条件付き確率の問題でつまずく原因は、計算ではありません。問題文を読んで「分母を全体にするのか、Aにするのか」を決める所で間違えています。
この記事では、まず問題文の言い回しで P(A∩B) と PA(B) を見分ける表を作り、そのあとさいころ → 袋の玉 → くじ → 人数の表 → 原因の確率の順に8問を解きます。後半では、大学入学共通テストで条件付き確率がどう出たかと、表で解く手順をまとめました(2026年10月8日に文部科学省・大学入試センターの資料で確認)。
- 分母を決める…「Aであったとき」「Aという条件のもとで」と書いてあれば、分母は全体ではなくA
- 式…PA(B)=P(A∩B)÷P(A)。同じように起こる場合なら n(A∩B)÷n(A) と数えてよい
- 乗法定理…P(A∩B)=P(A)×PA(B)。「1回目に取り、続けて2回目」はこれでかける
- 原因の確率…「結果がBだったとき、原因がAである確率」は、人数や個数に直した表を作ると間違えない
条件付き確率とは:分母が「全体」から「A」に変わる確率
事象Aが起こったという条件のもとで、事象Bが起こる確率を、Aが起こったときのBの条件付き確率といい、PA(B) と書きます(P(B|A) と書く本もあります)。
文部科学省の学習指導要領解説では、条件付き確率は数学Aの「場合の数と確率」で扱い、「条件付き確率の意味を理解し,簡単な場合について条件付き確率を求めること」とされています。乗法定理 P(A∩B)=P(A)PA(B) も同じ解説に載っています。
| 求める確率 | 分母 | 分子 | |
|---|---|---|---|
| ふつうの確率 P(B) | 全体のうちBの割合 | 全体 n(U) | n(B) |
| 同時に起こる確率 P(A∩B) | 全体のうちAとBが両方起こる割合 | 全体 n(U) | n(A∩B) |
| 条件付き確率 PA(B) | Aの中でBも起こる割合 | A だけ n(A) | n(A∩B) |
つまり、条件付き確率は「Aが起きた世界だけを新しい全体と見直す」確率です。分子は P(A∩B) と同じで、分母だけが変わります。
- PA(B)=P(A∩B)÷P(A)(P(A)が0でないとき)
- どの場合も同じように起こるなら PA(B)=n(A∩B)÷n(A)
- PA(B) と PB(A) は別もの。分母がAかBかが違うので、一般に値は違う
P(A∩B)と条件付き確率の見分け方:問題文の言い回し表

P(A∩B) か PA(B) かを決める材料は、問題文の言い回しです。
| 問題文の言い回し | 求めるもの | 分母 |
|---|---|---|
| Aであり、かつBである確率 | P(A∩B) | 全体 |
| Aが起こり、さらにBが起こる確率 | P(A∩B) | 全体 |
| Aであったとき、Bである確率 | PA(B) | A |
| Aという条件のもとで、Bである確率 | PA(B) | A |
| Aの中から選んだとき、Bである確率 | PA(B) | A |
| Bであったとき、それがAによる確率 | PB(A)(原因の確率) | B |

「〜であったとき」「〜のとき」「〜という条件のもとで」が出たら、その直前の事象に下線を引いて、それを分母にする。この1手を省くと、問1なら 1/6 が正解のところを P(A∩B) の 1/12 と答えてしまいます。
- 問題文の「〜であったとき」の直前に下線を引く(それが条件A)
- 求める事象Bに波線を引く
- 分母に n(A) または P(A)、分子に n(A∩B) または P(A∩B) を書く
- 最後に「分母がAのままか」を見直す
基本問題:さいころ・袋の玉・くじ(問1〜問4)
問1 さいころ2回:1回目が偶数だったとき
さいころを2回投げる。1回目に偶数の目が出たとき、2つの目の和が8になる確率を求めよ。
全体は 6×6=36通り。条件A「1回目が偶数」は 3×6=18通り。A∩B「1回目が偶数で和が8」は (2,6)(4,4)(6,2) の3通り。よって PA(B)=3÷18=1/6。
比べると、条件を付けない「和が8」の確率は 5/36、「1回目が偶数で、かつ和が8」の確率 P(A∩B) は 3/36=1/12。分母が36か18かで答えが変わります。
問2 「少なくとも1つ」が条件になる問題
さいころを2個投げる。少なくとも1個は6の目が出たとき、2個とも6の目である確率を求めよ。
条件A「少なくとも1個は6」は、全体36通りから「どちらも6以外」の 5×5=25通りを引いて 11通り。A∩B「2個とも6」は1通り。よって 1÷11=1/11。
直感で 1/6 と答えがちですが、分母は 36 でも 6 でもなく 11 です。余事象で n(A) を出すのがこの問題の山場です。
問3 袋の玉を戻さずに2回取る(乗法定理)
袋に赤玉4個と白玉3個が入っている。玉を1個ずつ、戻さずに2回取り出す。(1) 1回目が赤玉だったとき、2回目も赤玉である確率 (2) 2回とも赤玉である確率 (3) 2回目が赤玉である確率 をそれぞれ求めよ。
(1) 1回目に赤を取ると、袋は赤3個・白3個の6個。よって 3/6=1/2(これが条件付き確率)。
(2) 乗法定理で 4/7×3/6=2/7。
(3) 1回目が赤か白かで分けて足す。4/7×3/6+3/7×4/6=12/42+12/42=4/7。
(1)は「1回目が赤だったとき」なので分母が6個に変わり、(2)は「2回とも」なので全体から見た確率です。
問4 くじ引きは先に引くほうが得か
10本のうち当たりが3本のくじがある。AとBがこの順に1本ずつ引き、引いたくじは戻さない。(1) Bが当たる確率 (2) Bが当たったとき、Aも当たっていた確率 を求めよ。
(1) Aが当たる場合と外れる場合で分ける。3/10×2/9+7/10×3/9=6/90+21/90=27/90=3/10。Aと同じ 3/10 なので、Aの結果が分からないなら、引く順番で有利・不利はありません。
(2) 求めるのは PBが当たり(Aが当たり)。分母は(1)の 27/90、分子は「AもBも当たり」の 6/90。6/90÷27/90=6÷27=2/9。後に起きたBの結果から、先に起きたAを考える問題です。
- 条件の事象の場合の数を先に数える(問1・問2)
- 「少なくとも」は余事象で n(A) を出す(問2)
- 戻さない取り出しは、1回目の結果で2回目の分母が変わる(問3)
- 場合分けして足した確率が、次の問題の分母になる(問4)
人数の表で解く問題(問5・問6)
条件付き確率は、2×2の表(分割表)にすると、分母にする行や列がそのまま見えます。
問5 男女と眼鏡の表
あるクラスの生徒40人について、眼鏡をかけているかを調べたら下の表のようになった。この中から1人を選ぶ。(1) 選んだ生徒が女子だったとき、眼鏡をかけている確率 (2) 選んだ生徒が眼鏡をかけていたとき、女子である確率 を求めよ。
| 人数 | 眼鏡あり | 眼鏡なし | 合計 |
|---|---|---|---|
| 男子 | 8 | 14 | 22 |
| 女子 | 6 | 12 | 18 |
| 合計 | 14 | 26 | 40 |
(1) 分母は「女子」の行の合計 18、分子は女子かつ眼鏡の 6。6÷18=1/3。
(2) 分母は「眼鏡あり」の列の合計 14、分子は同じ 6。6÷14=3/7。
分子はどちらも同じ6で、行で割るか列で割るかだけが違います。
問6 2つの工場の不良品(原因の確率)
ある製品は、全体の 3/5 を工場Aで、2/5 を工場Bで作っている。不良品が出る割合は、工場Aでは 1/50、工場Bでは 1/25 である。製品を1個取り出したら不良品だった。それが工場Aで作られたものである確率を求めよ。
P(Aで作られ不良)=3/5×1/50=3/250、P(Bで作られ不良)=2/5×1/25=4/250。不良品になる確率は合計 7/250。求める確率は 3/250÷7/250=3/7。
工場Aのほうが多く作っているのに、不良品がAの製品である確率は半分より小さくなります。製品を 250個 と置いて「不良品はAから3個・Bから4個」と数えても同じ答えです。
ここまでの表の作り方は、数学の苦手を戻ってやり直す記事でも、同じ「数えられる形に直す」考え方として扱っています。

応用:検査の陽性から考える原因の確率(問7・問8)
「結果がBだったとき、原因がAである確率」PB(A)を原因の確率と呼びます。学習指導要領解説も、乗法定理の式が「結果が生じたときに原因が生じている主観確率を計算するベイズの定理を導く基になる考え方」だと説明しています。
問7 陽性でも病気である確率は小さい
ある病気にかかっている人は全体の 1/100 である。この病気の検査は、かかっている人の 9/10 を陽性と判定し、かかっていない人の 1/20 も誤って陽性と判定する。検査で陽性と出た人が、実際にこの病気にかかっている確率を求めよ。
式だけで解くと実感がわかないので、全体を1万人と置いて人数の表にします(人数はすべて計算で出した値)。
| 1万人で計算 | 陽性 | 陰性 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 病気あり | 10000×1/100×9/10=90 | 10 | 100 |
| 病気なし | 9900×1/20=495 | 9405 | 9900 |
| 合計 | 585 | 9415 | 10000 |
分母は「陽性」の列の合計 585、分子は病気ありかつ陽性の 90。90÷585=2/13(約0.15)。
陽性と出ても、実際に病気なのは13人に2人ほどです。病気でない人が9900と圧倒的に多いので、その 1/20 の誤判定(495)が、本当の陽性(90)を上回るためです。
ここで使った「病気の人のうち陽性になる割合(9/10)」を、検診の分野では感度といいます。厚生労働省「がん検診のあり方に関する検討会」(第34回)に提出された研究班の資料では、2×2表の記号で、感度=A/(A+B)、陽性反応適中度=A/(A+C) と定義されています。問7で求めた 2/13 は、この陽性反応適中度にあたります。
問8 箱を選んでから玉を取る
箱Xには赤玉2個・白玉3個、箱Yには赤玉4個・白玉1個が入っている。さいころを投げて1か2の目なら箱X、それ以外なら箱Yを選び、選んだ箱から玉を1個取り出す。取り出した玉が赤だったとき、それが箱Xから取り出された確率を求めよ。
P(Xを選び赤)=2/6×2/5=2/15、P(Yを選び赤)=4/6×4/5=8/15。赤が出る確率は 10/15。求める確率は 2/15÷10/15=1/5。
表にするなら、30回くり返したと置いて「Xを選ぶ10回のうち赤4回、Yを選ぶ20回のうち赤16回」。赤20回のうちXは4回なので 4÷20=1/5 と数えられます。
- 原因(工場・病気・箱)ごとに、結果が起こる確率を乗法定理でかける
- それらを足して、結果が起こる確率(分母)を出す
- 求める原因の分を、分母で割る
- 分数が重なるときは、全体を1万人・250個・30回などと置いて表で数える
共通テストでの出題:前の小問の結果を使って条件付き確率を求める

大学入試センターの問題評価・分析委員会報告書を令和3年度から令和8年度まで確認すると、本試験の数学Ⅰ・数学Aで条件付き確率が取り上げられたのは次の2回でした。あわせて令和6年度の追・再試験の問題にも条件付き確率の設問があります(2026年10月8日確認。令和3年度第2日程と令和4・5年度の追・再試験は、センターでの公開が終わっていて確認できていません)。
| 年度 | 大問 | 条件付き確率の出方 |
|---|---|---|
| 令和3年度(第1日程) | 第3問(場合の数と確率・配点20点) | くじの結果から、どの箱から引いた可能性が高いかを条件付き確率で考える(箱3つ→箱4つへ広げる) |
| 令和4年度(本試験) | 第3問(場合の数と確率・配点20点) | プレゼント交換会。最後の⑷(3点)で、5人で交換する場合の条件付き確率 |
| 令和6年度(追・再試験) | 第3問(選択問題・配点20点) | タイルの貼り方。ある時点の配置が分かったとき、その前の配置である条件付き確率 |
令和3年度は⑴から条件付き確率を求めさせ、箱の数を増やしながら考察を広げる流れ、令和4年度は⑵⑶で求めた場合の数を使って最後の⑷で条件付き確率を求める流れです。どちらも前の小問の結果を使う点が共通しています。令和3年度の報告書(高等学校教員の評価)は、第3問⑴について「一定の手順に従って条件付き確率を求める力を問うている」と書いています。令和5年度から令和8年度の本試験の報告書には「条件付き」の語は出てきませんが、令和6年度の追・再試験のように問題では出ているので、確率の大問の一部として準備しておく必要があります。
令和7年度からの「数学Ⅰ,数学A」は70分・100点で、数学Aは「図形の性質」「場合の数と確率」の2項目から出題され、すべて解答する形です(旧課程の選択問題はありません)。確率の大問を飛ばすことはできません。
- 小問の答えを、問題用紙の余白に表や樹形図の形で残しておく
- 最後の小問で「〜であったとき」に下線を引き、分母にする小問の答えを探す
- 前の小問で出した確率や場合の数が、分母・分子のどちらに入るかを確かめる
- 分母・分子に同じ分母の分数があれば、分子どうしの割り算にする(問4・問6・問8の形)
- 答えが1を超えたら、分母と分子を取り違えている
大問ごとの時間配分と平均点は、共通テスト数学の対策記事にまとめています。

条件付き確率でよくある3つの間違い
| 間違い | どこで起きるか | 直し方 |
|---|---|---|
| P(A∩B) を答える | 「Aであったとき」の問題で、分母を全体のままにする | 条件の事象に下線を引き、分母をAにする |
| PA(B) と PB(A) を取り違える | 原因の確率(問4(2)・問6〜問8) | 「何が分かっていて、何を聞かれているか」を先に1行で書く |
| 戻さない取り出しで分母を変えない | 袋の玉・くじ(問3・問4) | 1回目の後に袋の中身を書き直す |
独立との関係も確認しておきます。P(A)が0でないとき、PA(B)=P(B) が成り立つなら、Aが起きてもBの起こりやすさは変わらないので、AとBは独立といいます(事象の独立は、学習指導要領解説の「理数数学Ⅰ」で、確率を発展・拡充させる内容の例として挙げられています)。問1では PA(B)=1/6、P(B)=5/36 で等しくないため、「1回目が偶数」と「和が8」は独立ではありません。
ほかの単元の公式を条件ごと確認したい人は、公式一覧と一問一答の記事も使ってください。


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条件付き確率についてよくある質問
- 条件付き確率は数学Aと数学Bのどちらで習いますか?
-
数学Aの「場合の数と確率」です。文部科学省の学習指導要領解説で、数学Aの内容として「条件付き確率の意味を理解し,簡単な場合について条件付き確率を求めること」と書かれています。数学Bの「統計的な推測」の解説にも、数学Aの「場合の数と確率」で条件付き確率を扱うと書かれています。
- P(B|A) と PA(B) は同じ意味ですか?
-
同じです。高校の教科書では PA(B)、大学や統計の本では P(B|A) と書くことが多く、どちらも「Aが起こったときにBが起こる確率」です。
- 公式を使わずに解く方法はありますか?
-
あります。どの場合も同じように起こるなら、条件の事象の場合の数で、両方起こる場合の数を割るだけです。問1・問2・問5は公式を使わずに数えて解けます。分数が重なる問題は、全体を1万人や30回と置いて表にすると数えられます。
- ベイズの定理は覚える必要がありますか?
-
数学Aの問題を解くだけなら、名前と式を覚えなくても解けます。問6〜問8のように「乗法定理でかける → 足して分母にする → 割る」の3手で同じ答えになります。
- ベン図で表すことはできますか?
-
できます。全体の長方形の中にAとBの円をかき、重なり(A∩B)をAの円の中だけで見た割合が PA(B) です。ただし人数や個数が出てくる問題は、ベン図より2×2の表のほうが分母を取り違えにくいです。
この記事で確認した資料
条件付き確率の範囲と定義、乗法定理とベイズの定理の位置づけは文部科学省の学習指導要領解説、共通テストでの出題は大学入試センターの問題評価・分析委員会報告書で確認しました(2026年10月8日)。令和3年度・令和4年度の報告書は大学入試センターのサイトでの公開が終わっているため、Internet Archive に保存された大学入試センターの公式PDFで本文を確認しています。8つの問題はこの記事のために作った例題で、答えはすべて分数で検算しています。
文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 数学編 理数編」(PDF)
大学入試センター「令和3年度 大学入学共通テスト(第1日程)数学Ⅰ・数学A 問題評価・分析委員会報告書」(保存版PDF)
大学入試センター「令和4年度 大学入学共通テスト(本試験)数学Ⅰ・数学A 関係団体評価」(保存版PDF)
大学入試センター「令和7年度大学入学者選抜に係る大学入学共通テスト 出題教科・科目の出題方法等」(PDF)


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