習面だけで判断しないほうがいい部分です。
まとめ
- 最初にやるのは教材選びではなく、学校への相談。判断するのは校長です
- 出席扱いのルートは①学校外の施設 ②自宅でのICT等の2つ。②は①が使えない場合の位置づけ
- 教材を契約するだけでは要件を満たさない。学校との連携と対面指導が前提です
- 認められた日数は出席日数に計上され、欠席日数から除かれる
- 学習は戻ってから/数学と英語だけ/1日1単元の順で進める
制度は知らないと使えません。今日できるのは、担任に「出席扱いにできる形はありますか」と聞くことだけで十分です。学習の順番はそのあとで決められます。
学習面の支えとして塾を検討する段階になったら、選び方はこちらを参考にしてください。通う形にこだわらず、まず1教科から始めるのが現実的です。



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