埼玉県の私立高校(全日制)は、授業料の支援が国の年457,200円のままで、県の上乗せがありません。県が支えるのは、世帯の年収に応じて「施設費等納付金」と「入学金」です。
東京都や大阪府のように授業料そのものを県が引き上げる仕組みではないため、同じ「無償化」でも、残る費用の中身がまったく違います。
県の公式資料(令和8年度の父母負担軽減事業補助金のリーフレット・世帯年収の目安表・試算表)と、県が公表した私立全日制高校の初年度納付金の一覧を2026年10月5日に開いて確認しました。
この記事は、県の一覧にある学校ごとの授業料・施設費等・入学金と補助の上限を突き合わせ、県内の学校でいくら残るかを計算しています。
- 授業料は国の年457,200円まで。県の上乗せは公式の図にない
- 県の補助は年収で3区分。対象は施設費等と入学金
- 県平均の学校で基準①の1年目の自己負担は16,885円(計算)
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①授業料は国の年457,200円まで。県の補助は施設費等納付金と入学金(授業料への県の上乗せは公式の図に示されていない)/②県の補助は年収で3区分。基準①(目安年収約500万円未満)は施設費等を年200,000円、入学金を223,000円まで、基準②(約609万円未満)は入学金を100,000円まで/③県の一覧(50行)では、授業料が457,200円以下の行が41、超える行が9。基準①なら授業料と施設費等の自己負担が2年目以降ゼロになる行は24/④県平均の学校で、基準①は1年目の自己負担が授業料・施設費等・入学金あわせて16,885円(計算)、基準②は339,885円(計算)、補助のない世帯は439,885円(計算)/⑤申請は学校経由。国の就学支援金の申請が原則必要

県のリーフレットは、表中の補助額を「補助の上限額」と書いています。学校が決める授業料などによって、実際の補助額は表と違う場合があります。
県の制度の中身:父母負担軽減事業補助金の3つの区分
埼玉県の「父母負担軽減事業補助金」は、生徒と保護者がともに埼玉県内に住み、県内の私立全日制高校に通い、所得基準を満たす場合に受けられます。
対象になる学費は、授業料、施設費等納付金、入学金です。区分と上限額は、県のリーフレットの図で次のように示されています。
| 区分(目安年収) | 県の補助の内容 | 1年生の上限合計(国込み) | 2・3年生の上限合計 |
|---|---|---|---|
| 生活保護・家計急変 | 授業料・施設費等納付金は「全額」、入学金は223,000円まで(図) | 合計欄は斜線で金額なし | 同左 |
| 基準①(約500万円未満) | 施設費等納付金200,000円、入学金223,000円 | 880,200円 | 657,200円 |
| 基準②(約609万円未満) | 入学金100,000円 | 557,200円 | 457,200円 |
| 国の補助のみ(判定額162,300円以上) | なし | 457,200円 | 457,200円 |
基準①の1年生の合計880,200円は、国の就学支援金457,200円、施設費等納付金の補助200,000円、入学金の補助223,000円を足した額です(計算:457,200円+200,000円+223,000円)。
2・3年生は入学金がないので657,200円です。授業料の欄は、どの区分でも国の457,200円で、県の上乗せは図に示されていません。
判定額が162,300円以上でも、国の就学支援金は対象です。
年収の目安は、両親・高校生・中学生の4人家族で、両親の一方が働いている世帯をモデルにした数字です。県の審査は年収ではなく、市町村民税の課税標準額をもとにした「判定額」で行います。
県の初年度納付金一覧で見る:補助の上限は、学校の額に届くのか
県は、令和8年度の私立全日制高校の初年度納付金を学校別に公表しています(令和7年12月1日現在、50行)。学科やコースが分かれている学校は別の行です。
県が示した平均は、入学金236,667円、授業料437,213円、施設費等203,218円、計877,098円でした。
| 項目 | 県平均(公式) | 一覧の最低〜最高 | 県の補助の上限(基準①/基準②) |
|---|---|---|---|
| 入学金 | 236,667円 | 100,000円〜340,000円 | 223,000円/100,000円 |
| 授業料 | 437,213円 | 288,000円〜830,000円 | 国の457,200円(県の上乗せなし) |
| 施設費等 | 203,218円 | 48,000円〜442,000円 | 200,000円/補助なし |
この一覧の行を数えると、授業料が457,200円以下の行は41で、国の就学支援金だけで授業料が全額まかなえます。
授業料が457,200円を超える行は9で、超えた分が自己負担です。施設費等が200,000円以下の行は27、入学金が223,000円以下の行は15です。
基準①の世帯で、授業料の超過分と施設費等の超過分がともにゼロになる(2年目以降の授業料と施設費等の自己負担がなくなる)のは、50行のうち24行です。
施設費等は、県の一覧の列名です。県の補助の対象は「施設費等納付金」と書かれていますが、一覧の「施設費等」が補助の対象費目とすべて一致するかは、学校の募集要項か県のヘルプデスクで確認してください。
年収別の実質負担:県内の実在の学費の組み合わせで計算
県の一覧にある実在の金額の組み合わせから、3つの学校像を選び、基準①・基準②・補助なしの世帯の自己負担を計算しました。
1つめは県平均の額、2つめは授業料48万円(施設費等48,000円・入学金250,000円)、3つめは授業料62万4,000円(施設費等378,000円・入学金300,000円)で、後ろの2つは一覧に同じ金額の組み合わせがあります。
制服・教材・通学費などは含めていません。
| 世帯と学校 | 授業料+施設費等の自己負担(2年目以降・年額・計算) | 入学金の自己負担(1年目・計算) | 1年目の合計(計算) |
|---|---|---|---|
| 基準①(年収目安400万円)・県平均の学校 | 3,218円 | 13,667円 | 16,885円 |
| 基準①(年収目安400万円)・授業料48万円の学校 | 22,800円 | 27,000円 | 49,800円 |
| 基準①(年収目安400万円)・授業料62万4,000円の学校 | 344,800円 | 77,000円 | 421,800円 |
| 基準②(年収目安550万円)・県平均の学校 | 203,218円 | 136,667円 | 339,885円 |
| 基準②(年収目安550万円)・授業料48万円の学校 | 70,800円 | 150,000円 | 220,800円 |
| 基準②(年収目安550万円)・授業料62万4,000円の学校 | 544,800円 | 200,000円 | 744,800円 |
| 対象外(年収目安650万円)・県平均の学校 | 203,218円 | 236,667円 | 439,885円 |
| 対象外(年収目安650万円)・授業料48万円の学校 | 70,800円 | 250,000円 | 320,800円 |
| 対象外(年収目安650万円)・授業料62万4,000円の学校 | 544,800円 | 300,000円 | 844,800円 |

県平均の学校で見ると、基準①の世帯は、授業料も施設費等もほぼ補助の上限に収まり、2年目以降の自己負担は3,218円(施設費等203,218円−補助の上限200,000円)です。
入学金は236,667円のうち223,000円が補助され、13,667円が残ります。
同じ学校でも基準②では施設費等の補助がなく、2年目以降は203,218円が毎年かかります。授業料が48万円の学校は、授業料の超過22,800円が全区分で残ります。
授業料62万4,000円・施設費等378,000円の学校は、基準①でも2年目以降に344,800円が残る計算です。
区分は年収の少しの差で変わります。
基準①と基準②の境目(目安年収約500万円)をまたぐと、県平均の学校で、2年目以降の自己負担が3,218円から203,218円に変わります。
境目付近の世帯は、判定額を県の試算表で確認してください。

判定額の読み方:年収の目安は世帯の形で変わる
所得要件の判定額は、「(市町村民税の)課税標準の額×0.06−(市町村民税の)調整控除の額」で計算します。保護者が2人いる場合は合算です。
基準①は判定額が113,700円未満、基準②は113,700円以上162,300円未満です。
基準①は扶養親族数で金額が変わり、たとえば16歳以上19歳未満を2人、16歳未満を2人扶養している場合は、判定額が150,600円未満なら基準①です。
政令指定都市で市民税を課税されている場合は、調整控除の額に4分の3を掛けます。
県の世帯年収の目安表は、世帯の形で目安年収が変わることを示しています。同じ区分でも、共働きや自営業では年収の目安が違います。
次の表は、県の目安表(日本国籍の生徒用)から、子が2人の世帯を抜き出したものです。
| 世帯の形(子2人) | 基準①の目安 | 基準②の目安 |
|---|---|---|
| 一方が働く・高校生と中学生以下 | 約500万円まで | 約609万円まで |
| 一方が働く・高校生2人 | 約550万円まで | 約660万円まで |
| 両親共働き・高校生と中学生以下 | 約550万円まで | 約690万円まで |
| 自営業・高校生と中学生以下(所得金額の目安) | 約340万円まで | 約420万円まで |
自営業の表は年収ではなく、確定申告書の「所得金額」の目安です。
県は、収入の申告をしていないと審査に必要な地方税の情報を確認できないため、確定申告が必要な方や、勤務先で年末調整をしていない方は、申請前に申告を済ませるよう求めています。
課税標準額と調整控除額は、課税証明書のほか、マイナポータルや、給与所得だけなら勤務先から配られる住民税の特別徴収税額決定通知書でも確認できます。
県のホームページには、判定額を試算できるExcelファイル(補助額試算表(日本国籍の生徒用))があります。県は、この試算表で実際の補助額の審査を行うものではないと注意しています。
授業料以外に残る費用:県の制度で埋まる部分と、残る部分
県の補助が入る施設費等と入学金を除くと、残るのは制服、教材、通学、修学旅行、部活などです。
文部科学省の調査では、私立全日制の通学関係費が年136,790円、修学旅行費等が62,778円(全国の平均)でした。
埼玉県の初年度納付金の県平均は877,098円で、入学金・授業料・施設費等の合計です。ここから補助の上限を引いた額が、納付金の自己負担の目安になります。
授業料以外の教育費を直接支える県の制度が「奨学のための給付金」です。
県のリーフレットでは、生活保護(生業扶助)の世帯、非課税世帯、年収約270〜約490万円相当の世帯が対象で、申請時期は例年7月頃とされています。
県が市町村民税の所得割額で判定し、申請は在籍する学校を通じて行います。金額は親記事の高校生等奨学給付金の説明を参照してください。
入学金の補助は月割りされません。
年度途中で転退学や県外転居があった場合、授業料と施設費等の補助は、その学校に在籍し県内に住んでいた月数分で月割りになりますが、入学金補助は月割りされません。
県のリーフレットのQ&Aがこの点を明記しています。

申請の窓口と時期:すべて学校経由・国の申請が前提
補助金の申請も、生徒・保護者への交付も、すべて学校を通します。
県のリーフレットの手続きの流れは、①学校が申請書と申請時期を案内、②生徒・保護者が市区町村で住民票などを取得、③学校へ申請書を提出、④学校が県へ申請して審査、⑤県が学校へ結果を通知して補助金を交付、⑥学校が補助対象者に通知を配って授業料等を軽減、です。
この補助金の申請には、国の就学支援金の申請が原則必要です。
| 提出書類 | 内容 | 対象世帯 |
|---|---|---|
| 各学校所定の書類 | 授業料軽減申請書など | 全世帯 |
| 世帯全員の住民票の写し | 続柄の記載があり、令和8年4月以降に発行され、マイナンバーの記載がないもの | 全世帯 |
| 個人番号カード(写)等貼付台紙 | 保護者全員の個人番号が確認できるもの(令和8年度から) | 生活保護・家計急変世帯を除く |
| 生活保護受給証明書 | 令和8年4月以降に発行されたもの | 生活保護世帯 |
補助金は県から学校へ交付され、学校から生徒・保護者に支給されます。方法は主に2通りです。
決まった補助額の分の授業料等をご家庭に返す「還付」と、未納または将来分の授業料等に充てる「相殺」で、時期と方法は学校ごとに違います。
家計急変世帯(失職、死亡、離婚、被災)は、補助を受けられる場合があるので、学校に相談します。
保護者が単身赴任などで県外に住んでいても、介護や長期入院を含めて例外的に対象となる場合があります。
問い合わせは、申請に関することは各学校、制度全般は県総務部学事課の「学費軽減ヘルプデスク」(048-830-2725、平日8時30分〜17時15分)です。
よくある質問
- 埼玉県の私立高校は、授業料が無償になりますか?
-
授業料の支援は国の年457,200円までです。県の補助は施設費等納付金と入学金で、県の授業料の上乗せは公式の図に示されていません。県の一覧では、授業料が457,200円以下の行が50行のうち41あります。授業料がこれを超える学校では、超えた分が自己負担です。
- 年収が約500万円を少し超えたら、どうなりますか?
-
基準①から基準②に変わり、施設費等納付金の補助(年200,000円)がなくなり、入学金の補助も223,000円から100,000円に下がります。県平均の額で計算すると、2年目以降の自己負担が3,218円から203,218円に変わります。実際の判定は年収ではなく判定額で行われます。
- 補助はいつ、どのようにもらえますか?
-
県から学校に交付され、学校が還付(家庭に返す)か相殺(授業料等に充てる)のどちらかで支給します。時期と方法は学校ごとに違うので、学校の案内を確認してください。
- 保護者が県外にいる場合は対象ですか?
-
補助の要件は、生徒・保護者がともに県内に在住していることです。単身赴任(海外を含む)や介護・長期入院の場合は、例外的に対象になる場合があります。
- 国の就学支援金の申請をしていなくても、県の補助だけ受けられますか?
-
県の補助金の申請には、国の就学支援金の申請が原則必要と県のリーフレットに書かれています。先に国の申請を済ませてください。
- 入学金の補助は、年度の途中で退学しても返しますか?
-
リーフレットのQ&Aでは、授業料などの補助は在籍した月数分の月割りになりますが、入学金補助は月割りされないと書かれています。個別の扱いは学校に確認してください。
この記事の作り方と、確認した資料
補助の区分・金額・手続きは、県のリーフレット(図の金額は画像を開いて読み取り)と、県の世帯年収の目安表、試算表のExcelの内容で確認しました。
初年度納付金は、県が公表したPDFの表から50行を読み取り、県平均と照合しています(県平均は公式の数字をそのまま使い、行の数え方は記事のなかで示した条件によります)。
計算例の数字は、親記事の計算ツールと同じ計算を実行し、別に行った手計算と一致することを確かめました。学校名は出していません。
制度は変わるため、申し込む前に学校と県の最新の案内で確認してください。確認日は2026年10月5日です。
私立高校の実質負担 計算ツール(親記事)で、埼玉県と年収の目安を選んで試せます。


確認した資料(2026年10月5日):
・令和8年度 埼玉県父母負担軽減事業補助金のお知らせ(県内私立全日制高等学校用・PDF):区分、上限額、手続き、Q&A
・私立学校の父母負担軽減について(令和8年度)|埼玉県:対象学費、窓口
・補助金の対象となる世帯の目安年収(日本国籍の生徒用・PDF):世帯の形ごとの目安
・補助額試算表(日本国籍の生徒用・Excel):判定額の試算
・私立高等学校等の初年度納付金|埼玉県:一覧の案内
・令和8年度私立高等学校の初年度納付金の状況(PDF):学校別の入学金・授業料・施設費等と県平均
・高等学校等就学支援金・新制度の概要(文部科学省・PDF):国の支給上限額
・令和5年度子供の学習費調査の結果(文部科学省・PDF):授業料以外の費用の全国平均


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