塾の体験授業で見るべきなのは授業の分かりやすさではありません。分かりやすい授業は誰でも作れるからです。この記事では塾長が実際に見ている3つのチェックポイントと、保護者も一緒に行くべきか、そして入らないと決めたときの断り方の例文まで、当日の順に沿ってまとめます。

塾の体験授業に行くことになりました。でも、当日どこを見ればいいのか分かりません。子どもに聞いても「普通だった」しか返ってこなくて…。

「普通だった」しか返ってこないのは、何を見ればいいか伝えずに送り出しているからです。逆に言えば、見るポイントを3つだけ決めて送り出せば、はっきりした答えが返ってきます。
塾の体験授業は、公式サイトを見た範囲では無料が中心です。ただし中身は塾によって別物です。1回50分で終わる塾もあれば、最大1ヶ月受けられる塾もあります(実物は後述の表にまとめました)。それでもほとんどの家庭が「なんとなく良さそう」で判断してしまうのがもったいないところです。
この記事では、体験当日に見るべき3つのポイントと、体験では絶対に分からないこと、そして子どもへの聞き方を整理します。塾側の視点から、正直に書きます。
【結論】見るのは「授業の分かりやすさ」ではありません
- ①分からないと言えたか…これが最重要。言えない環境では、何ヶ月通っても伸びません
- ②その日、何ができるようになったか…帰り道に本人が言えるかどうか。言えないなら「聞いただけ」の授業です
- ③次に何をやるかが決まったか…宿題の内容と量が具体的に示されたか。ここが曖昧な塾は、通っても管理されません
「授業が分かりやすかったか」は、実はあまり参考になりません。体験授業は、どの塾でもいちばん上手い講師が担当することが多いからです。入塾後に同じ講師が担当するとは限りません。
ポイント①:「分からない」と言えたか
成績が伸びるかどうかは、この一点でほぼ決まります。分からないことを分からないと言えない子は、どんな良い授業を受けても伸びません。
体験の日に一度も質問しなかった場合、理由は2つあります。「本当に全部分かった」か、「聞ける雰囲気ではなかった」かです。前者なら問題ありませんが、後者なら入塾後も同じことが続きます。
ポイント②:その日、何ができるようになったか
帰り道に「今日は何ができるようになった?」と聞いてみてください。具体的に答えられるかどうかが、その授業の質を示します。
「一次関数のグラフの書き方が分かった」と言えるなら良い授業です。「説明を聞いた」「問題を解いた」しか出てこないなら、受け身のまま終わっている可能性があります。
塾側の視点で言うと、体験授業は「分かった気にさせる」ことができてしまいます。丁寧に説明されれば、その場では理解した気になる。ですが自分で解けるようになったかは別です。体験の中で本人に解かせる時間があったかどうかも、あわせて確認してください。
ポイント③:次に何をやるかが決まったか
体験の終わりに、宿題や次回の内容が具体的に示されたかを確認してください。「じゃあ次回までにここをやっておいてね」と範囲が明示されるかどうかです。
ここが曖昧な塾は、入塾後も同じです。塾に通う時間だけでは足りず、成績は家でやる量で決まります。その家での量を管理してくれるかどうかが、塾ごとにいちばん差が出るところです。

「宿題は出しません」を売りにしている塾もあります。これは悪いことではなく、指導時間内で完結させる設計という意味です。ただしその場合は「授業時間内でどこまでやるか」が明示されているかを確認してください。
体験では分からないこと
正直に書きます。体験授業で分かることには限界があります。以下は体験だけでは判断できないので、面談や問い合わせで直接聞くしかありません。
| 分からないこと | 確認方法 |
|---|---|
| 入塾後の担当講師 | 「体験の先生が担当になりますか」と直接聞く。変わる場合は誰になるかまで確認 |
| 普段の教室の雰囲気 | 体験日は静かなことが多い。通常授業の時間帯に見学できるか聞く |
| 講師が替わる頻度 | 「基本は固定です」で終わらせず「その基本から外れるのはどんなときか」まで聞く。個別指導塾WAMは定期講習時は別の講師が担当する場合があると公式に明記している |
| 実際にかかる総額 | 月謝以外に教材費・季節講習・管理費が乗ります。年間総額で聞く |
とくに最後の費用は、体験の場では話が出ないことがあります。年間でいくらになるかは、必ず入塾前に確認してください。

体験に申し込む前に、候補を2〜3社まで絞っておくと比較になります。5社も受けると、どこがどうだったか分からなくなります。

新しい塾を体験する前に、いまの塾を辞める理由を言葉にしておいてください。それが体験で確認すべき項目そのものになります。

体験の中身は塾によって別物です
「体験授業」と一言で呼びますが、受けられる回数と時間は塾によって桁が違います。各塾の公式サイトに書いてある実物を並べると、こうなります。
| 塾 | 公式サイトに書かれている体験の中身 |
|---|---|
| 東京個別指導学院 | 1回・50分を無料。事前に10〜20分の相談があり、そこで体験する教科・単元・担当の先生を決める。「入塾をその場で決める必要はありません」 |
| 明光義塾 | 90分を無料(教室・学年で前後)。授業前カウンセリング10〜20分と学習プランの案内10〜20分が付く。ただし「教室によっては、一部無料体験授業を行っていない教室もあります」 |
| 森塾 | 最大1ヶ月の無料体験。春・夏・冬の講習期間の無料体験もある。入塾後も4回目の授業までなら全額返金保証 |
| そら塾(オンライン) | 最大5回の授業を無料。申し込みから最短3日後に受けられる |
| 個別教室のトライ | 入会前に体験授業を受けられるのは個別教室とオンライン個別指導塾。家庭教師のほうは体験ではなく学習面談という扱い |
| 栄光ゼミナール | 「はじめての方はご希望の教科を無料で体験できます」 |
1回50分と最大1ヶ月では、見えるものが変わります。50分で分かるのは、この記事の①「分からないと言えたか」と②「何ができるようになったか」まで。③の「次に何をやるか」は、その場の言葉としては出ても、本当に管理されるかどうかまでは分かりません。
逆に何週間か通える体験なら、ひとつ前の表に挙げた「体験では分からないこと」のうち、普段の教室の雰囲気と担当講師が固定かどうかまで確かめられます。期間の長い体験を用意している塾は、単に太っ腹なのではなく、そこを見られても平気だという意思表示でもあります。

とはいえ、短い体験しかない塾が悪いわけではありません。効くのは長さより事前の相談があるかどうかです。東京個別指導学院のように「事前に10〜20分話して、体験でやる単元を決める」形なら、50分でも狙ったところを見られます。何も聞かれずに当日いきなり授業だけ、という塾は、入ってからの組み立ても同じになりがちです。
- その教室で無料体験をやっているか…明光義塾は公式に「教室によっては、一部無料体験授業を行っていない教室もあります」と書いています。看板が同じでも教室で運用が違います
- 何分を何回受けられるか…1回50分なのか、最大1ヶ月なのかで、比べられるものが変わります。2校を比べるなら、この条件をそろえてから比べてください
体験は何校受けるべきか
2校が現実的です。1校だけだと比べる基準がなく、「こんなものか」で決めてしまいます。かといって3校以上になると、子どもが疲れて判断が雑になります。
おすすめはタイプの違う2校を受けることです。集団と個別、あるいは対面とオンライン。同じタイプで2校比べても違いが分かりにくく、判断材料になりません。

候補を絞る段階なら、料金と特徴を一覧で比較できる記事も用意しています。体験を申し込む前に、タイプの当たりをつけておくと効率的です。

なお、比較対象が1校もない状態で体験に行くと、良し悪しの判断がつきません。最初の1校は「基準」として受けると考えてください。教室数が最も多い個別指導の明光義塾
の無料体験は通塾型の個別指導の標準的な形(90分+前後のカウンセリング)なので、ここを基準にすると、2校目以降で「何が違うのか」が見えやすくなります。ただし公式に「教室によっては、一部無料体験授業を行っていない教室もあります」と書かれているので、申し込む前にその教室で実施しているかを確認してください。
体験のあと、申し込む段階で必ず週何回にするかを聞かれます。提案は多めに出るのが普通なので、判断の基準を先に持っておいてください。

体験の日は自習室も見せてもらってください。「自習室完備」と書いてあっても、質問できる先生がいるかどうかで価値がまったく変わります。

塾によっては体験の前後に入塾テストがあります。落ちるのではと身構える方が多いのですが、私が見ている範囲では「どこから始めるか」を決める測定であることがほとんどです。とはいえ扱いは塾によって違うので、申し込むときに「結果によって受け入れの可否が変わりますか」と一言聞けば済みます。

体験先を選ぶ前に、集団か個別かだけは先に決めておいてください。形態が違うと、体験で見るべき点も変わります。

保護者も一緒に行くべきか
行ってください。ただし授業は見なくて構いません。保護者が見るべきものは教室の中ではなく、授業の前後にあるからです。

子どもだけで行かせると、帰ってくる情報が「普通だった」で終わります。本人が判断できないのではなく、比べたことがないので言語化できないだけです。保護者が同じ日に別のものを見ておけば、家で照らし合わせられます。
| 見るもの | 具体的に |
|---|---|
| 教室に入る前の5分 | 自習席が埋まっているか。通っている生徒の学年。掲示物が今年のものか |
| 面談での答え方 | 「うちの子はどこでつまずいていましたか」に単元名で答えられるか |
| 帰り際の一言 | 次に何をやるかを本人に伝えているか。保護者にだけ話す教室は要注意 |
面談で必ず聞いてほしいのは「担当は固定ですか」と「成績が上がらなかったとき何をしてくれますか」の2つです。ここに具体的な答えが返ってくるかどうかで、あとの満足度がほぼ決まります。
仕事などでどうしても同行できない場合は、帰ってきたら3つだけ聞いてください。「分からないって言えた?」「今日できるようになったことは?」「次に何やるって言われた?」。この記事の3つのポイントと同じ質問です。
断るときの伝え方(そのまま使えます)
体験を受けたら入らなければいけない、ということはありません。塾側は断られ慣れています。断りにくく感じるのは、もっともらしい理由を作ろうとするからです。理由は要りません。
- 連絡はする…放置がいちばん気まずくなります。電話が苦手ならメールでも問題ありません
- 理由は具体的に言わない…「他と比べて」で十分。詳しく言うほど引き止めの材料になります
- 期限を切る…「今週中に決めます」と自分から言うと、催促の電話が止まります
そのまま使える3つの例文
① 他の塾に決めた場合
「先日は体験授業をありがとうございました。家族で相談した結果、今回は別のところにお願いすることになりました。丁寧に見ていただいたのに申し訳ありません。ありがとうございました。」
② まだ決めきれない・見送る場合
「先日はありがとうございました。本人ともう一度話したところ、今の時期は部活を優先させたいという結論になりました。時期を見て、またご相談させてください。」
③ 通信教育や家庭教師にした場合
「体験ではお世話になりました。相談の結果、まずは家庭で進める形を試すことにしました。うまくいかなかったときは、あらためてお願いするかもしれません。ありがとうございました。」
②と③のように「またお願いするかもしれない」を一言添えると、双方が気持ちよく終わります。実際、半年後に戻ってくる家庭は珍しくありません。

受ける側から言うと、断りの連絡をもらえるほうがありがたいです。返事が来ないと、こちらは何度か電話をかけることになります。ひと言もらえれば、そこで終わります。
電話・メールのどちらでも構いませんが、体験から1週間以内にしてください。それを過ぎると、向こうから確認の連絡が入ります。
よくある質問
体験に行くと、断りにくくなりませんか?
塾側としては、合わない子に入ってもらうほうが困ります。1年通って「意味がなかった」と言われるのが、いちばん避けたい結末だからです。「他も見てから決めます」で構いません。それで態度が変わる塾なら、その時点で候補から外せます。
親も同席したほうがいいですか?
授業自体は本人だけのほうが自然な様子が見えます。親は前後の面談に入るのが現実的です。同席すると、子どもが親を意識して質問しなくなることがあります。ポイント①(分からないと言えるか)を見るなら、いないほうが正確に分かります。
子どもが「楽しかった」と言えば合っているということですか?
半分は当たっています。抵抗感が下がっているのは良い状態です。ただし「楽しい」は先生と話すのが楽しいという意味であることが少なくありません。成績が目的なら、あわせて「何ができるようになった?」を聞いてください。両方に答えられるなら、かなり良い体験です。
オンライン塾でも体験は受けられますか?
受けられます。ただし全部ではありません。そら塾は公式サイトで最大5回の授業を無料、申し込みから最短3日後に受けられると案内しています。一方トライは、入会前に体験授業を受けられるのが個別教室とオンライン個別指導塾で、家庭教師は学習面談という扱いです。オンラインの場合は上の3点に加えて、通信の安定性と、画面越しで質問できるかを確認してください。対面より質問のハードルが上がるので、ポイント①がより重要になります。
1校目に明光義塾を選ぶ人は多いのですが、同じ看板でも教室ごとに運用が違います。何を聞けば教室を見極められるかは別記事にまとめました。

まとめ
体験授業で見るべきなのは、授業の上手さではありません。①分からないと言えたか ②何ができるようになったか ③次に何をやるかが決まったか——この3つです。
そして体験では分からないことがあります。担当講師・普段の雰囲気・年間の総額。この3つは、その場で直接聞いてください。聞きにくいことを聞いても態度が変わらない塾なら、通ってからも安心です。
タイプの違う2校を比べれば、判断はかなり正確になります。1校で決めないでください。


春期講習を体験代わりに使う方法もあります。時期の逆算はこちらです。



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