塾の掛け持ちが機能するかどうかは、今の塾の宿題が回っているかだけで決まります。
この記事では有効な3つのパターンと、やめたほうがいいケース、費用が足し算になる点を整理します。
塾を2つ掛け持ちしたときの勉強時間別の正答率(中3・令和8年度)は、「塾選びで後悔した失敗談5つ」で国の調査から確かめています。

今の集団塾は続けたいのですが、数学だけどうしても分からないようで。個別指導も追加したほうがいいでしょうか。

掛け持ちが機能するかは、今の塾の宿題が回っているかどうかで決まります。回っていない状態で足すと、両方とも消化不良になって、かえって成績が下がります。
「集団塾+個別指導」「塾+通信教育」「塾+家庭教師」といった塾の掛け持ちは、成績が伸び悩んだときに真っ先に思いつく選択肢です。
ただし費用は単純に足し算になるうえ、失敗するパターンもはっきりしています。この記事では掛け持ちが有効な条件と、やめたほうがいいケースを分けて整理します。
【結論】判断は「今の宿題が回っているか」だけ
- 今の塾の宿題が終わっている…余力がある状態。1科目だけ足すなら機能します
- 宿題が溜まっている…足しても消化不良になるだけ。まず今の塾を見直すのが先です
- 足すのは1科目まで…2科目以上足すなら、それは掛け持ちではなく「塾を変える」判断です
成績は塾にいる時間ではなく、家でやる量で決まります。授業を増やしても、それを消化する時間が増えるわけではありません。ここを取り違えると、お金だけが増えて結果が変わらないという状態になります。
なお、「宿題が回っていない」と分かった場合に何をするかは、量・やり方・理解のどれが原因かで変わります。切り分ける手順は別記事にまとめました。

掛け持ちが機能する3つのパターン
| 組み合わせ | 向いている状況 |
|---|---|
| 集団塾+個別指導(1科目) | 他は問題ないのに1科目だけ崩れている。いちばん多く、いちばん機能しやすい形 |
| 塾+映像授業 | 高校生で科目数が多い場合。全科目を塾で見ると費用が跳ね上がるため、補助として使う |
| 塾+短期の家庭教師 | テスト前だけ、特定単元だけ、と期間を区切って使う |
共通しているのは、足すほうの役割がはっきり限定されていることです。「なんとなく不安だから両方」は失敗します。

3つめの「塾+短期の家庭教師」は、期間と目的を区切りやすいので、掛け持ちのなかでは失敗が少ない形です。
オンラインなら移動時間がかからないぶん、テスト前の数週間だけという使い方もできます。
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のように体験時間が長いところであれば、1回で「この先生と進められそうか」まで判断がつきます。
- 集団塾+個別指導で1科目だけ補強
- 塾+映像授業で科目数の多さに対応
- 塾+短期の家庭教師でテスト前だけ補強
- 足す役割が限定されているのが条件
やめたほうがいいケース
いちばん多い失敗です。宿題が回らない原因は量か、やり方か、理解の穴のどれかで、もう一つ塾を足しても解決しません。むしろ課題が2倍になって、両方が中途半端になります。
解き方の説明が違うと、子どもは混乱します。とくに数学は途中式の書き方や考え方の順序が塾ごとに違うため、同じ単元を別々に教わると定着が遅れます。足すなら別の科目にしてください。
自習の時間がゼロになると、授業が定着しません。週に最低2日は「塾がない日」を残してください。その日に解き直しをするから点になります。
足す前に、いまの塾の回数を見直すという手もあります。同じ費用なら、1か所で回数を増やすほうが管理が効きます。

- 今の塾の宿題が終わっていない
- 同じ科目を2か所で習う
- 週の予定が埋まりきる
- 週2日は塾がない日を残す
掛け持ちは、塾側が公式に想定している
「今の塾に悪いのでは」と考えて言い出せない方が多いところです。そこは気にしなくて構いません。受け入れる側の塾は、掛け持ちを想定した回答を自社サイトに載せています(2026年8月13日確認)。
| 塾 | 公式サイトの記載 |
|---|---|
| 個別指導塾WAM | 「他の塾に通っているのですが、掛け持ちで通うことができますか?」→「スケジュールや指導内容すべてが個別に対応しております。実際、他塾と併用し通っている生徒様もたくさんいらっしゃいます」 |
| 東京個別指導学院 | 「他の塾のフォローをしてもらえますか?」→「はい、可能です。苦手科目の克服、宿題のフォロー、志望校対策など、ご本人の現状に合わせて個別の学習計画を作成させていただきます。他の塾で利用しているテキストをお使いいただくことも可能です」 |
とくに東京個別の回答は、足す側の役割を「フォロー」と言い切っている点が実務的です。
同じ内容を一から教え直すのではなく、今の塾のテキストと宿題をそのまま持ち込む使い方を想定しています。これは、この記事でいう「1科目だけ足す」がうまくいく形とほぼ同じです。

足す側の塾に問い合わせるときは、「今どこの塾に通っていて、何を補いたいか」を最初に言ってしまうのが早いです。隠されるといちばん困るのがこちら側で、量の調整ができません。上の2社のように、公式で受けると書いている塾なら話が早く済みます。
費用は単純に足し算になる
掛け持ちすると入会金・教材費・管理費もそれぞれ発生します。月謝だけ見て判断すると、年間で想定より大きくなります。
とくに季節講習は両方から提案されるため、夏・冬に一気に膨らみます。掛け持ちを検討する段階で、年間の総額を試算しておいてください。
目安として、国の調査で1か所分の塾代を確かめておきます。文部科学省の「令和5年度 子供の学習費調査」では、公立中学生の学習塾費の年間平均は次のとおりで、学年が上がるほど増えます。
| 学年(公立中学校) | 学習塾費の年間平均(塾に通っていない家庭も含む) |
|---|---|
| 中学1年 | 133,647円 |
| 中学2年 | 213,759円 |
| 中学3年 | 341,220円 |

- 入会金・教材費・管理費もそれぞれ発生
- 季節講習は両方から提案される
- 夏・冬に費用が一気に膨らむ
- 年間の総額を先に試算しておく
塾に足す費用は、学年とともに増えない|公立中の通信教育・家庭教師費は年2万円台、学習塾費は2.6倍
掛け持ちを考えるとき、「もう1か所分」がいくらなのかが気になります。国の調査には、学習塾費のほかに、通信教育・家庭教師費の欄があります。
文部科学省「令和5年度子供の学習費調査」の調査結果の概要を、2026年10月27日にPDFで開き、公立中学校の学年別の表6を並べました。
金額は、1年間に子供1人あたりで保護者が支出した平均で、支出がなかった家庭(0円)も含めた平均です。
| 公立中学校 | 通信教育・家庭教師費 | 学習塾費 | 2つの合計(年額) | 合計を12か月で割った額 |
|---|---|---|---|---|
| 中学1年 | 21,021円 | 133,647円 | 154,668円 | 約12,889円 |
| 中学2年 | 20,606円 | 213,759円 | 234,365円 | 約19,530円 |
| 中学3年 | 22,101円 | 341,220円 | 363,321円 | 約30,277円 |
次に、同じ調査の表8-1と表8-2から、「実際に払っている家庭だけ」の平均と、払っていない家庭の割合を見ます。
| 公立中学校 | 0円の家庭の割合 | 支出した家庭だけの年間平均額 | 年額を12か月で割った額 |
|---|---|---|---|
| 通信教育・家庭教師費 | 72.7% | 約7万8千円 | 約6,500円 |
| 学習塾費 | 34.0% | 約34万9千円 | 約29,083円 |

計算
- 中3の2つの費目の合計:341,220 + 22,101 = 363,321(円)。12か月に直すと 363,321 ÷ 12 = 30,277(円、小数点以下を四捨五入)です
- 中1から中3への伸び:学習塾費は 341,220 ÷ 133,647 = 2.55(倍)、通信教育・家庭教師費は 22,101 ÷ 21,021 = 1.05(倍)です。学年とともに増えるのは、学習塾費の方です
- 支出した家庭だけの平均を足すと:349(千円)+ 78(千円)= 427(千円)。12か月に直すと 427 ÷ 12 = 35.6(千円)、つまり月に約3万6千円です
- 通信教育・家庭教師費を支出している家庭の割合:100 − 72.7 = 27.3(%)。学習塾費を支出している家庭の割合は 100 − 34.0 = 66.0(%)です
- 1家庭あたりの金額の比:78 ÷ 349 = 0.22。通信教育・家庭教師費は、学習塾費の約2割です
- 通信教育・家庭教師費の分布(公立中)で、年間5万円以上の合計:10.4 + 4.7 + 1.3 + 0.1 + 0.2 = 16.7(%)。0円の72.7%を足すと 72.7 + 16.7 = 89.4(%)、残りの約10%が1円以上5万円未満です
読み方は3つです。1つ目は、平均で見ると、足す費用は塾の月謝ほど大きくないことです。
支出した家庭だけの平均は、通信教育・家庭教師費が約7万8千円、学習塾費が約34万9千円で、前者は後者の約2割(月額で約6,500円)です。
2つ目は、学年が上がって増えるのは学習塾費の方ということです。通信教育・家庭教師費は中1から中3までほぼ横ばいで、学習塾費は中3で2.55倍になります。
塾を足すなら、この増え方を見込んでおく必要があります。3つ目は、通信教育・家庭教師費を支出している家庭は27.3%で、学習塾費の66.0%より少ないことです。
塾に加えて通信教育や家庭教師を使う家庭は、公立中では多数派とは言えません。
この表の「2つの合計」は、2つの平均を足しただけの計算です。実際に塾と通信教育・家庭教師を両方使っている家庭の平均額ではありません。両方に払った家庭が何%いるか、その家庭の平均は、この調査に載っていません。支出した家庭だけの平均を足した「約3万6千円」も、同じく目安の計算です。入会金・教材費・季節講習は、費目の分け方がこの調査と塾の請求書で違うため、同じ表に並べられません。
- 個別指導の塾を足す場合。
- この調査の分け方では、塾の費用は学習塾費の側に入ると考えられるため、通信教育・家庭教師費の「学習塾費の約2割」という目安は使えない可能性があります
- 私立中学校に通っている場合は、公立の数字は当てはまりません。
- 私立中の学習塾費は、同じ調査で学年別に中1が151,796円、中3が202,127円と、公立とは動き方が違います
- 集団塾の月謝が、この平均の月額(約29,083円)をすでに超えている場合は、追加の費用を平均で見積もると不足します。実際の請求額を確かめてください
- 平均額が「ふつうの金額」だと考えて、家計の限度額を決める場合は、やめておきましょう。
- 年間40万円以上を学習塾費に払っている家庭が23.3%(0円の家庭を含む全体に対する割合)あり、ばらつきが大きいデータです
出典:文部科学省「令和5年度 子供の学習費調査 調査結果の概要」(PDF) 表6 学年別補助学習費、表8-1 通信教育・家庭教師費の金額分布、表8-2 学習塾費の金額分布/同「調査結果のポイント」(PDF)(2026年10月27日確認)
掛け持ちの前に試せること
費用を増やす前に、いまの塾でできることが残っていないか確認してください。
- 科目を追加できないか…同じ塾で1科目足すほうが、別の塾に行くより安く、管理も一本化できます
- 質問対応の時間はあるか…自習室で質問できる塾なら、それを使い切ってから考える
- 宿題の量を調整できないか…回っていないなら、まず量を減らしてもらう相談をする

塾側から見ても、「宿題が終わらない」と相談してもらえるほうが助かります。黙って掛け持ちされると、なぜ回っていないのか分からないまま同じ量を出し続けることになります。
費用の総額が気になる場合は、いま何にいくら払っているかを先に分解してください。削れる費目と削れない費目がはっきりします。

よくある質問
- 掛け持ちしていることを塾に言うべきですか?
-
伝えたほうがいいです。宿題の量を調整できますし、同じ単元が重ならないように配慮できます。伝えないと、両方から通常量の課題が出て回らなくなります。
PR 足す側の塾は公式に「他塾と併用している生徒がたくさんいる」(個別指導塾WAM
)と書いているので、言いにくい話ではありません。言い方は「他でも見てもらっている科目があるので、こちらは○○に絞ってほしい」で構いません。
- 中学生でも掛け持ちは有効ですか?
-
高校生よりハードルが上がります。中学生は学校の課題が多く、部活もあるため、週の予定が埋まりやすいからです。中学生の場合は掛け持ちより、今の塾で科目を足すか、塾自体を変えるかの二択で考えるほうが現実的です。
- どれくらい続けて判断すればいいですか?
-
定期テスト2回分を目安にしてください。1回だと偶然の要素が入ります。2回続けて変化がないなら、掛け持ちの形が合っていないか、そもそも原因が別のところにあります。判断の期限を先に決めておくと、だらだら続けずに済みます。
- オンライン塾なら掛け持ちしやすいですか?
-
移動時間がないぶん、組み合わせやすいのは事実です。ただし時間が空いていることと、消化できることは別です。オンラインでも課題は出ます。判断基準は同じで、今の宿題が回っているかどうかで決めてください。
まとめ:掛け持ちは1科目限定かつ総額を試算する
掛け持ちが機能するのは、今の塾の宿題が回っていて、足す役割が1科目に限定されているときだけです。
宿題が溜まっている状態で足すと、課題が2倍になって両方が崩れます。その場合は掛け持ちではなく、今の塾の見直しか、塾を変える判断のほうが正しい選択です。
そして費用は足し算になり、季節講習は両方から提案されます。始める前に年間の総額を試算しておいてください。


この記事で確認した公的資料
- 文部科学省「令和5年度 子供の学習費調査 結果の概要」(PDF):表6 学年別補助学習費(公立中学校の学習塾費)、学習塾費に支出した者の平均額(2026年9月29日に確認)

