たすき掛けを一瞬で解く裏技|因数分解の時短テクニック【高校数学I】

たすき掛けを一瞬で解く裏技|因数分解の時短テクニック【高校数学I】

たすき掛けは、隣同士に並ぶ数は必ず互いに素(1以外の共通の約数をもたない)と知っているだけで、試す組み合わせを減らせます。前提は、式全体を先に数字でくくっておくことです。

【結論】たすき掛けを速くする4つ
  • 最初に共通因数を外す…式全体が数字でくくれるなら先にくくる
  • 隣同士は互いに素…6x²+7x+2 なら、6と2の組は隣に並ばないので候補が減る
  • 定数項が素数なら1通り…2・3・5・7なら「1×その数」で確定
  • 符号は最後に決める…数字の組を先に決め、符号は1次の係数と定数項から逆算

問題

いきなりですが次の式を因数分解してみてください。

\begin{eqnarray}
6x^2+7x+2
\end{eqnarray}

まずは以下のように準備をすると思います。ここで、掛けて2になるのは2×1しかありませんから、真ん中の列は2と1で確定させました。

たすき掛けを一瞬で解く裏技の解説図(1)

ここで迷うこととして掛けて6になるのは 「1×6」「6×1」「2×3」「3×2」の4パターンあります。つまり以下の場合があるわけです。

たすき掛けを一瞬で解く裏技の解説図(2)
たすき掛けを一瞬で解く裏技の解説図(3)
たすき掛けを一瞬で解く裏技の解説図(4)
たすき掛けを一瞬で解く裏技の解説図(5)

しかしここでこれから紹介する考え方を使えば2つにまで一瞬で絞ることができます。

たすき掛けと乗法公式の関係を見る

たすき掛けは、乗法公式 (ax+b)(cx+d)=acx²+(ad+bc)x+bd を逆向きに使う計算です。

文部科学省の学習指導要領解説では、高校の数学Ⅰで新しく扱う乗法公式はこの形だけで、三次の乗法公式は数学Ⅱで扱うとされています(高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 数学編 理数編)。

たすき掛けが早くなる考え方

その考え方は…「隣同士に並ぶ数は互いに素」ということです。「互いに素」とは1以外の共通する約数を持たないという意味です。

例えば2と5, 6と7, 10と13などが挙げられます。反対に2と6は約数2を持っていますし、3と9も3の約数を持っているので互いに素にはなりません。

隣に並ぶ数は互いに素になる

そしてたすき掛けにおいて、隣に並ぶ数は必ず互いに素になります。(理由は後述)
ただし前提があります。これは式全体が数字でくくれない状態(=共通因数を先に外してある)のときの話です。

6x²+10x+4 のように全体が2でくくれる式では成り立たないので、たすき掛けの前に共通因数を外すのを忘れないでください。

従って先ほどの4つの中から以下の2つはまず除外できるんです。

ですので後は、以下の2つを試したら良いということになりますね。経験上、掛けて6の場合は多くが「2×3」の組み合わせを選ぶと上手くいきます。今回も2つ目のパターンが正解になります。

たすき掛けを一瞬で解く裏技|たすき掛けが早くなる考え方(8)
たすき掛けを一瞬で解く裏技|たすき掛けが早くなる考え方(9)
たすき掛けを絞り込むコツ
  • 隣同士に並ぶ数は必ず互いに素になる
  • 式全体が数字でくくれない状態が前提
  • 掛けて6なら「2×3」の組み合わせが多い

なぜ隣に並ぶのは互いに素になるのか。

もし以下のパターンで上手くいくとしましょう。

たすき掛けを一瞬で解く裏技|なぜ隣に並ぶのは互いに素になるのか。(10)

この場合は因数分解の結果はこのようになりますよね。

\begin{eqnarray}
(6x+2)(x+1)
\end{eqnarray}

しかし前半の部分は2でくくることが出来ますよね。因数分解は基本的に共通の因数があれば括り出さなければいけません。

そもそもたすき掛けをしたのにさらに数字でくくれるというのは少し変な話になってしまうわけです。

もう少し言及すると、今回6x2+7x+2は2で括れません。なのにも拘らず2×(整数係数の多項式)という形になるのは矛盾してしまうわけです。

ですのでそれ以上共通因数で括ることが出来ないように、隣同士には互いに素である数を並べることになるんです。

この考え方は筆者は学校では教わらずに塾で習いました。これをご覧の中でも、気にしたことがなかったという方は多いです。地味ですがスピードアップに使える方法ですので、次回から取り入れてみてくださいね。

たすき掛けの考え方を解説している動画も貼っておきます。

【補足】こうした解法テクニックを覚えても「そもそも数学が苦手で追いつけない」という場合は、独学で悩み続けるより、どこでつまずいているかを先に特定するほうが近道です。

つまずきの見つけ方は、高校数学が全くわからないときの原因と克服の手順にまとめています。

塾の選び方全般はオンライン塾の比較記事で解説しています。

塾で教えている「数字を試す順番」

たすき掛けが遅い人は、数字の組み合わせを思いついた順に試していることがほとんどです。実は試す順番には定石があり、これを守るだけで、試す回数を減らせます。

試行の優先順位(この順に試す)
  • ①定数項が素数なら、組み合わせは1通りしかない…まずここを確認。素数(2,3,5,7,11…)なら1×その数で確定なので、符号だけ考えればよい
  • ②x²の係数が1なら、たすき掛けは不要…「かけて定数項、たして1次の係数」の2数を探すだけ。ここでたすき掛けを書き始める人は時間を損しています
  • ③絶対値が近い組み合わせから試す…12なら「3×4」を「1×12」より先に。1次の係数が小さい問題ほど、真ん中寄りの組み合わせが正解になりやすい
  • ④符号は最後に決める…数字の組み合わせを先に確定させ、符号は1次の係数と定数項の符号から逆算する

よくあるミス3パターン【現場で見てきた傾向】

塾で採点していて、たすき掛けの間違いは驚くほど同じ3種類に集中します。

ミス①:符号のつけ間違い(最頻)

定数項が正で1次の係数が負のとき、「両方マイナス」にすべきところを片方だけマイナスにするミスです。定数項が正なら2数は同符号、負なら異符号。このルールを唱えてから書き始めるだけで防げます。

ミス②:たすき掛けの「たす」を「かける」でやってしまう

斜めにかけた2つを足すのが1次の係数ですが、ここを掛けてしまう人がいます。慣れないうちは「×して→+する」と口に出しながら書くのが有効です。

ミス③:共通因数を先にくくり出していない

2x²+10x+12 のような式で、いきなりたすき掛けを始めると数字が大きくて苦戦します。

先に2でくくって 2(x²+5x+6) にすれば、たすき掛け自体が不要になります(x²の係数が1になるため)。「まず共通因数」は因数分解の絶対的な第一手です。

この3つは、私が採点してきた答案の間違いのほぼ全部を占めます。逆に言えばこの3点をチェックリストにするだけで、因数分解の失点はほぼ消えます。

たすき掛けでよくある3つのミス
  • ミス①:符号のつけ間違い(同符号・異符号を逆にする)
  • ミス②:斜めにかけた数を足さずに掛けてしまう
  • ミス③:共通因数を先にくくり出していない

練習問題【解答つき】

順番に難しくなります。上の「試す順番」を意識して解いてみてください。

スクロールできます
問題答えポイント
(1)x²+7x+12(x+3)(x+4)x²の係数が1→たすき掛け不要
(2)2x²+7x+3(2x+1)(x+3)定数項3が素数→組み合わせ1通り
(3)3x²−10x+8(3x−4)(x−2)定数項が正で1次が負→両方マイナス
(4)6x²+x−12(3x−4)(2x+3)定数項が負→異符号。絶対値の近い組から
(5)4x²−12x+9(2x−3)²完全平方式。たすき掛けの前に気づけると速い
(6)2x²+10x+122(x+2)(x+3)まず共通因数2をくくる

自分で解いた因数分解の答え合わせは、途中式つきの自動計算ツールでできます。

検算の習慣をつける

因数分解は展開すれば必ず検算できる唯一の分野です。時間がある試験では必ず展開して元の式に戻るか確認してください。特に1次の項(xの係数)だけ確認すれば、ほとんどのミスは発見できます。5秒で済みます。

【数学が苦手な人へ】この記事の内容をどの順番でやるべきか、つまずきの原因の特定方法は数学が苦手な人の克服ロードマップ(4ステップ)で解説しています。

因数分解の検算のコツ
  • 因数分解は展開すれば必ず検算できる
  • 1次の項の係数だけ確認すればミスは発見できる
  • 検算にかかる時間は5秒程度

「互いに素」で候補は何通り減るか|係数1〜10の式を全部数えた

上で紹介した「隣同士は互いに素」の絞り込みが、どれくらい効くのかを数えました。符号は最後に決めるので、ここではx²の係数 a と定数項 c の数字の組だけを数えています。

数え方は、a を2つの数の積に、c を2つの数の積に分けて、たすき掛けの2行に並べる方法の数です(上下の行を入れ替えただけのものは1通り)。

スクロールできます
式の例a と c の最大公約数候補の数(数えた)互いに素で残る数(数えた)残る割合(計算)
6x²+7x+2 = (2x+1)(3x+2)24通り2通り50%
6x²+7x−20 = (2x+5)(3x−4)212通り4通り33%
12x²+7x−10 = (3x−2)(4x+5)212通り4通り33%
6x²+17x+5 = (3x+1)(2x+5)14通り4通り100%
8x²+2x−15 = (2x+3)(4x−5)18通り8通り100%

下の2行では、絞り込みが1通りも効いていません。理由は単純で、a と c が互いに素なら、a の約数と c の約数も必ず互いに素だからです。

隣に並ぶ2数の一方は a の約数、もう一方は c の約数なので、外れる組がそもそも出てきません。

そこで a と c を1〜10の範囲で全部(10 × 10 = 100組)調べ、最大公約数で2つに分けて合計しました。

スクロールできます
a と c の関係組の数候補の合計(数えた)互いに素で残る合計(数えた)残る割合(計算)
互いに素(最大公約数が1)63組179通り179通り100%
共通の約数がある(最大公約数が2以上)37組190通り63通り33.2%
全体100組369通り242通り65.6%
たすき掛けの候補のうち「互いに素」で残る割合のグラフ。aとcが互いに素な63組は100%残り、共通の約数がある37組は33.2%に減る(aとc=1〜10を当サイトが数えた)
計算
  • 6x²+7x+2:候補4通りのうち、6と2・2と2が隣に並ぶ2通りが外れる。4 − 2 = 2通り。2 ÷ 4 = 50%
  • 共通の約数がある37組:63 ÷ 190 = 33.2%。3通りのうち2通りは試さなくてよい計算
  • 全体:242 ÷ 369 = 65.6%。互いに素の組が多いので、全体で見ると減り方は3分の1ほど(369 − 242 = 127通り)

つまり、この絞り込みはa と c が共通の約数をもつとき(6と2、12と10など)に効く道具です。

a と c が互いに素の式(6と5、8と15など)では、記事の上で紹介した「数字を試す順番」の方が時間を左右します。

そもそも、たすき掛けで割り切れない式の方が多い

もう1つ数えました。係数がすべて整数で、全体を数字でくくれない式 ax²+bx+c のうち、整数の範囲で因数分解できるものの割合です。

条件は b² − 4ac が0か平方数(1、4、9、16…)になることです。

スクロールできます
調べた範囲式の数(数えた)因数分解できる式(数えた)割合(計算)
a=1、b と c は −10〜10(c≠0)420個55個13.1%
a=2〜9、b と c は −10〜10(c≠0)2,774個270個9.7%

教科書や問題集の「因数分解せよ」は、割り切れる式だけが選ばれています。ところが、二次方程式や二次関数の問題で出てくる式は、そうとは限りません。

たとえば 2x² + 3x − 4 は、b² − 4ac = 9 + 32 = 41 で平方数ではないので、どの組み合わせを試しても因数分解できません。

6x² + 7x + 2 なら 49 − 48 = 1 = 1² なので割り切れます。

たすき掛けが向かない場合
  • 二次方程式で、数字の組を2〜3通り試しても合わないとき。先に b² − 4ac を計算し、平方数でなければ解の公式に切り替える
  • 係数が大きく、候補が10通りを超えるとき(a=12・c=10 なら12通り)。b² − 4ac が平方数かを確かめてから試すと空振りがない
  • 中学生の場合。
  • 中学校の解説が挙げる公式は (x+a)(x+b) など4つで、(ax+b)(cx+d) の形は高校の解説が「数学Ⅰ」で扱う新たな公式としている。
  • 中学の問題で x² の係数が1でない式は、まず共通因数でくくれる形を疑う

数え方:a を p × r、c を q × s に分けた (px+q)(rx+s) の並べ方を、上下の入れ替えを同じとして数えた。「残る」は p と q、r と s がどちらも互いに素のもの。因数分解できるかは b² − 4ac が0以上の平方数かで判定。いずれも当サイトがプログラムで全部数えた値です。

出典:文部科学省「中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 数学編」(PDF)/同「高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 数学編 理数編」(PDF)(2026年10月14日確認)

よくある質問

たすき掛けは何年生で習いますか?

高校の数学Ⅰ(式の展開と因数分解)です。中学校で習う因数分解は、x²の係数が1の形が中心です。

「互いに素」とはどういう意味ですか?

2つの整数が、1以外の共通の約数をもたないことです。2と5、6と7は互いに素、2と6や3と9は互いに素ではありません。

共通因数を外し忘れるとどうなりますか?

6x²+10x+4 のように全体が2でくくれる式では「隣同士は互いに素」が成り立ちません。先に 2(3x²+5x+2) とくくり、かっこの中を (3x+2)(x+1) と分解して、2(3x+2)(x+1) が答えになります。

続けて読む:因数分解とは?意味を簡単に

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この記事を書いた人

兵庫県の学習塾で塾長を経験。私大理系卒。塾バイト・家庭教師を経て、長年の経験を基に幅広く受験をサポートします。生徒だけでなく、それを支える保護者や先生の力にもなりたいという思いで立ち上げました。