無機化学は「覚えることが多すぎる」と言われる分野です。けれど、何をどこまで覚えるかは学習指導要領で決まっています。範囲が分かれば、覚える量はぐっと減ります。
この記事では、無機化学で覚えることを5つのかたまりに分けて一覧にし、暗記を減らすための覚える順番を塾長の立場でまとめます。覚えたかどうかは、最後に当サイトの無機化学の一問一答で確認できます。
理論で導ける:気体の発生の反応式の多く(酸と塩基、酸化と還元)
覚えるしかない:沈殿の色、炎色反応、気体の捕集方法、工業的製法の名前と触媒
順番は①気体→②沈殿と炎色反応→③金属イオンの分離→④工業的製法。覚えるしかないものは、表と一問一答で短期間に回します。
どこまで覚えるか:学習指導要領で決まっている範囲
文部科学省の「高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 理科編」は、「化学」の無機物質の性質で扱う元素を次のように挙げています。
| 区分 | 扱う元素(指導要領解説の例) |
|---|---|
| 典型元素:アルカリ金属 | リチウム、ナトリウム、カリウム |
| 典型元素:アルカリ土類金属 | マグネシウム、カルシウム、バリウム |
| 典型元素:ハロゲン | フッ素、塩素、臭素、ヨウ素 |
| 典型元素:貴ガス | ヘリウム、ネオン、アルゴン |
| 遷移元素 | クロム、マンガン、鉄、銅、亜鉛、銀 |
同じ解説は、典型元素の性質が周期表に基づいて整理できることを理解させるのがねらいだとし、実験の例としてハロゲン単体の酸化力の違いを調べる実験や、典型元素と遷移元素の金属イオンを分離する実験を挙げています。また「化学基礎」では、成分元素を確かめる方法として炎色反応や沈殿反応を扱うとしています。

無機化学が苦手な子の多くは、参考書の端の細かい物質まで全部覚えようとしていることが原因です。まず上の表の元素に絞って、周期表の「族」ごとに性質を整理してください。
覚えること一覧①:気体の製法と捕集方法
入試でいちばん出るのが気体です。発生させる反応と、集め方(水上置換・上方置換・下方置換)をセットで覚えます。水に溶けにくい気体は水上置換、水に溶けやすく空気より軽いものは上方置換、水に溶けやすく空気より重いものは下方置換です。
| 気体 | 発生させる方法 | 集め方 |
|---|---|---|
| 水素 H2 | 亜鉛+希硫酸(または希塩酸) | 水上置換 |
| 酸素 O2 | 過酸化水素水+酸化マンガン(IV)(触媒) | 水上置換 |
| 塩素 Cl2 | 酸化マンガン(IV)+濃塩酸(加熱) | 下方置換 |
| アンモニア NH3 | 塩化アンモニウム+水酸化カルシウム(加熱) | 上方置換 |
| 塩化水素 HCl | 塩化ナトリウム+濃硫酸(加熱) | 下方置換 |
| 二酸化炭素 CO2 | 炭酸カルシウム+希塩酸 | 下方置換 |
| 一酸化窒素 NO | 銅+希硝酸 | 水上置換 |
| 二酸化窒素 NO2 | 銅+濃硝酸 | 下方置換 |
| 二酸化硫黄 SO2 | 銅+熱濃硫酸 | 下方置換 |
| 硫化水素 H2S | 硫化鉄(II)+希硫酸(または希塩酸) | 下方置換 |
CO2やH2Sは「弱酸の塩+強酸→弱酸が出る」、NH3は「弱塩基の塩+強塩基→弱塩基が出る」、NOとNO2・SO2は酸化還元で作れます。理論化学の酸と塩基・酸化と還元が分かっていれば、反応式を丸暗記する必要はありません。反応式の作り方は化学反応式の覚え方にまとめています。
覚えること一覧②:沈殿の色と炎色反応
沈殿の色と炎色反応は、理論では導けないので覚えるしかない部分です。そのかわり量は決まっています。
| 沈殿 | 色 |
|---|---|
| AgCl(塩化銀) | 白 |
| AgBr(臭化銀) | 淡黄 |
| AgI(ヨウ化銀) | 黄 |
| PbCl2(塩化鉛(II)) | 白 |
| BaSO4(硫酸バリウム) | 白 |
| CaCO3(炭酸カルシウム) | 白 |
| CuS・PbS・Ag2S(硫化物) | 黒 |
| ZnS(硫化亜鉛) | 白 |
| Fe(OH)3(水酸化鉄(III)) | 赤褐 |
| Cu(OH)2(水酸化銅(II)) | 青白 |
| PbCrO4・BaCrO4(クロム酸塩) | 黄 |
| Ag2CrO4(クロム酸銀) | 赤褐 |
| 元素 | 炎色反応の色 |
|---|---|
| リチウム Li | 赤 |
| ナトリウム Na | 黄 |
| カリウム K | 赤紫 |
| カルシウム Ca | 橙赤 |
| ストロンチウム Sr | 紅(深赤) |
| バリウム Ba | 黄緑 |
| 銅 Cu | 青緑 |

沈殿の色は、「白が基本、例外を覚える」と量が半分になります。ハロゲン化銀の「白→淡黄→黄」と、硫化物は「ZnSだけ白、あとは黒が多い」の2つから始めてください。
覚えること一覧③:金属イオンの分離
指導要領解説が実験の例に挙げている「金属イオンを分離する実験」は、入試でも頻出です。加える試薬と、そこで沈殿するものの順番を覚えます。
| 順番 | 加える試薬 | 沈殿するもの(例) |
|---|---|---|
| 1 | 希塩酸 | Ag+、Pb2+が塩化物として沈殿 |
| 2 | 酸性で硫化水素 | Cu2+などが硫化物として沈殿 |
| 3 | 煮沸して硝酸を加えたあと、アンモニア水 | Fe3+、Al3+が水酸化物として沈殿 |
| 4 | 塩基性で硫化水素 | Zn2+が硫化物として沈殿 |
| 5 | 炭酸アンモニウム | Ca2+、Ba2+が炭酸塩として沈殿 |
分離の問題は、どの試薬で何が沈殿するかを上の表で覚えたうえで、問題に出てくるイオンだけを当てはめれば解けます。
覚えること一覧④:工業的製法
| つくるもの | 製法の名前 | ポイント |
|---|---|---|
| アンモニア | ハーバー・ボッシュ法 | 窒素と水素から。鉄を主成分とする触媒 |
| 硝酸 | オストワルト法 | アンモニアを酸化。白金触媒 |
| 硫酸 | 接触法 | 二酸化硫黄を酸化。酸化バナジウム(V)触媒 |
| 炭酸ナトリウム | アンモニアソーダ法(ソルベー法) | 塩化ナトリウム・アンモニア・二酸化炭素から |
| アルミニウム | 溶融塩電解 | 酸化アルミニウムを氷晶石とともに融かして電気分解 |
| 銅 | 電解精錬 | 粗銅を陽極、純銅を陰極にして電気分解 |
| 鉄 | 溶鉱炉 | 鉄鉱石をコークスから生じる一酸化炭素で還元 |
無機化学の勉強法:暗記を減らす覚える順番

ここからは塾で教えてきた経験にもとづく順番です。無機化学は最初に理論化学の酸と塩基・酸化と還元が固まっていると、覚える量が一気に減ります。
| 順番 | やること | 目安の期間 |
|---|---|---|
| 1 | 理論化学の酸と塩基・酸化と還元を復習する | 1週間 |
| 2 | 気体の製法と捕集方法(一覧①) | 1週間 |
| 3 | 沈殿の色と炎色反応(一覧②) | 3〜4日 |
| 4 | 金属イオンの分離(一覧③) | 3〜4日 |
| 5 | 工業的製法(一覧④)と、族ごとの性質 | 1週間 |
| 6 | 一問一答で全範囲を回し、間違えた問題だけ繰り返す | 毎日10分 |
覚えたかどうかは、当サイトの無機化学の一問一答100問で確認してください。沈殿・気体・炎色反応を中心に、1問ずつ答えを確かめられます。理論化学が不安な人は理論化学の一問一答から始めてください。

無機化学は1回で完璧に覚えようとしないことが大事です。一覧を1周したら、すぐ一問一答で確認して、間違えたところだけ表に戻る。これを3周すると、ほとんどの子が入試で問われる範囲を覚えきれます。
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無機化学の勉強法についてよくある質問
- 無機化学は暗記だけですか?
-
いいえ。気体の発生の反応式の多くは、酸と塩基・酸化と還元の考え方で作れます。覚えるしかないのは、沈殿の色・炎色反応・捕集方法・工業的製法の名前と触媒です。
- 無機化学で覚えることは何ですか?
-
気体の製法と捕集方法、沈殿の色、炎色反応、金属イオンの分離、工業的製法の5つです。扱う元素は、学習指導要領解説が挙げるアルカリ金属・アルカリ土類金属・ハロゲン・貴ガスと、クロム・マンガン・鉄・銅・亜鉛・銀が中心です。
- 無機化学はいつから勉強すればいいですか?
-
理論化学の酸と塩基・酸化と還元が終わってからが効率的です。学校の授業で無機化学に入ったら、一覧を1周して一問一答で確認する、を並行してください。
- 沈殿の色がどうしても覚えられません。
-
白を基本にして、白以外の例外だけ覚えてください。ハロゲン化銀の「白→淡黄→黄」、硫化物は「ZnSだけ白」から始めると覚えやすくなります。
- 無機化学の暗記に使える無料の問題はありますか?
-
当サイトの無機化学の一問一答100問が使えます。無料の学習サイトは高校化学が無料で勉強できるサイトにもまとめています。
この記事で確認した資料
扱う元素の範囲と、炎色反応・沈殿反応・金属イオンの分離を扱うことは、文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 理科編 理数編」の「化学基礎」と「化学」の無機物質の性質の項で確認しました(2026年9月27日)。気体・沈殿・炎色反応・工業的製法の表は、高校化学の教科書で扱う標準的な内容をまとめたものです。覚える順番と期間は、塾での経験にもとづく目安です。





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