数学の公式は、数が多いから覚えられないのではありません。覚える公式と、その場で導く公式を分けていないから、全部を暗記対象にしてしまって崩れます。
この記事では、中学と高校の公式を学年・科目ごとに並べたうえで、分野ごとに「元の1本」だけを覚え、残りはそこから出すという持ち方を示します。公式一覧としても使えますが、狙いは覚える量を減らすことです。
結論:分野ごとに「元の1本」だけを覚える
数学の公式は、分野ごとに親が1本あって、他はその変形です。親を書けるようにしておけば、忘れても現場で作り直せます。
| 分野 | 覚える「元の1本」 | そこから出るもの |
|---|---|---|
| 展開・因数分解 | (a+b)² = a²+2ab+b² | (a−b)²、(a+b)(a−b)=a²−b²、(a+b)³ |
| 二次方程式 | 平方完成(a(x−p)²+q の形に直す) | 解の公式 x = (−b±√(b²−4ac))/2a、判別式 D = b²−4ac |
| 図形の長さ | 三平方の定理 a²+b² = c² | 2点間の距離、円の方程式 (x−a)²+(y−b)² = r² |
| 三角比 | sin²θ+cos²θ = 1 | tanθ = sinθ/cosθ、1+tan²θ = 1/cos²θ |
| 三角関数 | 加法定理 sin(α+β) = sinαcosβ+cosαsinβ | 2倍角、半角、三角関数の合成 |
| 数列 | 等差 aₙ = a+(n−1)d / 等比 aₙ = arⁿ⁻¹ | 和の公式、Σの公式 |
| 微分 | 定義 f′(x) = lim(f(x+h)−f(x))/h | (xⁿ)′ = nxⁿ⁻¹、積・商の微分 |
| 確率 | 確率 = あてはまる場合の数 ÷ 全体の場合の数 | 余事象、条件付き確率、期待値 |

塾で「公式が覚えられない」と言う子に、解の公式を平方完成から出させると、たいてい途中で止まります。止まる場所がその子の穴です。丸暗記していた公式を1回だけ自分で導くと、そこから急に定着します。
中学数学の公式一覧(中1〜中3)
中学は範囲が狭いので、ここは素直に覚えてしまってかまいません。ただし図形の体積と相似だけは、意味を持たずに覚えると必ず混ざります。
| 学年 | 単元 | 公式 |
|---|---|---|
| 中1 | 比例・反比例 | y = ax / y = a/x |
| 中1 | 円 | 円周 = 2πr / 面積 = πr² |
| 中1 | 立体 | 柱の体積 = 底面積×高さ / 錐の体積 = 底面積×高さ÷3 |
| 中1 | 球 | 表面積 = 4πr² / 体積 = 4πr³÷3 |
| 中2 | 一次関数 | y = ax+b / 傾き a = yの増加量 ÷ xの増加量 |
| 中2 | 角 | n角形の内角の和 = 180×(n−2) / 外角の和 = 360 |
| 中3 | 展開・因数分解 | (a+b)² = a²+2ab+b² / (a+b)(a−b) = a²−b² |
| 中3 | 二次方程式 | x = (−b±√(b²−4ac))/2a |
| 中3 | 関数 | y = ax² / 変化の割合 = a(p+q) |
| 中3 | 相似 | 面積比 = 相似比の2乗 / 体積比 = 相似比の3乗 |
| 中3 | 三平方の定理 | a²+b² = c²(直角をはさむ2辺と斜辺) |
| 中3 | 円周角 | 円周角 = 中心角÷2 |
相似比・面積比・体積比です。相似比が2なら面積比は4、体積比は8。ここを「2倍」と答えて落とす答案が毎年出ます。相似比を2乗・3乗する、と手を動かして確かめてください。
高校数学の公式一覧:数学I・数学A
高校に入ると、公式に使ってよい条件が付きます。式だけ覚えて条件を落とすと、答案が途中で破綻します。
数学I
| 単元 | 公式 | 使う条件・注意 |
|---|---|---|
| 二次関数 | y = a(x−p)²+q(平方完成) | 頂点 (p, q)。最大最小はここから読む |
| 二次方程式 | D = b²−4ac | D>0 で異なる2つの実数解、D=0 で重解、D<0 で実数解なし |
| 三角比 | sin²θ+cos²θ = 1 | θの範囲で符号が決まる。範囲を先に書く |
| 正弦定理 | a/sinA = b/sinB = c/sinC = 2R | 向かい合う辺と角がそろっているとき |
| 余弦定理 | a² = b²+c²−2bc·cosA | 2辺とはさむ角、または3辺が分かるとき |
| 三角形の面積 | S = (1/2)bc·sinA | 2辺とはさむ角。高さが不明でも出せる |
| データ | 分散 = (偏差の2乗)の平均 / 標準偏差 = √分散 | 単位をそろえるのは標準偏差 |
数学A
| 単元 | 公式 | 使う条件・注意 |
|---|---|---|
| 順列 | nPr = n!/(n−r)! | 並べる順番を区別するとき |
| 組合せ | nCr = n!/(r!(n−r)!) | 選ぶだけで順番を区別しないとき |
| 確率の和 | P(A∪B) = P(A)+P(B)−P(A∩B) | 同時に起こる場合を引く |
| 余事象 | P(A) = 1−P(Aでない) | 「少なくとも1つ」はこちらが速い |
| 条件付き確率 | P(B|A) = P(A∩B)/P(A) | 分母が全体ではなくAになる |
| 方べきの定理 | PA·PB = PC·PD | 円と2本の直線が交わるとき |
| 整数 | ユークリッドの互除法 | 最大公約数を割り算の繰り返しで出す |

数学Aの確率は、公式より「順番を区別するか」の判断が先です。nPr と nCr のどちらかで迷ったら、具体的に3個くらいで書き出して数えてください。書き出しは遠回りに見えて、いちばん確実です。
高校数学の公式一覧:数学II・数学B・数学C
数学II
| 単元 | 公式 |
|---|---|
| 式と証明 | 二項定理 (a+b)ⁿ の展開に nCr が並ぶ |
| 図形と方程式 | 円の方程式 (x−a)²+(y−b)² = r² / 点と直線の距離 |ax₀+by₀+c|/√(a²+b²) |
| 三角関数 | 加法定理 sin(α±β) = sinαcosβ±cosαsinβ / cos(α±β) = cosαcosβ∓sinαsinβ |
| 三角関数 | 2倍角 sin2α = 2sinαcosα / cos2α = 1−2sin²α / 合成 a·sinθ+b·cosθ = √(a²+b²)·sin(θ+α) |
| 指数・対数 | log(MN) = logM+logN / log(Mᵏ) = k·logM / 底の変換 log_a b = log_c b / log_c a |
| 微分・積分 | (xⁿ)′ = nxⁿ⁻¹ / ∫xⁿdx = xⁿ⁺¹/(n+1)+C / 面積の 1/6 公式 |
数学B・数学C
| 科目 | 単元 | 公式 |
|---|---|---|
| 数学B | 数列 | 等差 aₙ = a+(n−1)d / 和 Sₙ = n(a+l)/2 |
| 数学B | 数列 | 等比 aₙ = arⁿ⁻¹ / 和 Sₙ = a(rⁿ−1)/(r−1)(r≠1) |
| 数学B | 数列 | Σk = n(n+1)/2 / Σk² = n(n+1)(2n+1)/6 |
| 数学B | 統計的な推測 | 期待値 E(X) = Σ(値×確率) / 分散 V(X) = E(X²)−{E(X)}² |
| 数学C | ベクトル | 内積 a·b = |a||b|cosθ / 成分では a₁b₁+a₂b₂ |
| 数学C | ベクトル | 垂直なら内積 = 0 / 平行なら実数倍で書ける |
| 数学C | 複素数平面 | ド・モアブルの定理 (cosθ+i·sinθ)ⁿ = cos(nθ)+i·sin(nθ) |
数学Bの「統計的な推測」と数学Cの「平面上の曲線と複素数平面」は、平成30年告示の学習指導要領で今の並びになりました。手元の参考書が古いと、単元の場所がずれていることがあります。
公式が覚えられない3つの原因と、その直し方
| 原因 | 出る症状 | 直し方 |
|---|---|---|
| 文字が何を指すか持っていない | 余弦定理の a・b・c がどの辺か言えない | 図に必ず記号を書き込む。文字と図が結び付くまで式を使わない |
| 使う条件を覚えていない | 正弦定理と余弦定理のどちらを使うか毎回迷う | 「与えられた情報 → 使う公式」の索引を自分で1枚作る |
| 一度も導いたことがない | 忘れたら手が止まる。思い出すしかない | 元の1本から紙に出す作業を1回だけやる。2回目からは思い出せる |
公式を書き写すだけのノートは、教科書の巻末と同じものを手書きで作っているだけです。作るなら「与えられた情報から引く索引」にしてください。2辺とはさむ角なら余弦定理、向かい合う辺と角なら正弦定理、という引き方に変えると使えます。
公式を導ける形にする勉強の順番
順番を間違えると、演習量を増やしても定着しません。次の並びで進めてください。
| 順番 | やること | 終わりの目安 |
|---|---|---|
| 1 | 分野の「元の1本」を、何も見ずに書く | 1分以内に書けたら次へ |
| 2 | 派生の公式を、元の1本から紙の上で導く | 導出の途中式が書けたら次へ |
| 3 | 「与えられた情報 → 使う公式」の索引を作る | 問題文を読んだ瞬間に候補が2つ以内に絞れたら次へ |
| 4 | 時間を計って解く | 条件の書き落としが消えたら仕上がり |
中学範囲で、公式そのものより速く解くための道具を足したい場合は、高校入試向けにまとめた記事があります。

同じ考え方で物理の公式を整理した記事と、高校数学を無料で学べるサイトのまとめも置いておきます。


よくある質問
- 公式は結局いくつ覚えればいいですか?
-
分野ごとの「元の1本」だけです。この記事の最初の表にある8本を書けるようにすれば、残りは導けます。
- 中学の公式は導かずに覚えていいですか?
-
中1・中2は覚えて先に進んでかまいません。ただし相似比と体積比、三平方の定理は、意味を持たせないと高校で崩れます。
- 公式の証明まで必要ですか?
-
入試の答案で証明を書く場面はほとんどありません。目的は忘れたときに作り直せることなので、1回だけ自分で導けば十分です。
- 数学Bと数学Cの範囲が参考書によって違うのはなぜですか?
-
高等学校学習指導要領(平成30年告示)で単元の配置が変わったためです。ベクトルは数学Bから数学Cへ移りました。
三平方の定理は「導ける公式」の代表です。証明をどこまでやれば足りるかは、学習指導要領の原文で確認できます。

この記事で確認した公式ページ
中学・高校の数学で扱う単元の範囲は、文部科学省の学習指導要領とその解説に基づいています(2026年9月7日に本文を確認)。公式そのものの表記は教科書の標準形にそろえました。

コメント