高校物理の公式を、力学・熱・波・電磁気・原子の5分野に分けて一覧にしました。各表で「基礎」の印がある行は物理基礎の範囲です。
先に1つだけ。物理は公式を丸暗記する科目ではありません。各分野に「元になる1本」があり、残りはそこから導けます。この記事では表の前に、その1本を明示します。覚えるべきはそこだけです。
先に結論:分野ごとに「元になる1本」だけ覚える
| 分野 | 元になる1本 | そこから導けるもの |
|---|---|---|
| 力学 | 運動方程式 ma = F | 等加速度運動の3式、力学的エネルギー保存、運動量保存 |
| 熱 | 熱力学第一法則 ΔU = Q + W | 定積・定圧・等温・断熱変化の各関係 |
| 波 | v = fλ | 弦・気柱の固有振動、ドップラー効果 |
| 電磁気 | クーロンの法則 F = k q₁q₂ / r² | 電場・電位・コンデンサー、オームの法則との対応 |
| 原子 | 光子のエネルギー E = hν | 光電効果、ボーアの量子条件、質量とエネルギー |

公式集を眺めて「全部覚えなきゃ」と思った時点で、物理は苦しくなります。ma = F から等加速度の3式が出せるか。まずそこを確かめてください。出せるなら、暗記する公式は半分以下になります。
- 力学:ma=Fから等加速度3式や保存則を導出
- 熱:ΔU=Q+Wから定積・定圧などの関係を導出
- 波:v=fλから固有振動やドップラー効果を導出
- 電磁気・原子も各1本の式から関連公式を導出
力学の公式一覧
等加速度直線運動
| 公式 | 記号の意味 | 範囲 |
|---|---|---|
| v = v₀ + at | v:速度、v₀:初速度、a:加速度、t:時間 | 基礎 |
| x = v₀t + ½at² | x:変位 | 基礎 |
| v² − v₀² = 2ax | 時間を使わずに速度と変位を結ぶ | 基礎 |
| 自由落下:v = gt、y = ½gt² | g:重力加速度(約9.8 m/s²) | 基礎 |
1本目を積分すると2本目、1本目と2本目から t を消すと3本目です。覚えるのは v = v₀ + at だけで、残りは導けます。
力と運動
| 公式 | 記号の意味 | 範囲 |
|---|---|---|
| ma = F | m:質量、a:加速度、F:合力 | 基礎 |
| W = mg | W:重力、g:重力加速度 | 基礎 |
| 静止摩擦力の最大値 f₀ = μN、動摩擦力 f = μ′N | μ:静止摩擦係数、μ′:動摩擦係数、N:垂直抗力 | 基礎 |
| 弾性力 F = kx | k:ばね定数、x:自然長からの伸び | 基礎 |
| 圧力 p = F/S、浮力 F = ρVg | ρ:液体の密度、V:押しのけた体積 | 基礎 |
仕事とエネルギー
| 公式 | 記号の意味 | 範囲 |
|---|---|---|
| W = Fx cosθ | W:仕事、θ:力と移動方向のなす角 | 基礎 |
| 仕事率 P = W/t = Fv | P:仕事率(W) | 基礎 |
| 運動エネルギー K = ½mv² | 基礎 | |
| 重力による位置エネルギー U = mgh | h:基準からの高さ | 基礎 |
| 弾性力による位置エネルギー U = ½kx² | 基礎 | |
| 力学的エネルギー保存 K + U = 一定 | 保存力だけが仕事をするとき | 基礎 |
運動量・円運動・単振動・万有引力(物理)
| 公式 | 記号の意味 | 範囲 |
|---|---|---|
| 運動量 p = mv、力積 FΔt = Δ(mv) | p:運動量、FΔt:力積 | 物理 |
| 運動量保存 m₁v₁ + m₂v₂ = m₁v₁′ + m₂v₂′ | 外力がはたらかないとき | 物理 |
| 反発係数 e = −(v₁′ − v₂′)/(v₁ − v₂) | 0 ≤ e ≤ 1 | 物理 |
| 円運動 v = rω、a = rω² = v²/r、向心力 F = mrω² = mv²/r | ω:角速度、r:半径 | 物理 |
| 単振動 x = A sin ωt、a = −ω²x、周期 T = 2π/ω | A:振幅 | 物理 |
| ばね振り子 T = 2π√(m/k)、単振り子 T = 2π√(l/g) | l:糸の長さ | 物理 |
| 万有引力 F = G m₁m₂ / r²、位置エネルギー U = −G Mm / r | G:万有引力定数 | 物理 |
| ケプラーの第3法則 T² / a³ = 一定 | a:軌道長半径 | 物理 |
熱の公式一覧
| 公式 | 記号の意味 | 範囲 |
|---|---|---|
| 熱量 Q = mcΔT | c:比熱、m:質量、ΔT:温度変化 | 基礎 |
| 熱容量 C = mc、Q = CΔT | C:熱容量 | 基礎 |
| 絶対温度 T[K] = t[℃] + 273 | 基礎 | |
| ボイル・シャルルの法則 pV/T = 一定 | p:圧力、V:体積 | 物理 |
| 理想気体の状態方程式 pV = nRT | n:物質量、R:気体定数 | 物理 |
| 気体の内部エネルギー U = (3/2)nRT(単原子分子) | 物理 | |
| 熱力学第一法則 ΔU = Q + W | Q:気体が受け取った熱、W:気体がされた仕事 | 物理 |
| 定積モル比熱 Cᵥ = (3/2)R、定圧モル比熱 Cₚ = Cᵥ + R(単原子分子) | マイヤーの関係 | 物理 |
| 熱効率 e = W′/Q₁ = 1 − Q₂/Q₁ | Q₁:高温側から受け取る熱、Q₂:低温側へ捨てる熱 | 物理 |
教科書によって W を「気体がした仕事」と置き ΔU = Q − W と書く流儀があります。自分の教科書の定義に合わせて、符号を固定してください。
波の公式一覧
| 公式 | 記号の意味 | 範囲 |
|---|---|---|
| v = fλ、T = 1/f | v:速さ、f:振動数、λ:波長、T:周期 | 基礎 |
| 弦の固有振動 f = (n/2l)√(S/ρ) (n = 1, 2, …) | S:張力、ρ:線密度、l:弦の長さ | 基礎 |
| 閉管 f = (2n−1)v/4l、開管 f = nv/2l | 開口端補正は問題の指示に従う | 基礎 |
| 音速 V = 331.5 + 0.6t | t:気温(℃) | 基礎 |
| ドップラー効果 f′ = f (V − v₀)/(V − vₛ) | v₀:観測者、vₛ:音源(近づく向きを正) | 物理 |
| 屈折の法則 n₁₂ = sin i / sin r = v₁/v₂ = λ₁/λ₂ | n:屈折率、i:入射角、r:屈折角 | 物理 |
| レンズの式 1/a + 1/b = 1/f、倍率 m = |b/a| | a:物体距離、b:像距離、f:焦点距離 | 物理 |
| ヤングの実験 Δx = lλ/d | l:スリットから壁まで、d:スリット間隔 | 物理 |
電磁気の公式一覧
| 公式 | 記号の意味 | 範囲 |
|---|---|---|
| オームの法則 V = RI | V:電圧、R:抵抗、I:電流 | 基礎 |
| 抵抗率 R = ρl/S | ρ:抵抗率、l:長さ、S:断面積 | 基礎 |
| 電力 P = VI = I²R = V²/R、電力量 W = Pt | 基礎 | |
| 直列 R = R₁ + R₂、並列 1/R = 1/R₁ + 1/R₂ | 基礎 | |
| クーロンの法則 F = k q₁q₂ / r² | k:クーロン定数 | 物理 |
| 電場 E = F/q = kQ/r²、電位 V = kQ/r、V = Ed(一様な電場) | 物理 | |
| コンデンサー Q = CV、C = ε₀S/d、静電エネルギー U = ½CV² | ε₀:真空の誘電率 | 物理 |
| 合成容量 並列 C = C₁ + C₂、直列 1/C = 1/C₁ + 1/C₂ | 抵抗と逆 | 物理 |
| 直線電流の磁場 H = I/2πr、円形電流の中心 H = I/2r、ソレノイド H = nI | n:単位長さあたりの巻数 | 物理 |
| 電流が受ける力 F = IBl、ローレンツ力 f = qvB | B:磁束密度 | 物理 |
| 電磁誘導 V = −ΔΦ/Δt、導体棒の起電力 V = vBl | Φ:磁束 | 物理 |
| 交流の実効値 Vₑ = V₀/√2、リアクタンス ωL、1/ωC | 物理 |
原子の公式一覧

| 公式 | 記号の意味 | 範囲 |
|---|---|---|
| 光子のエネルギー E = hν = hc/λ | h:プランク定数、ν:振動数 | 物理 |
| 光電効果 K = hν − W | W:仕事関数、K:光電子の最大運動エネルギー | 物理 |
| ボーアの量子条件 2πr = nλ = nh/mv | 物理 | |
| 水素原子のエネルギー準位 Eₙ = −13.6/n² eV | 物理 | |
| 質量とエネルギー E = mc² | 物理 | |
| 半減期 N = N₀ (1/2)^(t/T) | T:半減期 | 物理 |
- 光子のエネルギー E = hν = hc/λ
- 光電効果 K = hν − W
- 水素原子のエネルギー準位 Eₙ = −13.6/n² eV
- 半減期 N = N₀ (1/2)^(t/T)
共通テスト物理(令和8年度)を、この表と同じ5分野に分けた得点率
上の公式一覧は、力学・熱・波・電磁気・原子の5分野に分けました。では、本番ではどの分野で点を落としているのか。大学入試センターが公表している「設問別得点率及び正答率」(令和8年度 本試験・物理、受験者145,203人)を、問題冊子で各設問の内容を確かめたうえで、5分野に振り分けて集計しました。
センターの資料は大問ごと・解答番号ごとの平均点で、分野別の得点率は公表されていません。下の表は当サイトが解答番号を分野に振り分けて足し合わせた計算値です。
| 分野 | 入っていた設問(令和8年度) | 配点の合計(計算) | 平均点の合計(計算) | 得点率(計算) |
|---|---|---|---|---|
| 力学 | 第1問 問3(バスの中の風船)、第2問(衝突) | 30点 | 16.118点 | 53.7% |
| 熱 | 第1問 問5(気体分子)、第3問A(気体のサイクル) | 18点 | 8.248点 | 45.8% |
| 波 | 第1問 問1(ドップラー効果)、第3問B(波の干渉) | 17点 | 8.170点 | 48.1% |
| 電磁気 | 第1問 問2(回路素子)、第4問(電場・磁場中の荷電粒子) | 30点 | 10.152点 | 33.8% |
| 原子 | 第1問 問4(光子のエネルギーと運動量) | 5点 | 2.867点 | 57.3% |

計算
- 力学:第1問 問3 の2.672点+第2問の13.446点=16.118点。16.118 ÷ 30 = 53.7%
- 熱:第1問 問5 の0.625点+第3問A(解答番号12〜14)の2.484+2.999+2.140=8.248点。8.248 ÷ 18 = 45.8%
- 波:第1問 問1 の2.993点+第3問B(解答番号15〜17)の1.405+1.430+2.342=8.170点。8.170 ÷ 17 = 48.1%
- 電磁気:第1問 問2 の1.391+1.263=2.654点+第4問の7.498点=10.152点。10.152 ÷ 30 = 33.8%
- 検算:16.118+8.248+8.170+10.152+2.867=45.555点。センターの公表する物理の平均点45.55点と一致します(配点の合計も 30+18+17+30+5=100点)
令和8年度は、電磁気の得点率が33.8%で5分野の中で最も低く、力学より約20ポイント低い結果でした(53.7 − 33.8 = 19.9ポイント)。第4問(電場と磁場の中の荷電粒子)は5問すべてが5点で、うち2問は得点率が20%を下回っています。
公式1本で解ける問題でも、得点率は半分
第3問A 問1 は、単原子分子の理想気体を圧力10p₀のまま、体積V₀から10V₀に膨らませたときに加えた熱量を答える問題でした。上の熱の表にある「定圧モル比熱 Cₚ = (5/2)R」と「pV = nRT」の2本で解けます。
- 圧力が一定なので、nRΔT = pΔV = 10p₀ × (10V₀ − V₀) = 90p₀V₀
- Q = nCₚΔT = (5/2) × nRΔT = (5/2) × 90p₀V₀ = 225p₀V₀
- 正解の選択肢は 225(センターの正解表で解答番号12の正解⑤)。この設問の得点率は 2.484 ÷ 5 = 49.7%(計算)
使う公式は一覧の表に載っている2本だけです。それでも正解は約半分でした。「定積モル比熱 Cᵥ = (3/2)R」を使ってしまうと 135p₀V₀ になり、これも選択肢に入っています。公式を覚えているかではなく、どの条件のときにどちらを使うかで差がついた問題です。
- 物理基礎だけを受ける場合。物理基礎は別の科目(令和8年度の平均点は50点満点で34.68点)で、出る範囲も問題も違う
- 1年分だけで苦手分野を決める場合。第1問の小問は1問5点なので、原子のように1問しかない分野は、その1問の出来で得点率が大きく動く
- 二次試験の記述問題の対策を決める場合。マーク式の得点率で、途中式を書く問題の出来は分からない
- 分野の振り分けは当サイトの判断。たとえば第1問 問3(バスの中の風船)は慣性力と浮力の問題として力学に入れた
出典:大学入試センター「令和8年度 設問別得点率及び正答率(本試験)」(CSV)/同「令和8年度 本試験の問題 物理」(PDF)/同「物理 正解」(PDF)(2026年10月14日確認)
公式を「覚えたのに解けない」ときの原因
| 原因 | 対処 |
|---|---|
| 条件を確認せずに使っている | 力学的エネルギー保存は「保存力のみ」、運動量保存は「外力なし」。表の右列を見る |
| 符号や向きを決めていない | 正の向きを最初に図へ書く。ドップラーと第一法則は符号で落ちる |
| 単位を換算していない | cm→m、g→kg、℃→K を式に入れる前に直す |

塾で見ていると、公式を知らなくて解けない子はほとんどいません。落ちるのは条件と符号です。公式集は「何を覚えるか」より「いつ使えるか」を読む道具にしてください。
- 条件未確認:エネルギー保存は保存力のみ、運動量保存は外力なしを確認
- 符号や向きを先に図へ書く(ドップラー・第一法則で失点しやすい)
- 単位換算忘れ:cm→m、g→kg、℃→Kを式に入れる前に直す
- 公式は「いつ使えるか」を読む道具にする
公式の次にやること
公式が使える状態になったら、無料で演習できるサイトを分野別にまとめています。

よくある質問
- 物理基礎と物理で、覚える公式はどう違いますか?
-
各表の「基礎」印が物理基礎の範囲です。物理基礎は等加速度運動・力と運動・仕事とエネルギー・熱量・波の基本・オームの法則が中心で、運動量・円運動・電場・原子は「物理」の範囲です。
- 公式は結局いくつ覚えればいいですか?
-
分野ごとの「元になる1本」(5本)と、そこから導きにくいもの(ばね振り子の周期、ドップラー、レンズの式など)を合わせて20本前後です。残りは導出できるようにするほうが早いです。
- 公式を覚えても計算が合いません
-
単位と符号を疑ってください。cmをmに直していない、正の向きを決めていない。この2つで計算ミスの大半が説明できます。1回の計算ミスが共通テストで何点にあたるかは、数学ⅠAの配点で数えた「受験数学の計算ミスを減らす方法」の記事にあります。

この記事で確認した資料
物理基礎と物理の範囲の区分は、文部科学省の高等学校学習指導要領(平成30年告示)の理科の項目に基づいています。公式の標準形は教科書の表記に合わせ、他サイトの公式一覧と突き合わせて確認しました(2026年9月6日)。
文部科学省「平成29・30・31年改訂学習指導要領(本文、解説)」
高校物理をあきらめる前に「物理基礎/物理 公式一覧」(公式の表記の突き合わせに使用)

